食卓により彩りを添えてくれる陶磁器。この記事では、「益子焼」や「波佐見焼」など、国の伝統的工芸品に指定されている陶磁器を紹介します。
柄や色など、地域によってそれぞれ特徴があるので、見比べて自分のお気に入りを見つけてくださいね。
ちなみに、陶器と磁器は材料や焼き方にちがいがあります。
陶器は、信楽焼など素朴で温かい印象の仕上がりに、磁器は美濃焼などガラスのように滑らかで洗練された仕上がりになります。
●九州・沖縄エリア
・小石原焼【福岡県】
・上野焼【福岡県】
・伊万里・有田焼【佐賀県】
・唐津焼【佐賀県】
・三川内焼【長崎県】
・波佐見焼【長崎県】
・小代焼【熊本県】
・天草陶磁器【熊本県】
・薩摩焼【鹿児島県】
・壺屋焼【沖縄県】
●中国・四国エリア
・備前焼【岡山県】
・萩焼【山口県】
・石見焼【島根県】
・大谷焼【徳島県】
・砥部焼【愛媛県】
●関西エリア
・四日市萬古焼【三重県】
・伊賀焼【三重県】
・信楽焼【滋賀県】
・京焼・清水焼【京都府】
・丹波立杭焼【兵庫県】
・出石焼【兵庫県】
●北信越エリア
・九谷焼【石川県】
・越前焼【福井県】
●東海エリア
・美濃焼【岐阜県】
・常滑焼【愛知県】
・赤津焼【愛知県】
・瀬戸染付焼【愛知県】
・三州鬼瓦工芸品【愛知県】
●関東エリア
・笠間焼【茨城県】
・益子焼【栃木県】
●東北エリア
・大堀相馬焼【福島県】
・会津本郷焼【福島県】
九州・沖縄エリア
小石原焼【福岡県】
規則的な「飛び鉋」の模様が特徴の陶器

等間隔で小さな点のような模様が広がる「飛び鉋(とびかんな)」が最大の特徴。昔ながら技法で作られています。
素朴で温かみのある色合いも魅力で、日常的に使われる飲食器として広く支持されている陶器です。
上野焼【福岡県】
軽く、薄作りで質感のよい陶器

丁度いい重さに、口に当てたとき柔らかさを感じる質感のよさ。そして、絵付けをすることはあまりなく、シンプルで使い勝手のいいところが魅力の上野焼(あがのやき)。
もともとは茶器が多く作られていましたが、現在では酒器、花器、飲食器などさまざまな用途で利用されています。
伊万里・有田焼【佐賀県】
白く美しく、華やかな磁器

青一色の染付から、芸術品のように色鮮やかに仕上げられたものまで、その美しさ・華やかさが目を惹く伊万里・有田焼。ヨーロッパの人たちからの評価も高く、江戸時代にはオランダに輸出されていたほどです。
美しさだけではなく、丈夫で食器としての使い勝手のよさも魅力。
唐津焼【佐賀県】
土の温もりを感じる茶器が有名

同じ佐賀県の伊万里・有田焼と対照的に、素材となる土本来の味わい深さを活かした素朴でシンプルな仕上がりが特徴。
趣のある模様もどこか懐かしさを感じさせる雰囲気で、特に茶器として使われることが多いです。
三川内焼【長崎県】
ベースの白と青の絵柄のコントラストが美しい磁器

白磁に爽やかな青で絵柄を付けた、洗練されたデザインが魅力の三川内焼。絵付けだけではなく、その形状も繊細で、日常使いというよりは何か特別な日に使いたい逸品です。
もともとは、江戸時代に将軍家などへの献上品として作られていたため、高級品としても有名な磁器です。
波佐見焼【長崎県】
美しく繊細な作りながら、リーズナブルなのが魅力!

昔から「くらわんか椀(この器でご飯を食らいなさい、という意味)」と呼ばれ、庶民の食とともにあった波佐見焼。
透けるような白、洗練された絵付けと、一見高級品に見えますが、比較的リーズナブルに手に入るのでおすすめです。
小代焼【熊本県】
素朴で力強い作風が特徴の陶器

形状、絵付け、模様ともにダイナミックに作られたものが多く、素朴な雰囲気がどこか親しみの持てる陶器。
高温で焼成されるので丈夫で、茶器、花器、食器と幅広く日用の器として利用されています。色は焼き方によって調整され、青や黄、白のものが多いです。
天草陶磁器【熊本県】
個性的な陶器と、純白の磁器どちらも作られる産地
天草は良質で豊富な陶石の産地であることを活かし、陶器・磁器ともに作られています。
陶器は、性質の異なる釉薬(陶器の表面を覆うガラス質)を掛け合わせた技法で個性あふれる質感を表現。
磁器は、透明感のある白が印象的な仕上がりが特徴です。
薩摩焼【鹿児島県】
豪華絢爛な「白薩摩」に、日用向けの「黒薩摩」

