旅の楽しみの一つといえば、美味しいお酒!食事と一緒に、お酒の時間を楽しみたい。さらに、宿泊先でもゆっくりお部屋にてそこでしか味わえないお酒を嗜みたい。そんなお酒大好きな人は、ついつい飲みすぎて翌日辛いなんてことも。
そこで今回は、お酒を美味しくいただきながら、旅程も楽しむための「飲み方」のコツを、肝臓専門医である浅部伸一先生(アッヴイ合同会社医学統括本部 消化器疾患領域グループマネジャー)に教えてもらいました。
せっかくの旅行、全て存分に楽しむためにチェックしてみましょう。
※この記事は2021年5月25日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
温泉は飲む前に入る。飲んだら入らない。
合間に水を飲んで、脱水に気をつける。
薬を飲んでからの飲酒は要注意。
前菜をいただきながら、スロースターディングを意識。
お酒は食事とともに楽しみ、その後はお茶にするのがいい。
女性は肝臓が小さい分、アルコールに弱いと心得る。
酒の影響、リスクは、加齢と共に高まると知る。
酒蔵やワイナリー巡りで、日中飲むのは味見に留めて。
クラフトビールはアルコール度数が高いので量に注意。
山の上など高度が高いところは、酒が回りやすい。
ふだんは飲みなれない酒を飲む時は、アルコール量を意識。
自分の適量を知ることが、旅先での失態を防ぐ第一歩。
教えてもらったのはこの方!
温泉は飲む前に入る。飲んだら入らない。

旅行中に限らず、体への負担を考えると、飲酒後の入浴は控えよう。怖いのは血圧が下がり意識を失う心配があること。飲酒すると血管が開き血圧が下がるが、温泉に入るとさらに体が温まり血管が広がり血圧が下がる。特に高血圧の薬の降圧剤を飲んでいる人は要注意。
若いと自律神経が反射的に機能し血圧を維持しようとするが、加齢と共に機能が低下するので、50代以上はさらに注意。宿には早めにチェックインし、夕飯より先に温泉に入り、もう1度入るなら、翌朝にしよう。
合間に水を飲んで、脱水に気をつける。
お酒を飲むとトイレが近くなるのはアルコールに利尿作用があるから。そのため脱水気味になるので注意しよう。特に宿の食事は味付けが濃いめの場合が多く、体の水分が奪われやすい。その状態で温泉に入ると、汗をかいてさらに水分が奪われ、そのままで就寝すると、脳梗塞や心筋梗塞など、血管が詰まる病気のリスクが高まる。
お酒を飲む時は一緒に水分を摂り、ゆっくり飲むように心がけよう。お水代わりにビールをチェイサーにする強者もいるが、それはNG。ビールを飲む時にも一緒に水分摂取を。
薬を飲んでからの飲酒は要注意。
薬はアルコールと同じ肝臓で分解されるものがある。そのため、一緒に飲んでしまうと酔いが回ることや、薬が効き過ぎたり、反対に効かなくなったりするので注意が必要だ。基本的には薬を飲む日はアルコールを控えたいが、抗アレルギー剤や血圧の薬など日常的に飲む薬の場合は、アルコールと一緒に飲んでもいいものなのか、かかりつけ医に相談しよう。
前菜をいただきながら、スロースターディングを意識。

悪酔いを防ぐには、空きっ腹にお酒を入れないこと。ビールは空腹の方が美味しいなんて人もいるが、先に少し食べ物をお腹に入れ、お酒の吸収を穏やかにするといい。おすすめなのは食物繊維や脂分、タンパク質を含んでいるもの。宿の食事ではよくはじめの突き出しやオードブルで、そういう食べ物が出てくる。
食べる前にグビグビ飲むと酔いが回るし、総量が増えてしまうので、意識してスロースターティングにするといい。ゆっくり食事を楽しみながら、味わうように飲もう。
お酒は食事とともに楽しみ、その後はお茶にするのがいい。
酔って失態を晒したり、二日酔いで辛い思いをしたりするのは、結局、適量を超えて、飲み過ぎているから。宿だとこのまますぐ寝られるという安心感から、飲み過ぎることが多いが、「お酒は食事の間だけ楽しむ」と区切ると、飲み過ぎを防げる。
居酒屋や家飲みでは、つい際限なく飲んでしまいがちだが、宿の食事では大抵、最後にご飯とデザートが出る。そこまで来たらお酒を終えて、お茶に変える。そう決めておくと、飲み過ぎを防げる。食後におしゃべりを楽しむ時もお茶にしたい。
女性は肝臓が小さい分、アルコールに弱いと心得る。

