日本人は古くからおむすびが大好き。その歴史は長く、弥生時代からおむすびが食べられていたのではないかと言われています。携帯食として便利なのはもちろん、最近では健康食としても注目されています。
今回は、日本各地の食材やその調理法などに詳しい「JA女性組織協議会」の方々にご協力いただき、おむすびに合う各地の食材や食べ方を教えていただきました。その土地に古くから伝わっているものや、現地のJA女性組織の方が考案したものなど、ご当地米とあわせてご紹介します。
※この記事は2022年3月31日時点での情報です。
ふっくらごはんに閉じ込める、ツウ好みおむすび
野菜も一緒に食べられる混ぜご飯系おむすび
一口目から香りとうまみを感じる、まとわせ系おむすび
お豆たっぷりで高たんぱく!糖質オフ系おむすび
今回おむすびと合うご当地食材について教えてくれた「JA全国女性組織協議会」について
ふっくらごはんに閉じ込める、ツウ好みおむすび
お茶の佃煮(静岡県/掛川市)
茶葉の生産量、収穫量、栽培面積で全国1位を誇る静岡茶。そんなお茶の産地では料理にお茶が活用されることもしばしば。現地の協議会方に教えていただいた具材は、なんとお茶を飲んだ後の茶殻を活用したものでした。お茶と一緒に栄養も出てしまったのでは?と思いきや、茶殻には食物繊維やビタミンA、ビタミンEなどの成分が多く含まれています。
美味しくお茶を飲み終わった後の茶殻に焼き海苔やごま油を加え、醤油や砂糖で佃煮にした「お茶の佃煮」。お茶の渋みと甘辛いたれがごはんによく合う大人の味です。
■併せて食べたいお米はこれ!
きぬむすめ
良食味品種である「キヌヒカリ」と「祭り晴」をかけ合わせて生まれたお米で、キヌヒカリの娘ということで「きぬむすめ」という名前になったのだとか。炊き上がりの白さとつやが食欲をそそり、粘り強く柔らかい食感で冷めてもおいしい特徴があります。
飛騨トマト(岐阜県/飛騨市)
年間約6300万個も出荷される、飛騨の人気ブランドトマト「飛騨トマト」。昼夜の寒暖差が大きい飛騨地方で作られるこのトマトは、糖度と酸味に優れており、お米との相性がとっても良い食材です。
角切りにした飛騨トマトと油を切ったツナをマヨネーズで和え、塩むすびに具として入れます。おむすびにトマトは珍しい組み合わせに感じますが、いつものツナマヨおむすびがジューシーなトマトでグレードアップ。甘みと酸味、そして塩気の絶妙なバランスで、夏にも食がすすむおむすびです。
■併せて食べたいお米はこれ!
飛騨こしひかり
北アルプスや白山山系からの清らかな水と、昼夜の大きい寒暖差を活かした栽培により、粘りが強くふっくらとした炊き上がりとなるお米です。県内外から高い評価を受ける飛騨産のコシヒカリは、冷めてもおいしく、おむすびにもぴったりです。
へしこ(福井県/若狭町)
福井県若狭地方の伝統料理「へしこ」は、昔から冬を越すための保存食として親しまれてきました。青魚に塩をふり、塩漬けにしたあと更にぬか漬けにして一年以上熟成させてつくられます。使われる魚の種類は家庭により様々だそうですが、若狭湾で獲れるサバを使った「鯖のへしこ」は若狭地方の特産品となっています。
「へしこ」についているぬかを軽く落とし、グリルなどで焼いてほぐしておむすびにするのがおすすめ。塩気がとても強いので、少しの量でお米がすすみます。焼くと魚の油分がじゅわっとあふれ、独特の風味がなんとも言えないおいしさです。
■併せて食べたいお米はこれ!
いちほまれ
こしひかり発祥の地である福井にて、およそ6年の歳月を掛けて開発した次世代を担う品種。「日本一(いち)美味しい、誉れ(ほまれ)高きお米」となってほしいという思いが込められており、粘り、米の粒感、甘みなどのバランスが素晴らしいお米です。
生姜の佃煮(和歌山県/和歌山市)
和歌山県は全国有数の新生姜産地。和歌山県での栽培は大正初期からと歴史があり、そのほとんどが和歌山市内で作られています。生姜の生産農家ではごはんのお供として生姜を佃煮にして食べているそうで、こちらをおむすびの具材として教えていただきました。
生姜をかつお節、ごまと一緒に醤油・酒・砂糖・みりんなどで味付けし佃煮にします。ピリッとした生姜の風味とシャキッとした食感、甘辛くてごはんがすすむ味付け。食べると生姜の効果で体がぽかぽかとしてくる、元気になれるおむすびです。
■併せて食べたいお米はこれ!