薩摩焼は「白薩摩」と「黒薩摩」に大きく分けられます。
白薩摩は、もともと藩主向けの品で、金や赤など色鮮やかで豪華な絵付けが特徴です。
対照的に、黒薩摩は大衆用として使われ、焼酎を入れる「黒ぢょか」と呼ばれる土瓶が有名。
壺屋焼【沖縄県】
沖縄らしさを感じさせるデザインが魅力

シーサーをかたどった焼き物に代表されるように、素朴で力強い作りが特徴。重量感があり、丈夫で長年使えるところが魅力です。
絵付けされた図柄にも、沖縄らしさを感じられるところに独自性があるといえます。
ちなみに、沖縄では焼き物のことを「やちむん」と呼びます。
中国・四国エリア
備前焼【岡山県】
全てが「一点モノ」だからこその価値

焼くときの窯の中の状態によって、色や表面が変化する「窯変(ようへん)」によって、一点として同じ形や色のものが無いといわれる備前焼。
一つひとつに魂を込めるように作られ、どれもこれまで焼かれた器とは別物となると、自分だけの一点モノを探したくなります。自然が生み出す芸術をぜひ。
萩焼【山口県】
使うほどに味わい深くなる「萩の七化け」

柔らかでふっくらとした質感と、絵付けをせずに素材が焼きあがる中で生まれる変化を活かした表情が魅力。
また、長年使い込むことでお茶などが器にしみ込み、少しずつ色合いが変わっていくのを楽しむことができるため、「萩の七化け」と評されることも。
石見焼【島根県】
大きく、丈夫で「水かめ」として利用される陶器
石見地方で採れる土は硬質で、高温の焼成ができるため、水や酸に強い製品ができるのが特徴。
大型の水かめやすり鉢、漬物を貯蔵する器としてよく使われます。見た目は白や藍色など、優しい色合いのものが多く見られます。
大谷焼【徳島県】
精巧な技術で生まれる、薄手ながら丈夫な陶器

水かめなど大型の陶器が作られることが多い大谷焼。人の身長ほどもあるものを作るときには、二人一組で足を使ってろくろを回すなど、独特な技法を用いています。
大型ながら、一つひとつ全ての工程を手作業で行っているので、丈夫かつ繊細な見た目に仕上がるのも魅力です。
砥部焼【愛媛県】
大胆な筆使いの模様が特徴の器

地元で採れる素材を活かし、青色で大胆に描かれた模様がどこか親しみの持てる砥部焼。
使い勝手のいい日用品が多く、価格も比較的リーズナブルなので気軽に購入しやすいところも魅力です。近年では、伝統の技法を受け継ぎながら、モダンなデザインの器も多く作られています。
関西エリア
四日市萬古焼【三重県】
使えば使うほど艶が出る急須に注目

急須や土鍋に代表される陶器「四日市萬古焼」。
特に急須は、お茶を愛する人々から支持され、使い込むほどに光沢が出るところが魅力です。
地元で採れる良質な鉄分を含む赤土を活かした、落ち着いた色合いに癒されます。
伊賀焼【三重県】
料理の見た目を引き立てるシンプルな作りの陶器

硬く、しっかりした重さがある陶器。窯で焼かれているときに表れる絶妙な焦げの付き具合が魅力です。
食器類はもちろん、土鍋など料理にまつわる器として使われることが多いのが特徴。色・柄共に料理がより美味しく見えるよう、素朴な雰囲気に仕上げています。
信楽焼【滋賀県】
耐火性が高く、実用性ある陶器

花器、食器から置物まで幅広く利用される信楽焼。
赤褐色系の美しい発色は、味わい深く温かな印象で、表面についた「焦げ」がさらに豊かな表情を見せてくれます。
およそ1300年ほど前にその始まりがあるといわれ、日本の陶器の中でも長い歴史のある工芸品です。
京焼・清水焼【京都府】
繊細で優美な作りが特徴の名工

京都の歴史とともに継承された「名工」と呼ぶにふさわしい京焼・清水焼。
一度焼いた後に絵付けをして、その後の本焼後さらに色を付けていく手間をかけた工程によって、暮らしに彩りを与えてくれる美しい器に。
丹波立杭焼【兵庫県】
「生活用器」に特化した素朴な器

そのはじまりは平安時代といわれ、歴史の深い陶器です。その歴史の中でも、湯呑・皿・壺・花瓶など「生活に根差した」器作りを続けてきたのが特徴。
飾り気がなく素朴な色・柄なので、気軽に利用できるのが魅力です。
出石焼【兵庫県】
まるで美術品のような「純白」の磁器

洗練された白、高度な技術で彫刻された美しい姿と、清楚で優雅な佇まいが魅力の出石焼。
花器、茶器などが作られることが多いですが、出石名物の手打ちそばを盛り付ける小皿も定番で、当地の文化として根付いています。
北信越エリア
九谷焼【石川県】
色味豊かで豪快な絵付けが魅力!