アルコール分解能力は肝臓の大きさに関係し、肝臓の大きさは体の大きさに比例する。肝臓は心臓などと違い、同じ働きをする細胞が集まる臓器で、サイズが大きいと一度に処理できる力も大きくなる。そのため、男性より体が小さくホルモンの影響もある女性は、個人差はあるけれど、アルコール処理能力が低く、適量は男性の半分といわれている。
酒の影響、リスクは、加齢と共に高まると知る。
年齢を重ねると自律神経の働きが衰え、体内に水分を保つ力が弱まり、体が乾きやすくなる。そのため、50~60代くらいから、脱水やそこから起きる血液の病気になるリスクが明らかに高くなる。どんなにお酒が強かった人も、加齢による体の変化には注意したい。もちろん若ければ大丈夫なわけではない。サウナで酒を抜くのも危険なのでやめよう。
酒蔵やワイナリー巡りで、日中飲むのは味見に留めて。
個人差はあるが、肝臓が分解できるアルコール量は意外に少なく、体重50㎏だと1時間あたり5gの純アルコール量しか分解できない。ビールなら中瓶1本分のアルコールを分解するのに4時間かかる計算だ。
旅先では昼間にお酒を飲む機会もあるが、肝臓は日中のお酒を分解している途中で、夜のお酒が入ってきて負担となり、処理が遅れてふだんより酔いやすくなることがある。自分では大丈夫なつもりでも、眠たくなるのは酔っている証拠。日中に飲むお酒は味見程度にしておこう。
クラフトビールはアルコール度数が高いので量に注意。

ビール好きが楽しみなのがクラフトビールのブルワリーを訪れること。その土地ならではのビールが味わえるのが醍醐味だが、注意したいのが一般的なビールよりアルコール度数が高めなこと。想像以上に酔ってしまうことがあるので注意しよう。
山の上など高度が高いところは、酒が回りやすい。
高度が高いところでは、ふだんよりアルコールが回りやすくなる。明確な理由はわからないが、血液の巡り方や酸素の薄さなどが、肝臓の働きに影響すると考えられている。飛行機の中で飲むと酔いやすいのも同じ理由。登山旅行で山小屋に宿泊する、高度が高い観光地を訪れるなどの際には、ふだんより酔いやすいかもしれないと、心に留めておきたい。
ふだんは飲みなれない酒を飲む時は、アルコール量を意識。
旅先ではふだんあまり飲まない日本酒を楽しむ人が多い。飲み慣れているビールや酎ハイなら、2杯くらいで酔うなどの目安がわかるが、飲み慣れないお酒は、アルコール量を考えたい。日本酒はどんどん飲みやすくなり、クイクイと飲んでしまいがちだが、日本酒1合はビール中瓶1本と同じ。また、口あたりのよい原酒は加水していないぶん、アルコール度数が高いものが多いので要注意。
自分の適量を知ることが、旅先での失態を防ぐ第一歩。

肝臓がアルコールを分解する時に必要な「アセトアルデヒド脱水素酵素」は個人差が大きく、その差が酒に強いか弱いかを決めている。酵素はほぼ遺伝で決まり、日本人の約40%は不活性型。このタイプの人は、元はそんなに強くないのに、きたえて飲めるようになった口だから要注意。旅行先で失敗しないためにも、自分の適量を把握しておこう。
教えてもらったのはこの方!
浅部伸一先生
肝臓専門医/アッヴイ合同会社医学統括本部 消化器疾患領域グループマネジャー
東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎ノ門病院などをへて、国立がんセンターやカリフォルニア留学で肝炎免疫研究などを行う。2017年より現職。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社)など。
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じゃらん編集部
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