つや姫
近年の酷暑にも負けない品種「つや姫」の栽培が導入された和歌山。和歌山県特別栽培農産物の認定を受けたこだわりの「つや姫」を提供しているのだそうです。甘味と旨味のバランスに、見た目も良いお米で、冷めても美味しいためおむすびにもぴったりです。
椎茸の佃煮(福岡県/八女・筑後地区)
福岡県の南西部に位置する八女地方では、寒暖差を利用した椎茸の栽培が盛んに行われています。農薬や添加物を加えることなく、クヌギを主とした原木栽培でじっくり育てた椎茸は、肉厚で豊かな香りと濃厚な旨味が特徴です。
この椎茸を使い、醤油・酒・砂糖・みりんで味付けをし、佃煮にすることで豊富な栄養を余すことなく接種できることから、ご飯のお供として昔から食べられています。切り方によっては、肉厚な食感も楽しめ、手軽に栄養補給できる椎茸の佃煮は、おむすびとの相性抜群です。
■併せて食べたいお米はこれ!
元気つくし
夏の高温でも元気に育ち、美味しく実るお米として10年の歳月をかけて開発された「元気つくし」。一粒一粒がしっかりしていて、ツヤと粘りがあります。冷めても粘りやもちもち感があり、噛めば噛むほど甘味がますので、おむすびにもぴったりの品種です。
野菜も一緒に食べられる混ぜご飯系おむすび
おみ漬け(山形県/村山地方)
「おみ漬け」は、山形県村山地方の伝統野菜「山形青菜(せいさい)」と、大根や人参などを一緒に細かく刻んで漬けた漬物です。その昔、青菜は肉厚の茎の部分を食べ、葉先は捨ててしまうこともあったため、もったいないと近江出身の商人が刻んで漬物にしたことから「近江漬け」が転化して「おみ漬け」になったとも、「揉み漬け」が「おみ漬け」になったともいわれています。余った野菜を使い切るための知恵として発展した料理だったのかもしれません。
「おみ漬け」は冬の山形に欠かせない郷土料理として今も愛されています。刻んでもシャキシャキと存在感があり、彩りも良く、味の濃い漬物はおむすびにぴったりです。
■併せて食べたいお米はこれ!
雪若丸
米どころ山形が産んだ「つや姫」の次に開発され生まれた弟「雪若丸」。しっかりした粒感や稲の姿が男性的であり、白さとつやのある見た目が雪のように美しいことから名付けられたのだとか。一粒一粒しっかりと弾力があり食感がよく、おむすびにも向いている品種です。
嬬恋高原キャベツ(群馬県/嬬恋村)
群馬県嬬恋村は夏秋キャベツの産地で、夏から秋のキャベツ出荷量は全国1位!7⽉から10⽉末にかけて約1億5000万個ものキャベツが嬬恋村で作られています。様々な方法でキャベツを美味しく調理している現地のJA女性部が、キャベツがおむすびの具材になるのか試してみたいと試行錯誤し、考案したレシピを教えていただきました。
キャベツとじゃこ、かつお節、ごまを醤油で炒めたものをごはんに混ぜてまぜごはんおむすびに。炒ったじゃこやゴマの風味が香ばしく、キャベツのシャキッと感も残っていてぺろりと食べられます。おむすび一個でキャベツの食物繊維とじゃこのカルシウム、ゴマやかつおの栄養も摂取でき栄養面も魅力的です。
■併せて食べたいお米はこれ!
利根きらり
群馬県の北東部、豊かな自然環境を有し、冷涼な気候ときれいな水に育まれた利根沼田地区。「利根きらり」はJA利根沼田管内で栽培されたコシヒカリの愛称で、もちもちと甘みが強く美味しいプレミアム米です。
きゅうりの漬物(埼玉県/JAほくさい)
埼玉県はきゅうりの産出額が全国4位。栽培の際できた規格外のきゅうりの多くは漬物などで消費しているのだとか。そんなきゅうりの漬物を、細く刻んでごまなどであえ、混ぜご飯にしてむすんで食べてみたところ、思いのほかおいしかったという発見レシピを教えていただきました。
カリウムが豊富で、ビタミンCがトマトの1.26倍と栄養面でも優秀なきゅうり。細かく刻めば味がなじみ、スライスするなど少し大き目に切っていれればパリパリとした食感も楽しめます。酸味と塩気で夏にも食がすすむおむすびです。
■併せて食べたいお米はこれ!
