日本遺産(Japan Heritage)とは?世界遺産とはどう違うの?
この記事では、文化庁が日本遺産を認定する基準や数、地域の文化財の魅力、日本遺産検定の有無までご説明します。
令和に認定された日本遺産37件のうち、北海道や大阪など、ポータルサイトにストーリーが紹介されているものの概要もご紹介します。
※この記事は2020年9月18日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
日本遺産とは?世界遺産との違いは?
本邦国策を北海道に観よ!【北海道】
みちのくGOLD浪漫【宮城県・岩手県】
里沼(SATO-NUMA)【群馬県】
400年の歴史の扉を開ける旅【福井県】
江戸時代の情緒に触れる絞りの産地【愛知県】
海女(Ama)に出逢えるまち 鳥羽・志摩【三重県】
1300年つづく日本の終活の旅【滋賀県・岐阜県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県】
旅引付と二枚の絵図が伝えるまち【大阪府】
中世に出逢えるまち【大阪府】
「日本第一」の塩を産したまち 播州赤穂【兵庫県】
日本海の風が生んだ絶景と秘境【鳥取県・兵庫県】
神々や鬼たちが躍動する神話の世界【島根県】
知ってる!?悠久の時が流れる石の島【岡山県・香川県】
藍のふるさと 阿波【徳島県】
薩摩の武士が生きた町【鹿児島県】
日本遺産とは?世界遺産との違いは?

日本遺産(Japan Heritage)とは、簡単に言うと日本各地の魅力的な文化・伝統を語る「ストーリー」です。市町村が、都道府県を通して申請し、文化庁が認定します。
世界遺産との違いは?というと、大きく2つあります。
●世界遺産は保存、日本遺産は活用が目的
●世界遺産は不動産、日本遺産はストーリーが認定対象
世界遺産には文化遺産・自然遺産・複合遺産と3つの種類がありますが、どれも「有形の不動産」であることが求められます。遺跡とか地形とか生息地といったものです。
日本遺産は、遺跡のほか習慣や伝統、モノといった、個別の「点」(=文化財)を生み育んできた「文化そのもの」を結びつけ、ストーリーとして魅力的なパッケージにしたもの…と言えます。
さらにそれらを国内外に積極的に発信し、地域の活性化やブランド化を進めることが目的になっています。いわばクールジャパン戦略のひとつです。日本遺産は、世界遺産の縮小版ではないんですね。
また、世界遺産には文部科学省も後援している「世界遺産検定」がありますが、「日本遺産検定」は残念ながらありません。日本遺産検定もできればいいですね!
日本遺産認定の基準は、ざっと以下のようなものです。
1:ストーリーが興味深く斬新で、地域・日本の魅力を十分に伝えること。
2:日本遺産に認定された後、どう活用するかの具体的なビジョンがあること。
3:地域活性化を推進するにあたり、可能な体制が整備されていること。

ちなみに、日本そのものの魅力発信でもあるため、ストーリーの中には「国指定の文化財を必ず1つは入れなければならない」というシバリがあるのだとか(平成27年3月文化庁日本遺産概要)。
また、ブランド力を保つためにトータルの認定数を限定する考えがあり、「2020年までに100件程度」(同上)とされており、2020年9月現在の認定数は104件となっています。
以下、令和に認定された日本遺産37件のうち、公式サイトにストーリーが紹介されているものの概要をお伝えします!
本邦国策を北海道に観よ!【北海道】
~北の産業革命「炭鉄港」~

明治の初めに「北海道」と命名された、美しくも厳しい北の大地。「石炭」「鉄鋼」「港湾」とそれらをつなぐ「鉄道」を舞台に繰り広げられた北の産業革命「炭鉄港」は、この地の発展に大きく貢献し、北海道の人口は約100年で100倍になりました。
当時の繁栄の足跡は、空知の炭鉱遺産、室蘭の工場景観、小樽の港湾そして各地の鉄道施設など、100KM圏内に位置するこの3地域に今も残っています。
「本邦国策を北海道に観よ! ~北の産業革命「炭鉄港」~【北海道】」の詳細はこちら
みちのくGOLD浪漫【宮城県・岩手県】
―黄金の国ジパング、産金はじまりの地をたどるー

