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2020.10.23

国宝ってなに?指定する目的や鑑賞できるおすすめスポットをご紹介

国宝、それは文字通り国の宝。
でも重要文化財とはどう違うのかなど、いまいち分からないことも多いですよね。
人間国宝ってなに?お城や天守は国宝?国宝の種類はどんなものがあるの?

この記事では、国宝に指定される基準などのあれこれから、松本城や松江城など気軽に国宝建造物が鑑賞できるスポットまでご紹介します。

※この記事は2020年10月5日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。

記事配信:じゃらんニュース

国宝とは?

国宝の基準

国宝

国宝とは、定義でいうと「重要文化財のうち、世界文化から見ても価値が高く、たぐいない国民の宝」(文化財保護法27条より)です。
たぐいないとは「比べるもののないほどの」という意味。

では、その国宝を選び出す元グループになる「重要文化財」とはなにかというと、「有形文化財のうち、重要なもの」(同)となっています。

つまり、
有形文化財 > 重要文化財 > 国宝
という関係です。
右に進むにつれて数が少なくなります。

明文化された基準はこれだけで、ざっくりしていますね。

国宝は誰が決めるの?

では、誰が国宝や重要文化財を決めるのでしょう?

それは、文部科学省に設置される「文化審議会」です。
文化審議会の委員が調査して、文部科学大臣に「どうですか?」と答申し、大臣が最終的に決定をします。

文化審議会の委員は任期1年で、しばしば変わりますが(再任可)、多くが大学教授や、美術館・博物館の館長などの専門家です。中には作家の方や、俳優さんもいたりします。

現実には、国宝の多くが昭和20~30年代に集中的に指定されていて、最近は年に10件以下となっています。

2020年10月現在、国宝:1120件、重要文化財:13281件が指定されています(重要文化財には国宝の件数を含む)。

国宝の種類

国宝

国宝には、8種類があります。
・工芸品(253)
・書跡、典籍(228)
・建造物(227)
・絵画(162)
・彫刻(138)
・古文書(こもんじょ、62)
・考古資料(47)
・歴史資料(3)

かっこ内の数字は国宝の件数です。
1番多い「工芸品」とは、陶磁器や仏教の法具などのこと。
約4割が刀剣(日本刀)で占められています。

「書跡、典籍」とは、日本書紀や古今和歌集、小野道風の書などのこと。
約4分の1は仏教経典で占められています。

国宝

「考古資料」とは、土偶や青銅器の出土品などのこと。
卑弥呼が使った金印とされる「漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)」もここに含まれます。

国宝

もっとも少ない「歴史資料」とは、慶長遣欧使節(けいちょうけんおうしせつ)関係の資料47点や、琉球国王尚家(りゅうきゅうこくおうしょうけ)関係の資料1251点などをまとめて指定したもの。

上の支倉常長(はせくらつねなが)の肖像画は、慶長遣欧使節関係資料の中の1点です。

国宝

絵画や工芸品、書跡、典籍、古文書などは、保管や展示の難しさから、なかなか現物を見ることができないものがほとんど。
常設展示は期待薄なので、美術館や博物館の企画展をマメにチェックしましょう、

建造物なら3番目に件数も多く、常時公開されているものが全国にあり、「鑑賞しやすい国宝のひとつ」と言えます。

人間国宝とは?

人間国宝は、上述の国宝とはちょっと種類が違います。
文化財保護法に人間国宝という言葉はなく、通称です。

文化財保護法は守備範囲の広い法律で、有形文化財(国宝など)、無形文化財(演劇や工芸技術など)、民俗文化財(お祭りなど)、天然記念物(動物や植物など)、文化的景観、伝統的建造物群などまで保護しています。
全部ひっくるめて「文化財」として扱っています。

人間国宝とは、無形文化財の中でさらに、重要無形文化財に指定された「わざ」そのものの保持者のこと。

ざっくり言うと、
無形文化財 > 重要無形文化財( ≒ 人間国宝)
というイメージです。

国宝

歌舞伎、人形浄瑠璃文楽(にんぎょうじょうるりぶんらく)、蒔絵(まきえ)、備前焼などの「わざ」そのものが重要無形文化財に指定されると、同時に「その技術の高度な保持者」が認定され、その人たちが人間国宝と呼ばれます。ちなみに、年間200万円の特別助成金が交付されるのだとか。

ところで、「歌舞伎」や「蒔絵」、「日本書紀」「漢委奴国王印」といった、国宝や重要文化財の個別の名前は、法律内には書かれていません。
一つ一つの指定は文部科学大臣の名前で行われ、官報で発表されます。

続いて、国宝の建造物を鑑賞できるおすすめスポットをご紹介します!

松本城【長野県】

北アルプスを背景にたたずむ国宝5城のひとつ

松本城

江戸時代以前に建てられた「現存天守」は12城ありますが、そのうち国宝に指定されているのは5城のみ。
松本城はその「国宝5城」と呼ばれるもののうちのひとつです。

1592~1643年に築造されたとされる、天守、乾小天守(いぬいしょうてんしゅ)、渡櫓(わたりやぐら)、辰巳附櫓 (たつみつけやぐら)、月見櫓(つきみやぐら)の5棟が国宝に指定されていて、城内に入って見学することができます。

松本城は、明治維新直後に解体を待つだけになっていたのを、地元新聞社の社長や中学校の校長が募金活動を行って買い戻し、大修理を施したのだとか。
地元の人の情熱が国宝を守った一例です。

