新そば(蕎麦)の季節っていつ?通常と何が違うの?一般的には秋のイメージですが、時期や産地によって違いがあり、新そばの中にも「夏そば(夏新)」「秋そば(秋新)」があるのだとか。そんな新そばのヒミツや、美味しさの理由、長野の戸隠そばなど日本各地の有名そばまでご紹介します。
新そばの時期・季節
新そばとは、その年に収穫されたばかりのそばのこと。
そばの実は、気温、湿度、紫外線などで劣化しやすく、かつては保管が難しいものでした。
それだけにそば好きたちは、首を長くして新そばを待ったのだとか。
多くの場合、そばは秋(10~11月)に収穫されます。
とはいえ南北に長い日本のこと、産地によって少しずつベストとなる収穫時期が違います。
さらにそばには、品種として「夏型」と「秋型」があり、栽培方法の工夫もあって、今ではかなりの長期間、新そばが味わえます。
秋そばとは
「秋そば」とは、秋に収穫される新そばのこと。「秋新」とも呼ばれています。
そばは、昼夜の寒暖差が10℃以上あり、最高気温が25℃以下…といった環境が栽培に適しています。7~8月に種をまき、10~12月に収穫すれば、自然とこの条件に合う場所が多いのです。
ちょうど年越しそばにも新そばが食べられそう。
年越しそばは、旬を味わうイベントでもあったのかもしれませんね。
夏そばとは
そばの品種の中でも、日長反応(にっちょうはんのう:光に対する反応)が夏向きの品種が古くからあります。それらは4~5月に種をまいて、7~8月に収穫することが可能です。
「夏そば」、または「夏新」と呼ばれています。
秋そばに比べると、あっさりした味わい…とも言われますが、暑い時期にざるやもりで新そばを食べるのは、格別の味わいです。
新そばはなぜ美味しいの?
そばの実は収穫された後、乾燥→脱穀という工程をへて「玄そば」(殻の付いた状態)になりますが、玄そばは、常温だと味が劣化しやすい農産物です。
具体的には、そば自身が持つ酵素によって脂質の酸化が進むのだとか。
製粉後は、さらに劣化のスピードが早まります。
最近は保存設備も発達し、長期間おいしいそばが食べられるようになりました。
それでも、収穫したばかりのそばは別格!新鮮そのもののおいしさなのです。
新そばの「味の特徴」は?
夏の太陽をたっぷりと浴びて育った新そばは、十分に育って、豊かな実を付けます。
緑がかった色、胸のすくような香り、爽快な喉越し…。新そばならではの味わいです。
ツルッと喉越しを楽しむのも粋でいいものですが、新そばは、ゆっくり味わうのもおすすめです。
福島県や長野県には、そばそのものの味を楽しむ「水そば」がありますし、福井県や島根県では、「そばは噛んで味わうもの」とも言わるとか。
ここからは、日本各地の新そば名所をご紹介します!
山形県の「山形そば」
2~3人前の板そばと、冷たい肉そばが名物
・新そばの時期
夏そば7月下旬~8月、秋そば10月下旬~11月
・そばの特徴
内陸の盆地で、農作業の後のそば振る舞いの習慣から生まれたといわれる「板そば」。
長い板に、数名分のそばを薄く均一に盛り付けてあるのが特徴です。
今でもお店で板そばを頼むと2~3人前はあり、ツウは1人で平らげるとか。
また、「冷たい肉そば」は河北町名物のかけそば。
色が濃く太めの田舎そばに鶏肉をのせ、鶏だしの効いた醤油味のつゆをかけて、冷たい状態で味わいます。
埼玉県の「秩父そば」
隠れたそば名所。食べ方やつけ汁など、お店ごとの工夫あり!
・新そばの時期
夏そば8月上旬~、秋そば11月上旬~
・そばの特徴
四方を山に囲まれ、寒暖の差が激しい秩父盆地では、古くからそばの栽培が行われてきました。
荒川の澄んだ水流を利用して栽培されたそばは風味豊かに育ち、この地方ではどの農家もそばでもてなしをする習慣があったそうです。
秩父市内にはそば店が多くあり、十割そばや、太めの田舎そば、塩で味わうそば、くるみのつけ汁で味わうそばなど、お店ごとにそれぞれの個性があります。
長野県の「戸隠そば」
「ぼっち盛り」と、薬味の辛味大根が特徴
・新そばの時期
夏そば7月下旬~、秋そば10月下旬~
・そばの特徴
そばの名所とされる信州でも、戸隠は特に山の険しい地方。
山岳地帯で修業する修験者たちの携帯食としてそばが好まれたのが、戸隠そばの始まりだとか。
「挽きぐるみ」と呼ばれる、甘皮まで挽き込んだ味や香りの強い粉で打つのが特徴です。
ひとつのザルに、5束ほどを馬蹄形に盛る「ぼっち盛り」が戸隠の伝統。
薬味である信州の伝統野菜・戸隠大根も、そばの味わいを引き立ててくれます。
福井県の「越前そば」
400年愛されてきた味。大根おろしが必須!
・新そばの時期
夏そば7月~8月、秋そば10月~11月
・そばの特徴
お殿様が栽培を奨励し、名家老が食べ方を広めたと伝わるのが越前そば。
味わうときは大根おろしが必須といわれ、「越前おろしそば」と呼ばれることも多いとか。
色が濃く風味が強いそばを、多くの場合は「冷や」の「かけ」で味わうのが特徴。
大根おろしのほかは、鰹節、ネギのシンプルな薬味です。
福井県はそばの名産地でもあり、特に夏そばに力を入れて生産しています。
7月に収穫される「福井夏そば」は、ブランドそばとなっています。
島根県の「出雲そば」
割子そばは三段重ねが基本。ツウは1枚ずつおかわり
・新そばの時期
夏そば8月下旬~、秋そば11月~12月
・そばの特徴
出雲そばといえば「割子そば」。地元の人は「わりこ」ではなく「わりご」と呼んでいます。
考案したのは、名君と呼ばれた7代藩主・松平不昧(ふまい)公。
江戸暮らしが長くそば好きだった不昧公は、そば栽培を奨励し、自ら食べ方を工夫して楽しんだとか。
重ねられる容器(割子)に入れたそばに、薬味とつゆを直接かけ、1杯食べ終わったらつゆを次の割子に移して、順々と食べ進みます。
奥出雲や三瓶山(さんべさん)など山間部で育てられた挽きぐるみのそばは風味豊か。
不昧公も「そばはよく噛んで味わうべし」との言葉を残したとか。
まとめ
古来より縁起物として晴れの日などに食べる風習のあったそば。健康維持に役立つ成分を豊富に含んだ、とても身近な健康食と言えます。この記事を読み終えたら、きっと新そばが食べたくなるはず!ご近所のおそば屋さんに足を運んで、おいしい新そばを楽しんでみてはいかがですか?
【記事監修】
◇(一社)日本麺類業団体連合会
「そばの散歩道」
※この記事は2024年8月5日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性がありますので、事前に公式ホームページなどで最新の情報をご確認ください。
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。
ミキティ山田
旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。