彩のかがやき
2005年に品種登録された、埼玉県が育成したオリジナルブランド米です。稲特有の病気に強い特徴を生かして、減農薬栽培がされています。タンパク質が低いため柔らかくて粘りが強く、さっぱりとした甘さの美味しいお米です。
野沢菜漬け(長野県)
野沢温泉村をはじめ長野県全域で栽培されてきた野菜「野沢菜」。長野の厳しい冬のころ、霜に2、3回当たってから収穫すると甘く柔らかくなるため、寒くなるのを待ってから収穫作業を行うのだとか。その漬物である「野沢菜漬け」はこの地域の特産品となっています。
「野沢菜漬け」には浅漬けと古漬けがあり、どちらもおむすびによく合います。浅漬けはシャキシャキとした食感でさっぱりと食べられ、発酵が進んでべっこう色に仕上がった古漬け(本漬け)は、強めの酸味と古漬けならではの深い味わいが楽しめます。
■併せて食べたいお米はこれ!
風さやか
長野県農業試験場が13年の歳月をかけて開発した長野県オリジナル米。炊飯試験では16時間経過しても、食味・硬さ・粘りの低下が小さく、冷めてももっちりとした食感とおいしさが保たれ、おむすびやお弁当などにも適しているお米です。
一口目から香りとうまみを感じる、まとわせ系おむすび
かぐらなんばん味噌(新潟県)
「神楽南蛮(かぐらなんばん)」は、戦国時代の頃に日本に渡来し、新潟県中越地区で昔から栽培されてきた、ピーマンのような見た目で唐辛子の辛味がある伝統野菜です。この「神楽南蛮」を越後味噌や大葉とともに煮詰めて作られた「かぐらなんばん味噌」は、ごはんのお供や酒の肴にぴったり。
今回、この「かぐらなんばん味噌」を「けんさ焼き」にして食べるというレシピをおすすめしてもらいました。「けんさ焼き」とは、剣の先におむすびを刺し焼いて食べたという説から、ごはんがあたたかいうちに丸いおむすびをつくり、味噌をつけて焼いて食べる食べ方です。ピリリと辛い「神楽南蛮」と焼けて香ばしい味噌の風味がごはんと抜群の相性です。
■併せて食べたいお米はこれ!
新之助
米どころとしての歴史を誇る新潟が、現代の食風景と向き合って新しい米づくりに挑戦。研究を重ね誕生した新潟米「新之助」は、大粒できれいなツヤがあり、コクと甘みが満ちているお米です。ごはんが冷めてもお米の表面や粒全体が硬くなりにくい特長があり、おむすびにもぴったりです。
とろろ昆布(富山県)
昆布の消費量が日本一の富山県。港町として栄えた江戸時代に北海道から昆布が多く運び込まれ、それ以来富山県の食文化には欠かせない食材として様々な郷土料理に使われてきました。その中の一つが「とろろ昆布」。昆布を何枚も重ねて薄く削ったふわふわの昆布で、「絹糸のように上品な白とろろ昆布」と、「酸味豊かで深い味わいの黒とろろ昆布」の2種類が定番となっています。
おむすびの海苔のところを、とろろ昆布に変えてまぶした「とろろ昆布おむすび」は富山県では定番のおむすび。簡単に作れて腹持ちがよく、食物繊維やミネラルが豊富に含まれているので栄養面でも優れています。梅干しとの相性も良く、昆布の旨味と梅干しの酸味が食欲をより一層かきたてます。
■併せて食べたいお米はこれ!
富富富(ふふふ)
2018年に本格デビューした、富山米の新品種。きわだつ旨みと甘みが特徴で、冷めてもおいしいお米です。名前には、食べた人が美味しくて「ふふふ」と微笑んでしまうようなお米にしたいという想いが込められています。
大葉味噌(大阪府)
刺し身の添え物や薬味として日本料理を彩る「大葉」は、大阪府寝屋川市の特産品です。ビタミンをはじめ、抗酸化作用、免疫アップが期待できるβ-カロテンなど栄養が豊富に含まれており、昔から漢方やからだの不調をととのえる食材としても使われています。
現地のJA女性組織の方に教えていただいたのは「大葉味噌」を使ったおむすびです。大葉を刻み、生姜とごまを加え、たっぷりの味噌とごま油・みりん・酒・砂糖で煮詰めた「大葉味噌」は、ごはんがとまらない味付け。「大葉味噌」を薄く塗ったおむすびはそのままでも焼き目をつけても美味しくいただけます。
■併せて食べたいお米はこれ!