松江城【島根県】

2015年、重要文化財から国宝へ

松江城

国宝5城のうち、4城が昭和20年代に国宝指定を受けています。
松江城が国宝になったのは、2015(平成27)年と、わりと最近のこと。

江戸時代の築造なのは間違いないが、創建当時のままであることを証明できる資料がない…というのが、重要文化財にとどまっていた理由です。

地元有志の「松江城を国宝にする市民の会」が懸賞金をかけてまで資料を探したところ、2012(平成24)年に近くの神社で「慶長十六」と書かれた木製の祈祷札を発見。

地階の柱にあてはめたところ、釘穴などがピタリと一致しました。ついに歴史的価値が証明され、悲願の国宝指定となったのです。

瑠璃光寺五重塔【山口県】

「西の京」の優雅な文化を伝える五重塔

瑠璃光寺五重塔

室町時代の守護大名・大内義弘をとむらうために、弟の盛見が建立したと伝えられる塔が瑠璃光寺(るりこうじ)五重塔です。

大正時代の修理の際に発見された墨書によって、1442(嘉吉2)年の完成であることが分かりました。

山や池を借景(しゃっけい)に立つ姿は、「西の京」と言われ、フランシスコ・ザビエルも愛した大内文化の優雅さを伝えています。
山口市中心部から近く、毎日22時までライトアップされています。

瑞龍寺【富山県】

加賀藩120万石の財力を示す建造物

瑞龍寺

加賀2代目藩主・前田利長の菩提寺として、3代目藩主・前田利常によって建立されたのが瑞龍寺(ずいりゅうじ)です。

曹洞宗の大規模な寺院で、整備された伽藍(がらん:寺院の建築物の総称)の配置が当時のまま残されています。

造営には20年もかかったといわれ、江戸初期の禅宗寺院建築の壮大さは見事なもの。
富山県では唯一の国宝建造物となっています。

東寺【京都府】

世界遺産にも指定された真言密教の古寺

東寺

新幹線からも見える、京都のランドマーク的な存在が東寺(とうじ)の五重塔。
嵯峨天皇が弘法大師・空海に託した官寺で、真言密教の根本道場です。
東寺は教王護国寺とも呼ばれています。

東寺の本堂である金堂(こんどう)、高さ54.8mの五重塔、弘法大師が住房としていた御影堂(みえいどう)など、寺院内には多くの国宝があります。
また、世界遺産「古都京都の文化財」を構成する一部にも指定されています。

三十三間堂【京都府】

鎌倉時代のお堂と内部の観音像が見どころ

三十三間堂

地上16m、奥行き22m、南北120mもの長大なお堂です。
平安時代後期、後白河法皇が平清盛に資材協力を命じて造営した蓮華王院の本堂で、鎌倉時代の1266(文永3)年に再建されたものが現存しています。

堂内には「木造千手観音立像」「木造千手観音坐像」など1001体もの観音像や、「木造風神雷神像」などの国宝があり、これらも拝観できます。

毎年1月に行われる「大的大会(おおまとたいかい)」は江戸時代の通し矢にちなむ弓道の大会で、晴れ着姿の弓道家が西庭で終日、弓道の競技を行います。

犬山城【愛知県】

国宝5城の中でもっとも古い天守

犬山城

木曽川沿いの小高い丘の上に建てられた平山城(ひらやまじろ)です。
織田信長の叔父・織田信康が1537(天文6)年に築いたといわれ、国宝5城の中で最も古い天守です。

信康の子・信清はのちに信長に反旗を翻したこともあり、犬山城はその後、信長・秀吉・家康という戦国の三英傑すべてに攻められたことのある城となりました。

激戦を耐え抜いた天守は、コンパクトながら付櫓(つけやぐら)や石落とし、唐破風(からはふ)、亀の甲羅に桃がのった魔除けなど、見どころの多い貴重なお城となっています。

東大寺【奈良県】

歴史の重みを感じさせる国宝群

東大寺

奈良時代、聖武天皇が国力を注いで創建したお寺が東大寺です。
「奈良の大仏」として知られる盧舎那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)、それを安置する大仏殿(金堂)をはじめ、建造物だけでも8つが国宝に指定されています。

東大寺

大仏殿は、源平時代と戦国時代の2度にわたる戦火で焼け落ち、現在のものは江戸時代に再建された3代目。

それでも高さ49.1m、奥行き50.5m、幅57.5mと、木造建築としては圧倒的な大きさ。
創建当時の幅は約86mあったとされています。

大崎八幡宮【宮城県】

けんらん豪華な桃山建築の傑作

大崎八幡宮

伊達政宗によって1607(慶長12)年に創建された神社が大崎八幡宮です。

本殿と拝殿を、石の間(いしのま)と呼ばれる一段低い建物でつないで一体にする「権現造(ごんげんづくり)」と呼ばれる様式で、それらすべてが国宝に指定されています。

随所にきらびやかな彫刻や彩色が施され、「桃山建築の傑作」と評価されています。
正面の千鳥破風(ちどりはふ)、石の間の格天井(ごうてんじょう)など、見どころがいっぱいです。

室生寺【奈良県】

女性の参拝が絶えない古刹

室生寺

奈良時代末期の宝亀年間(770年 – 781年)に創建されたと伝わる真言宗のお寺が室生寺(むろうじ)です。

同じ真言宗でも女人禁制だった高野山に対し、古くから女性の参拝を許していたため、「女人高野」と呼ばれています。

緑豊かな境内を歩き、「鎧坂(よろいざか)」という石段を上ると、金堂、本堂、五重塔と続きます。これら3つが国宝に指定されています。

建造物だけでなく、「十一面観音菩薩立像」「中尊 釈迦如来立像」「釈迦如来坐像」などの国宝も多く所蔵されています。

【出典・参考】
文化庁 国指定文化財等データベース

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ミキティ山田  ミキティ山田

旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。