東京を走る路面電車として知られる「東京さくらトラム「都電荒川線」。どこか懐かしさを漂わせる路線には計30の停留場があり、地域に密着した交通手段として長年親しまれています。沿線には下町風情たっぷりの町並み、山の手の歴史と文化を伝える名所旧跡、都心にありながら開放感あふれる公園など見どころがいっぱい!途中下車して散策を楽しむにはぴったりの路線です。
【東京さくらトラム「都電荒川線」】東京に今も残る都電


東京さくらトラム(都電荒川線)は、東京都新宿区の「早稲田停留場」から荒川区の「三ノ輪橋停留場」までの12.2kmを30の停留場で結び、運行されています。かつては都電が都内を縦横に走っていましたが、その中で唯一残り、歴史を刻んできた東京さくらトラム(都電荒川線)は、車窓から東京の表情豊かな街風景を楽しむことができます。バラをはじめ、沿線の美しい花々も乗客の目を楽しませてくれます。
車と路面電車が一緒に走る光景は必見!

東京さくらトラム(都電荒川線)には、都電の車両と普通の自動車が一緒に走る「併用軌道」の区間があります。中でも「飛鳥山」~「王子駅前」では、都電のすぐ後ろを都営バスが走っている、都営のコラボレーションが見られることも!また、すぐ近くを新幹線が走っているため、運がよければ都電の車内から新幹線を見ることもできます。
東京さくらトラム(都電荒川線)沿線は花尽くし!
東京さくらトラム(都電荒川線)という名称からも伝わるように、線路沿いで桜やバラなどの季節の花々を堪能できる区間は多くあります。沿線の花の見どころのなかで、代表的なものをご紹介します。
沿線で咲き誇る色とりどりのバラ

春と秋に停留場や線路沿いで咲き誇る色鮮やかなバラは、東京さくらトラム(都電荒川線)からの景色を象徴する花の一つです。品種も色も様々で、車窓からずっと眺めていても飽きることがありません。
バラの植栽を進めている荒川区内の路線約4kmは、特に見ものです。荒川区内の沿線を彩るバラは、約140種1万株以上とも言われています。例年5月上旬~6月上旬、10月中旬~11月上旬は、車窓や立ち寄った停留場で花盛りのバラが見られますよ。

「三ノ輪橋」停留場は、バラの美しさはもちろん、駅舎やその周辺が織りなすレトロな雰囲気の情景でも知られ、「関東の駅百選」に選定されています。
桜の時期は特におすすめ!「飛鳥山」~「王子駅前」

先に紹介したように、「飛鳥山」~「王子駅前」は併用軌道となっているため、一年を通じて珍しい車窓風景を楽しめる区間ですが、3月下旬~4月上旬は特におすすめです。「飛鳥山」停留場付近は桜並木が続き、飛鳥山公園をはじめとする桜スポットもあるため、咲き誇る桜を車窓から満喫できます。

桜は「早稲田」~「学習院下」でも眺めることができます。特に「面影橋」~「学習院下」には神田川に架かる小さな鉄橋があり、満開の桜が神田川を覆うようにして咲き誇る見事な景色が広がります。車窓からもよく見え、車内で乗客の歓声が上がることもしばしば。絶好のフォトスポットとなっています。



また秋が深まると、「荒川二丁目」~「荒川区役所前」で紅葉が楽しめます。下町情緒が残る町並みと紅葉の組み合わせもまたいいものですね。「宮ノ前」付近では、八幡神社のイチョウの木が黄金色に染まります。例年11月上旬~下旬頃が紅葉の見頃です。
東京都新宿区西早稲田1-23(都電荒川線早稲田停留場)~東京都荒川区南千住1-12(都電荒川線三ノ輪橋停留場)
普通運賃170円(IC運賃168円)、小児90円(IC運賃84円)
都電一日乗車券400円、小児200円 ※当日売りは都電の車内、荒川電車営業所、都電定期券発売所、三ノ輪橋おもいで館にて発売
「東京さくらトラム(都電荒川線)」の詳細はこちら
(画像提供:東京都交通局)
東京さくらトラム「都電荒川線」の見どころを巡ろう!
東京さくらトラム(都電荒川線)の路線は、全長12.2kmとそこまで長くないものの、沿線の見どころは多種多彩!歴史古い山手エリアから池袋のような都心、そして東京の東に広がる下町まで、様々な街風景を楽しむことができます。ここでは、西の「早稲田」停留場から、東の「三ノ輪橋」停留場まで、散策にぴったりの停留場を立ち寄りたいスポットと合わせてご紹介します。
「鬼子母神前」から「鬼子母神堂」をのんびりお参り


