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2021.04.28

精進料理とは?使ってはいけない食材や定番メニューの調理法などをご紹介!

精進料理とは、野菜や豆腐などの植物性の食材のみで作った料理のこと。

仏教の戒律を守る修行僧の食事として生まれ、今もお盆のお供え物として用意する家庭もあります。
また最近では、健康食としても注目が集まっています。

そこで今回は、精進料理の由来から基礎知識や作法、精進料理が食べられる高野山・東京・京都のおすすめの店などをご紹介します。

※この記事は2021年4月2日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。

記事配信:じゃらんニュース

精進料理とは

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理とは、肉や魚などを使用しない仏教と密接に結びついた料理のこと。
仏教における戒律に基づいて、「殺生(生き物を殺すこと)」を避け、「煩悩(人を苦しめ、煩わせる心)」を刺激しないために生まれたのが精進料理です。

「精進」とは仏教用語で、「美食や肉食を避け、粗食や菜食によって精神修養をする」という意味を持っていますので、精進料理は修行の一つとも言えます。

精進料理の食材は、「精進物」のみを使用するのが特徴です。精進物とは、肉・魚介類を用いない植物性のことで、野菜類・穀類・海藻類・豆類・木の実・果実などのことを指します。

もともとは修行僧のための食事であった精進料理ですが、現在では四季折々の旬の食材を楽しめる健康食としても注目が高まっています。

精進料理の由来

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理は、中国から仏教が伝来した際に、一緒に日本に伝わってきたものと言われています。
平安時代には精進料理の原型とされる食事が生まれましたが、その内容は現在のように厳密ではなく、魚や鳥は「禁の例に在らず」と但し書きをつけることもありました。

その後、鎌倉時代に禅宗が広まると共に、肉類は一切食べてはならないという菜食のみの精進料理が徐々に定着し、一般の人々にも広まっていったと言われています。

調理も修行の一環

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

仏教では、料理の準備や調理から、食事中のマナーや作法、後片付けまで、食にまつわる行動全般を修行の一環と捉えています。

禅宗のひとつ「曹洞宗」の開祖で、日本の精進料理の礎を築いた道元禅師は、食事を作る人の心構えを「典座教訓」という書物にまとめているほど。

その中では、「食材に対する敬意を持つこと」「整理整頓を心がけ、道具を大切にすること」「食べる人の立場になって作ること」「手間と工夫を惜しまないこと」、そして料理をする上で「三心(さんしん)が大切であること」などを説いています。

三心とは、「喜心(きしん)=作る喜びやもてなす喜び」「老心(ろうしん)=思いやりや気配り」「大心(だいしん)=偏りや固執のないおおらかな心」のことです。

さらに「典座教訓」では、調理方法や味付けなどに関しても細かなルールを定めています。

調理方法は、生・煮る・焼く・揚げる・蒸す、の5つを用いること。
味付けは、苦い・酸っぱい・甘い・辛い・塩辛いの「五味(ごみ)」に、素材の持ち味を生かすために薄味にする「淡味(たんみ)」を加えた「六味」を基本とすること。
色は、赤・白・緑・黄・黒の五色を使った献立にすること。

現在では、こうした細かなルールを全て実践しているところは少なくなっています。

食べる作法

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

宗派や時代によっても異なるため、一概には言えませんが、基本的な作法としては代表的なものをいくつか紹介します。

まず、食べ物を口に入れたら箸を置き、不用意に音を立てないこと。目の前の食べ物と向き合い、食べることに集中することも修行のひとつだからです。

さらに、姿勢を正して座り、器は両手で丁寧に扱うこと。食べる所作が美しくなります。
そして、食べ終わったら、器にお湯やお茶を注いで飲み干すこと。器をきれいにするだけでなく、残ったお米まで無駄にせず、目の前に運ばれてきた料理をすべていただくという意味もあります。

こうした作法により、食べる所作が美しくなり、食事に集中できて素材の味を堪能することにもつながりますので、日常に少しでも取り入れてみるのもおすすめです。

使ってはいけない食材

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

使っては行けない食材は大きく分けて2つです。

1つ目は、動物性の食材。肉、魚介、卵などのほか、バターやチーズ、牛乳などの乳製品も動物から摂取しているものなので、使わないのが基本です。

2つ目は、「五葷(ごくん)」と呼ばれる匂いが強い野菜です。ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・ノビルなど、ネギの仲間のことを指し、欲情や怒りの心をおこすとして禁じられています。

代表的なメニュー

野菜の煮物

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

季節の旬の野菜を使った煮物は、精進料理の代表的なメニューの一つ。動物性のかつおだしは使わないため、昆布や干し椎茸などで取った「精進出汁」で作るのが基本です。

ごま豆腐

(画像提供:)
(画像提供:)

ごま豆腐は、精進料理には欠かせない一品です。名前に「豆腐」が入っていますが、実際は大豆を使った豆腐とは異なり、胡麻をすりつぶして、水で溶いた葛粉と混ぜ合わせて固めたもの。貴重な栄養源として重宝されてきた精進料理です。

野菜の天ぷら

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

野菜の天ぷらは、「精進揚げ」とも呼ばれる精進料理のひとつ。よく使われる食材は、にんじん、なす、れんこん、さつまいもなどの芋類、しいたけなどのきのこ類など。また、動物性の食品は使うことができないため、 一般的な揚げ物で用いる卵などを避けて調理します。

がんもどき

(画像提供:写真AC)
(画像提供:写真AC)