日本で初めて“金”が産出されたのは奈良時代の陸奥国。
現在の岩手県や宮城県など「みちのく」とも呼ばれる地が生んだ“金”は、富の象徴であるだけでなく、奈良・東大寺の大仏や平泉・中尊寺金色堂を彩り、祈りの対象として人々の心に光を灯し続けてきました。
時代とともに幾重にも結び付き、独自の文化や信仰、産業へと昇華した“金”と人々の縁を“みちのくGOLD”と名付け、価値や魅力の掘り起こしを始めています。
「みちのくGOLD浪漫 ―黄金の国ジパング、産金はじまりの地をたどるー【宮城県・岩手県】」の詳細はこちら
里沼(SATO-NUMA)【群馬県】
-「祈り」「実り」「守り」の沼が磨き上げた館林の沼辺文化 -

関東の山々が一望できる館林では、今も多くの沼に出会うことができます。人里近くにあり、「里山」と同様に人々の暮らしと深く結び付き、人が沼辺を活かすことで良好な環境が保たれ、文化が育まれてきたのが「里沼(SATO-NUMA)」でした。
茂林寺沼は里沼の原風景と信仰が共存する「祈りの沼」、多々良沼は沼の恵みが人々の暮らしを支えた「実りの沼」、城沼は館林城とつつじの名勝地を守ってきた「守りの沼」。そんな館林の沼辺文化を味わい、体感することができます。
「里沼(SATO-NUMA)-「祈り」「実り」「守り」の沼が磨き上げた館林の沼辺文化 -【群馬県】」の詳細はこちら
400年の歴史の扉を開ける旅【福井県】
~石から読み解く中世・近世のまちづくり 越前・福井~

越前・福井では、中世期に大量の石を用いて計画的につくられた都市が今も独特の空間を醸し出しています。
近世期の城下町では、風景に溶け込んだ美しい青色の石が天候によって街並みの色合いを変化させ、自然の力で階段状につくり上げられた街の中心部には石の壁が続きます。
越前・福井は、日本人と石との共生の歴史や屈指の石づくり文化を体感させてくれる地です。
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江戸時代の情緒に触れる絞りの産地【愛知県】
~藍染が風にゆれる町 有松~

藍で染められた絞り暖簾(のれん)が風にゆれる古い商家の落ち着いた佇まい。絞りの町「有松」には、江戸時代の浮世絵さながらの景観が今も静かに広がっています。
「ほしいもの 有松染めよ 人の身の あぶら絞りし 金にかえても」
「東海道中膝栗毛」の主人公の弥次さんは、絞りの素晴らしさに魅せられて手拭いを買いました。四百年の歴史を持つ有松の江戸文化は、今も多くの人々を魅了しています。
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海女(Ama)に出逢えるまち 鳥羽・志摩【三重県】
~素潜り漁に生きる女性たち~

豊かな海産物に恵まれた鳥羽・志摩は、全国の約半数の海女が活躍する、日本一の「海女に出逢えるまち」です。女性が素潜りでアワビやサザエ、海藻を獲る海女漁の始まりは約2000年前まで遡り、世界でも日本と韓国のみの希少な漁法です。
海女が獲った海産物は伊勢神宮に「神饌(神様に捧げる供物)」として奉納され続けており、海女ならではの風習や信仰などの「海女文化」が今も色濃く息づいています。
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1300年つづく日本の終活の旅【滋賀県・岐阜県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県】
~西国三十三所観音巡礼~

日本人にとって究極の終活とは、ただ死に向かって人生の整理をすることではなく、人生を通して、いかに充実した心の生活を送れるかを考えること。そして、それを達成できるのが西国三十三所観音巡礼です。
海外からCOOLだと評価される優しさ、心遣い、勤勉さといった日本人の本来の心は、日本人が親しんできた「観音さん」の教えそのものです。
「1300年つづく日本の終活の旅 ~西国三十三所観音巡礼~【滋賀県・岐阜県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県】
旅引付と二枚の絵図が伝えるまち【大阪府】
―中世日根荘の風景―

今から800年前、泉佐野市は上級貴族、九条家の領地「日根荘」でした。ここには二枚の荘園絵図と九条政基が書いた「旅引付」という日記が残されています。
絵図には緑豊かな風景に、田畑に恵の水を注ぐため池や水路、社寺などが描かれ、500年前の村の生活や人々の様子がいきいきと記されています。
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中世に出逢えるまち【大阪府】
~千年にわたり護られてきた中世文化遺産の宝庫~