安産と子育(こやす)の神様「鬼子母神(きしもじん)」を祀るお堂「鬼子母神堂」は、1664年に建立されました。境内にある大イチョウの木は、樹齢700年ほどです。
※雑司ヶ谷鬼子母神の「鬼」の字は一画目の「´」がない字を使います。
東京都豊島区雑司が谷3-15-20
[参拝時間]9時~17時(大黒堂は10時30分~16時)
なし ※堂内の見学は平日のみ。要予約
拝観無料
【電車】都電 鬼子母神前より徒歩4分
「鬼子母神堂」の詳細はこちら
(画像提供:鬼子母神堂)

週末は参拝客で賑わう「鬼子母神表参道」。古いもので樹齢400年を迎えるケヤキ並木が美しい、石畳の参道が続きます。その参道沿い、古い木造の建築の中に「キアズマ珈琲」があります。



「キアズマ珈琲」では、歴史ある建物を活かした空間で、オーナー自らが焙煎して淹れる珈琲が味わえます。お店のケーキやスイーツはすべて店主の手作りで、酸味が少なくクリーミーな「ベイクドチーズケーキ」は一番人気です。ゆっくり過ごせる落ち着いた雰囲気で、ついつい長居してしまいそうです。
沿線きっての都心!「東池袋四丁目」で巡りたいニュースポット
池袋サンシャインシティの東側、再開発が進むこのエリア。東京さくらトラム(都電荒川線)きっての都会ながら、吹き抜ける風に心地よさを感じられる広々とした公園があります。
2020年7月にオープンしたのは、豊島区最大面積の公園「豊島区立としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)」。サクラやイチョウ並木、シラカシの防火林に囲まれて、美しい芝生広場や遊具ゾーンが広がっています。


園内にはこだわりの食材を使ったカフェのほか、バリエーション豊かな小型キャビン型の飲食店が4つあり、散策がてらフードやドリンクが味わえます。爽やかな日中はもちろん、ライトアップが美しい夜もおすすめです。

芝生を保護するため、広場ではレジャーシート使用不可。通気性のよいゴザやラグマットはOKです。また園内の飲食店利用者には、公園管理事務所にて、無料でブランケットの貸出も行っています。
東京都豊島区東池袋4-42
5時~22時 ※管理事務所の受付時間8時~17時(年末年始は除く)
なし
【電車】都電 東池袋四丁目より徒歩5分
「豊島区立としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)」の詳細はこちら
(画像提供:豊島区立としまみどりの防災公園)

「豊島区立としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)」にあるカフェが、「EATGOOD PLACE」。“食べることから生まれるよいサイクル”をテーマに、三浦半島の新鮮野菜や鮮魚など、日本各地の厳選素材を使ったメニューが揃っています。
様々な植物に彩られた天井高6mの開放的な店内や広いテラスから、目の前に広がる芝生広場を一望できます。日中はピクニック気分で、夜はライトアップされた公園を眺めながら、ナチュラルワインやオリジナルカクテルを片手に過ごせます。ディナーでは、アラカルトほか季節の食材を使ったコース料理も味わえますよ。

こちらのカフェは公園内にあるということもあり、毎朝8時から営業。朝食メニューも充実しています。おすすめのメニューは「アボカド1個分をつかったアボカドトースト」。カリッと焼きあげたカンパーニュに贅沢にアボカドを乗せ、味付けは塩、オリーブオイル、コショウのみ。シンプルながら濃厚な味わいで、食べ応え十分です。
東京都豊島区東池袋4-42-1 IKE・SUNPARK イケ・サンパーク内
【日~木】8時~18時、【金・土・祝前日】8時~22時
なし
【電車】都電 東池袋四丁目より徒歩5分
「EATGOOD PLACE」の詳細はこちら
(画像提供:EATGOOD PLACE)
子どもと一緒に行きたい「荒川車庫前」~「荒川遊園地前」
工事のため長く休園していた「あらかわ遊園」が、2022年4月にリニューアルオープン。「荒川車庫前」~「荒川遊園地前」周辺は、一層の賑わいを見せています。