豆腐料理は、精進料理の代表例。豆腐を潰して、ニンジンやごぼうなどの刻んだ野菜を混ぜ、油で揚げた料理が「がんもどき」です。「もどき」の名前がついているとおり、もともとは肉の代用品として作られたもの。精進料理にとって大豆製品は重要なタンパク源であり、こうした「もどき料理」にも活用されていました。

けんちん汁

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理で出させる汁物として有名なのが、多くの根菜を煮込んで作られるけんちん汁。食材を無駄なく使えて、栄養も豊富に取ることができます。昆布や干し椎茸などを使った精進出汁で作るのが基本ですが、味噌仕立てで作る場合もあります。

精進料理が食べられるおすすめのお店

高尾山薬王院【東京都】

(画像提供:高尾山 薬王院)

大本坊と呼ばれる宿坊でいただく精進料理は、伝統を守りながらもより現代的に進化させた野菜料理が中心。

事前予約の上でいただける天狗膳(2900円~※上部写真)や高尾膳(3900円~)のほか、日により予約なしでいただける季節の料理もあります(要確認)。人数に合わせて様々なタイプのお部屋が用意されています。
※献立は仕入れや季節によって変更になります。

(画像提供:高尾山 薬王院)
■高尾山薬王院
[住所]東京都八王子市高尾町2177
[営業時間]お食事時間 11時~14時
[定休日]なし
[料金]高尾膳 3900円、天狗膳 2900円
[アクセス]【電車】京王線「高尾山口駅」より、高尾登山電鉄ケーブルカー「清滝駅」に乗り換え、「高尾山駅」下車徒歩20分 【車】圏央道「高尾山IC」より3分で専用駐車場あり、駐車場からは高尾登山電鉄ケーブルカーまたはリフトを利用
[駐車場]あり
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「高尾山薬王院」の口コミ・周辺情報はこちら

(画像提供:高尾山 薬王院)

高野山 遍照尊院【和歌山県】

(画像提供:高野山 遍照尊院)

弘法大師が高野山開創にあたって苦修練行した地に建立されている遍照尊院。宿泊者以外の方も昼食で高野山の四季を織り込んだ精進料理をいただけます。

コースは、気軽に楽しめる「八葉(2200円)」、「天軸(3300円)」、ちょっと贅沢な「摩弐(5500円※上部写真)の三種類あります。
※料理の内容は写真と異なる場合があります。

(画像提供:高野山 遍照尊院)
■高野山 遍照尊院
[住所]和歌山県伊都郡高野町高野山303
[営業時間]11時30分~13時30分(13時30分は退出)
[定休日]不定休
[料金]精進料理コース 八葉 2000円、天軸 3000円、摩弐 5000円
[アクセス]【電車】南海高野線「極楽橋駅」よりケーブルカーで「高野山駅」で下車し、奥之院行バスに乗り換え、「千手院前」停留所より徒歩10分 【車】阪和道「岸和田和泉IC」より1時間
[駐車場]あり
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(画像提供:高野山 遍照尊院)

泉仙【京都府】

(画像提供:泉仙)

泉仙の大慈院店は1963年より、臨済宗大徳寺派の大本山「大徳寺」の境内で営業している、京の老舗精進鉄鉢料理店です。

精進鉄鉢料理の「鉄鉢」とは、僧が食物を受けるために用いた鉄製のまるい鉢のこと。その鉄鉢を形どった器に四季おりおりの味覚を盛り込み、禅のこころと京料理の伝統を現代に生かした精進料理を楽しめます。

(画像提供:泉仙)
■泉仙
[住所](大慈院店)京都府京都市北区紫野大徳寺町4 大慈院内
[営業時間]11時~16時
[定休日]なし(12/28-31は休み)
[料金]精進鉄鉢料理 あやめ 3500円、ゆり 4500円、ぼたん 5500円、他
[アクセス]【電車】地下鉄烏丸線「北大路駅」より市バスで「大徳寺前」停留所より徒歩すぐ
[駐車場]なし(近隣に有料パーキングあり)
「泉仙」の詳細はこちら

(画像提供:泉仙)

修行や作法と聞くと少し敷居が高く感じる方もいるかもしれませんが、季節の旬の食材をじっくり味わえる精進料理は、身体にも心にもプラスになること間違いなし。健康を意識されている方、ちょっと疲れているなと感じている方は、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。

<監修者プロフィール>

和ごはん研究家 麻生 怜菜さん

和ごはん研究家
麻生 怜菜

1982年長崎県生まれ。全国を転々とした幼少時代を過ごす。 旅行好きの両親の影響もあり47都道府県全ての地域食材、 郷土料理食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺(調布市) であったことをきっかけに、寺の行事食に関わるようになり、 伝統的な和食(特に精進料理)に興味をもつ。日本の伝統食、 特に精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、 伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の 発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。
現在は、日本大学生物資源科学部非常勤講師(日本食文化史/ おいしさの科学)・フードアナリスト1級認定講師として、 講師・講演活動。日本食文化史・精進料理研究家として 日本の伝統食の考え方やレシピを発信。
主な著作は「寺嫁ごはん 心と体がホッとする“ゆる精進料理”」(幻冬舎)、「和食deワンプレートごはん」(タツミムック)、「おからパウダーでスッキリ腸活レシピ」(主婦の友社)ほか。
あそれい精進料理教室
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Akiko  Akiko

美味しいものを求めて、国内外を旅するライター。最近は山登りも始めるも、何よりの楽しみは下山後のビールと温泉。