ヒノヒカリ
陽(ひ)は西日本、九州を表し、お米が太陽のように光り輝くことから名づけられた品種で、大阪や奈良、宮崎などで栽培されています。小粒であっさりとしており、どんな料理とも相性がよく、冷めてもおいしいのでおむすびにもぴったりです。
板わかめ(島根県)
豊かな森林がある山間部からいくつもの清流が日本海へと注ぎ込み、森からの栄養を元に育った島根県のわかめ。「板わかめ」は、そんな日本海で採れたわかめを何も加えることなく天日干しし、板状にした島根県を代表する特産品の一つです。わかめが持つ塩分と旨味だけのシンプルな味わいで、乾燥わかめや海苔とは異なる独特の風味を持っています。
そのまま食べても充分美味しいのですが、炊きたてのご飯で作ったおむすびに砕いてふりかけると、わかめ本来の美味しさと磯の香り、ほのかな塩気が、米の甘味を一層引き立たせます。わかめを混ぜ込んだ「わかめごはん」のおむすびとは全く異なる味わいなので、ぜひ一度試してほしいおむすびです。
■併せて食べたいお米はこれ!
たたら焰米(たたらほむらまい)
一般財団法人日本穀物検定協会が実施している「米の食味ランキング」で、平成29年から3年連続で最高ランクの特Aを獲得した島根県産の「つや姫」。この「つや姫」をさらに厳選し、厳しい要件を科したこだわりのお米が「たたら焰米」です。口に入れ、噛み締めた瞬間にお米の旨味と風味が口の中に広がる逸品です。
お豆たっぷりで高たんぱく!糖質オフ系おむすび
枝豆(静岡県/清水区)
駿河湾に面して日照量が豊富な静岡市清水区は、新鮮でおいしいエダマメの産地です。温室栽培されていて、1年中採れたてのエダマメが出荷できるのは全国でも清水だけ。鮮度維持のため枝付きで出荷し、「駒豆(こまめ)」という商品名で販売されています。
野菜にはあまり含まれていないたんぱく質が豊富で、おむすびに入れれば食べ応えがありながらも。肉や魚よりカロリーオフできる嬉しい食材。エダマメごはんを炊き、それをおむすびにするもよし、茹でたエダマメを楽しんだ残りをごはんに混ぜておむすびにするもよし。色鮮やかで食感が楽しく、豆の旨味と風味が豊かに感じられます。
■併せて食べたいお米はこれ!
しみずの風こしひかり
清水の米農家が静岡県西部の出作地で栽培した100%静岡県産のコシヒカリ。生産管理を統一し、肥料を通常より少なくして食味重視の栽培にこだわって作られています。粘りが強く、もちもちとして食味に優れ、冷めてもおいしいのでおむすびやお弁当にも最適です。
えび豆(滋賀県/湖北地域)
滋賀県では、古くから祝儀や法事、祭りなどの集まりで大豆を使用した料理がよく食べられていたそうです。琵琶湖で獲れる小さな淡水エビ「スジエビ」と大豆を一緒に甘辛く煮た滋賀県の郷土料理「えび豆」もその一つ。「エビのように腰が曲がるまでまめにくらせますように」との長寿への願いが込められている、縁起の良い伝統料理です。
小さなえびと大豆をまるごと食べるため、カルシウムとタンパク質が豊富に摂取でき、長寿食としても注目される「えび豆」。そんな「えび豆」をごはんに混ぜ込んでおむすびにした「えび豆おむすび」は、甘い優しい味付けにほっこりします。
■併せて食べたいお米はこれ!
みずかがみ
環境に対する厳しい基準を設け生産された「環境こだわり米」で、豊かな自然と琵琶湖に息づく命と文化を守りたいという思いが作り上げた滋賀県のブランド米です。炊き上がりはキラキラつややかで、ほどよい粘りと、まろやかな甘みで、冷めてもおいしくおむすびにもぴったりです。
今回おむすびと合うご当地食材について教えてくれた「JA全国女性組織協議会」について
農業協同組合「JA」をよりどころとして、食や農、くらしに関心のある女性が集まって活動する組織です。20代から90代まで、農家でもそうでない人も、全国に579組織、約45万人のメンバーがおり、おもに食農教育や地産地消にかかわる活動、助けあい活動(高齢者福祉)、料理や手芸などの趣味、健康の維持向上のためのスポーツ、環境保全活動などに取り組んでいます。
まとめ
いかがでしたか?日本食として定番であり、シンプルながら奥が深いおむすび。まだまだ知られざるおむすびの具が、日本各地にたくさんありそうですね。ごはんに合う食材を発見したら、各地のおいしいブランド米と合わせてぜひ「おむすび」にしてみてください。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、お住まいやお出かけされる都道府県の要請をご確認の上、感染拡大防止に充分ご配慮いただくようお願いいたします。
鳥井 晴風
5人の子どもを持つママ編集ライター。 子供に大好きな漫画の主人公の名前を付けてしまうほど漫画アニメ好き。キャラ弁やキャラケーキづくりが得意。好きなお出かけ先は道の駅や直売所など食材が豊富なところ。 自分で収穫する味覚狩りや芋ほりも大好き。