「荒川車庫前」を降りてすぐのところにあるのが「都電おもいで広場」。懐かしい停留場をイメージしたスペースに、1940年~50年代に製造された都電車両(5500形・旧7500形)が展示されています。

車内には、都電の運転体験ができる模擬運転台があるほか、沿線をイメージしたジオラマ、かつての都電運転手の制服や名札なども展示されています。子連れで楽しむことができるスポットです。
(画像提供:東京都交通局)


約3万1000平米の広い敷地に、観覧車や豆汽車、メリーゴーランド、スカイサイクル、ウォーターシューティングライドなどのアトラクションがある「あらかわ遊園」は、「荒川遊園地前」より歩いて行くことができます。
こちらのファミリーコースターは、日本一遅いジェットコースターとしても知られています。乗り物のほか、ロング滑り台、釣り堀やポニー乗馬(別料金)もあって、1日中楽しむことができます。
東京都荒川区西尾久6-35-11
9時~17時 ※施設により異なる
火(祝日の場合は翌日)※来園日により事前予約が必要な場合あり。詳細はあらかわ遊園の公式HPを確認
【入園料】大人800円、小学生200円【フリーパス(入園料+のりもの乗り放題)】大人1800円、小学生700円 ※ほか料金の詳細はあらかわ遊園の公式HPを確認
【電車】都電 荒川遊園地前より徒歩3分
「あらかわ遊園」の詳細はこちら
(画像提供:荒川区)
ノスタルジックなカフェで寛ぐ「町屋駅前」

「町屋駅前」周辺は、昔ながらのレトロな純喫茶や個性的なカフェが集まることで知られています。その一つが「Cafe 鈴木製作所」。この名称は、元・町工場を改装したからなのだとか。ノスタルジックかつ気品ある昭和テイストの店内で、ゆったりと過ごせます。



大満足のランチメニューのほか、ほっとひと息つくのにぴったりなケーキセットもあって嬉しい限り。町屋を巡れば、ほかにもレトロなカフェや喫茶店に出会えますよ。
(画像提供:Cafe 鈴木製作所)
レトロな雰囲気と夕焼け空が似合う「三ノ輪橋」

バラの名所としてご紹介した「三ノ輪橋」停留場は、東京さくらトラム(都電荒川線)の終点。夕暮れ時が似合う、ノスタルジックな風情が魅力です。停留場のレトロな雰囲気と夕焼け空があいまって、どこか懐かしさを誘う郷愁が漂っています。

「三ノ輪橋」停留場すぐ近くにあるのは「三ノ輪橋おもいで館」。「9000形メラミンカップ(青・オレンジ)」各600円やプラレール「東京さくらトラム(都電荒川線)9000形(9001号車)」1800円などの都営交通グッズほか、乗車券の販売を行っている施設です。沿線をモチーフにしたジオラマ等も展示しています。
東京都荒川区南千住1-12-6
10時~18時
火・水(祝日の場合は営業)、12月29日~1月3日
入館無料
【電車】都電 三ノ輪橋停留場よりすぐ
「三ノ輪橋おもいで館」の詳細はこちら
(画像提供:東京都交通局)



「三ノ輪橋」へ来たら、東京さくらトラム(都電荒川線)沿線旅の締めくくりにぜひお参りしたいのが「鷲(おおとり)神社」。地元で「おとりさま」と呼ばれ、親しまれている神社です。
毎年11月に開かれる「酉の市」では、開運・商売繁昌を祈願する熊手御守が境内の至るところに飾られ、多くの人で賑わいます。
(画像提供:台東区)
いくつもの街を走る東京さくらトラム(都電荒川線)は、ビルに囲まれた都心から歴史を感じる下町まで、東京ならではの風景が味わえる路線です。旅のエッセンスを凝縮したかのような路線を途中下車しながら行けば、1日乗車するだけでもたっぷりと旅情に浸れますよ。
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※この記事は2022年12月1日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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梶本 愛貴
長野県出身。おもに旅や鉄道、書籍などの記事を書いています。 旅はぼーっとするのが好き、列車は乗るのが好き、温泉は万座や草津など強めの湯が好きです。大人になって改めて感じた旅や列車の面白さをお伝えしていきます。