河内長野市は、京と高野山を結ぶ街道の中間地に位置し、檜尾山観心寺、天野山金剛寺の2大寺院が隆盛したまちです。街道沿いの白壁の塀、銀色の瓦葺きの屋根、朱・緑・黄色などの鮮やかな柱。中には金色に光り輝く仏像が安置されています。
2大寺院の隆盛により多くの社殿、お堂や仏像が造られ、交通の要衝となったことから山城も築かれました。河内長野市は、悠久の時を超えて千年にわたり護られてきた中世文化遺産の宝庫です。
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「日本第一」の塩を産したまち 播州赤穂【兵庫県】

江戸時代、システマティックな入浜塩田による塩づくりが確立された播州赤穂。瀬戸内の穏やかな海と気候、千種川がもたらした良質な砂からできた干潟は、入浜塩田の開発に適していました。
中でも赤穂の塩は、国内きってのブランドとして名を馳せ、赤穂に多彩な恵みをもたらしました。「塩の国」赤穂には、塩とともに歩んできた歴史文化が蓄積され、今も息づいています。
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日本海の風が生んだ絶景と秘境【鳥取県・兵庫県】
―幸せを呼ぶ霊獣・麒麟が舞う大地「因幡・但馬」―

日本海から吹きつける季節風が創り上げた鳥取砂丘。風がさざ波模様の風紋を描き、海岸を進むと、荒波に削り出された奇岩が連なります。
中国山地へと急流をたどると、豪雪に育まれた杉林に豪邸が佇み、岩窟の中に古堂が姿を現します。日本海の風が生んだ絶景と秘境です。
人々は風と共生し、厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に、幸せを呼ぶ麒麟獅子を舞い、ここを訪れる旅人にも幸せを分け与えています。
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神々や鬼たちが躍動する神話の世界【島根県】
~石見地域で伝承される神楽~

島根県西部、石見(いわみ)地域一円に根付く厳かで華やかな神楽は、伝統芸能でありながらも、時代の変化を受容し、発展を続けてきました。
神へ捧げる神楽を大切にしながら、現在は地域のイベントなどでも年間を通じて盛んに舞われ、週末になればどこからか神楽囃子が聞こえてきます。老若男女、観る者を魅了する石見地域の神楽は地域とともに発展してきた、石見人が誇る宝なのです。
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知ってる!?悠久の時が流れる石の島【岡山県・香川県】
~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~

瀬戸内備讃諸島の花崗岩と石切り技術は、長きにわたり日本の建築文化を支えてきました。近代化を象徴する日本銀行本店本館や、古くは近世城郭の代表である大坂城の石垣など、日本のランドマークとなる建造物が、ここから切り出された石で築かれています。
世紀を越えて石を切り出した独特の景観を形成する丁場、富の集積ともいえる迷路の様な集落。島々には、400年にわたって巨石を切り、加工し、海を通じて運び、石とともに生きてきた人たちの希有な産業文化が息づいています。
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藍のふるさと 阿波【徳島県】
~日本中を染め上げた至高の青を訪ねて~

神秘的なブルーといわれた「藍」。徳島県北部を流れる吉野川の流域は、藍染料の日本一の産地です。
高い石垣と白壁の建物に囲まれた豪農屋敷や、「うだつ」があがる町並み、「阿波おどり」のリズムからは、全国を雄飛した藍商人のかつての栄華をうかがい知ることができます。
この地域では、今も藍染料が伝統的な技法で生み出されており、その色彩は人々を魅了し続けています。
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薩摩の武士が生きた町【鹿児島県】
~武家屋敷群「麓」を歩く~

勇猛果敢な薩摩の武士を育んだ地、鹿児島。そこには、本城の鹿児島城跡や、県内各地の山城跡の周辺に配置された麓(ふもと)と呼ばれる外城の武家屋敷群が数多く残っています。
麓は門と玄関の間に生垣を配置するなど、まるで城の中のように敵に備えた構造を持っていました。
そこでは武士達が、心身を鍛え、農耕に従事し、平和な世にありながら武芸の鍛錬に励みました。鹿児島城跡や麓を歩けば,薩摩の武士達の往時の生き様が見えてきます。
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まとめ
日本遺産、いかがでしたでしょうか。日本全国で104件もあるのだから、きっと身近にもあるはず。
「ストーリー」を知ってあらためて歩くと、面白さが段違いですよ。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、各自治体により自粛要請等が行われている可能性があります。
※お出かけの際は、お住まいやお出かけされる都道府県の要請をご確認の上、マスクの着用、手洗いの徹底、ソーシャルディスタンスの徹底などにご協力ください。
ミキティ山田
旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。