絢爛豪華な文化を生んだ百万石・加賀藩ならではの、色鮮やかな絵付けに特徴のある焼き物。
「五彩」と呼ばれる緑、黄、赤、紫、紺青の絵具によって、重厚な輝きを放っています。
その華やかさで毎日の食卓がいつもより楽しくなる、そんな魅力のある工芸品です。
\こちらの記事もチェック/
越前焼【福井県】
地元の土にこだわった温かみのある陶器
温かみのある土で焼かれ、色・柄ともに素朴な作りの越前焼。肌触りもよく、どこかほっとする器なので日常使いにぴったりです。
酒器、茶器や花器をはじめとした暮らしに関わる製品が豊富です。
東海エリア
美濃焼【岐阜県】
15種類が伝統的工芸品に指定された一大産地

美濃焼にはさまざまな種類があり、志野・織部・瀬戸黒(せとぐろ)など、それぞれに魅力のある15種類が伝統的工芸品として指定されています。
美しい模様に特徴があるものから、シンプルで実用性の高いものまで幅広く揃います。
常滑焼【愛知県】
材料の土を活かした「朱色」が特徴の陶器

「常滑焼と言えば急須」といわれるほど急須が特に有名です。鉄分の多い土を使っているので、その特徴を活かして朱色に発色させる技法で、艶のある美しい茶器を多数生み出しています。
近年では、茶器以外にも花器、置物、植木鉢、壷などさまざまな製品が作られています。
赤津焼【愛知県】
12種類の技法を駆使して作られる高級品
模様を描く技法「印花(いんか)」、「櫛目(くしめ)」などのさまざまな技法によって、美しい模様や洗練されたデザインの器が生み出されている赤津焼。
茶道具・生け花の道具や、割烹で使われる食器として重宝されています。
瀬戸染付焼【愛知県】
筆で描かれる美しい模様が特徴
「せともの」と呼ばれるように、瀬戸市の焼き物は全国的にも有名ですね。
その中でも瀬戸染付焼は、直接筆で描かれる繊細な模様が特徴の焼き物です。鳥や花、昆虫など、風流を感じる絵付けは、見ているだけでも心が癒されます。
三州鬼瓦工芸品【愛知県】
海外からも評価が高い「鬼瓦」
「鬼師」または「鬼板師」と呼ばれる熟練の技術者によってつくられる、鬼の面がインパクト抜群の「鬼瓦」。
厄を払い、福を呼ぶといわれており、多くの国宝や文化財に使用されています。
関東エリア
笠間焼【茨城県】
作家の個性が発揮された多様性が魅力の陶器

「特徴がないのが特徴」といわれるほど、器によってたくさんの違った表情がある笠間焼。
それは、伝統的な技法は守りながらも、その時代その時代の新しい技法を取り込みながら、作家の感性を活かして作られているからです。
シンプルで日常使いにぴったりの食器から、ちょっと特別な日に使いたいモダンな格子柄が上品なものまで揃っています。
益子焼【栃木県】
土の質感ある、素朴で艶のある陶器

例年多くの人が訪れる「益子陶器市」でも有名な益子焼。
その特徴は、素朴ながら味わいのある見た目です。シンプルだからこそ、日常使いしやすいところが魅力ですね。
また、釉薬(ゆうやく)と呼ばれる表面のガラスの層の技術が高く、それによって艶感の出た陶器に仕上がっています。
東北エリア
大堀相馬焼【福島県】
「馬の絵」が特徴の、歴史ある陶器
「馬の絵」「ひび割れ模様」「二重構造」が特徴で、300年の歴史を持つ伝統工芸品です。馬の絵は、この地域で縁起がいいものとされており、器全体に広がるひび割れ模様と相まって独特の美しさを見せてくれます。
外側と内側、二重になった陶器なので、お湯が冷めにくく、持つときに熱くない構造は、生活に根差した陶器であることが伺えます。
会津本郷焼【福島県】
実用的な陶器と美しい磁器、両方作られる産地
1593年発祥と長い伝統のある会津本郷焼では、食卓用品など実用的な陶器に、多様な種類の柄で楽しませてくれる磁器のどちらも作っています。
伝統の技法を受け継ぎながら、シンプルで飽きないデザインかつ、長く愛用できる機能性のある陶磁器が、それぞれの窯元で生み出されています。
※陶磁器の選定基準は、経済産業省が選出している伝統的工芸品を参考にしました。
\こちらの記事もチェック!/
おしゃれな「益子焼」が買えるお店
【長崎】おしゃれな「波佐見焼」が買える店
石川の伝統工芸「九谷焼」の特徴・歴史を解説!
※この記事は2020年6月時点での情報です
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください
※旅行・お出かけの際は、安全、体調に十分に配慮しましょう。お出かけの際は公式ホームページなどで最新の情報をご確認ください。
トリクルマガジン編集部
プロモーションから紙・WEBコンテンツの企画・制作・編集・撮影まで。ただコンテンツを作るだけではなく、課題に対するソリューションを提供できるところが強みです。(http://tricle-llc.co.jp/)