こぼらさんの石川県の旅行記
芭蕉が絶賛した山中温泉郷
- 1日目2019年9月2日(月)
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「芭蕉の館」に掲示されていた「山中温泉で芭蕉が詠んだ句」。8泊9日も滞在したので、山中温泉では6句も詠んでいます。
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山中温泉街から、こおろぎ橋に下りる坂道の脇に立っていた芭蕉句碑です。 【ゐさり火に 河鹿や波の 下むせび ばせを】 句意は「たいまつで川面を照らして漁をする里人たち。静かにこだまする渓流の音が、じっと川の底に身を潜めている河鹿(小海老やゴリ)たちのむせび泣きに聞こえることだ。」というところでしょうか。 山中温泉街には、古い石の芭蕉句碑が他にもう一つあります。あやとり橋の袂(鶴仙渓遊歩道側)です。
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解説パネルが付いていませんので、よくよく見ないと芭蕉句碑だとは気付きにくいです。かなり古い句碑のようで、風情があります。
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鶴仙渓遊歩道の南端にある芭蕉堂。山中の名湯を讃えた松尾芭蕉を祀る堂です。 堂の脇に見えている道が鶴仙渓遊歩道です。鶴仙渓遊歩道の整備と合わせて、芭蕉堂は明治43年に建立されました。 鶴仙渓の風景の美しさを見て、芭蕉翁は「行脚の楽しみ ここにあり」と絶賛したと伝わります。
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芭蕉翁が鶴仙渓を眺め、絶賛したと伝わる場所の近くにある黒谷橋。現在は石橋ですが、当時の橋は木造で、川面から突き出た岩を橋脚にしていたそうです。
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黒谷橋の袂にあった芭蕉句碑。と、思いきや句碑ではありません。紀行文の一節です。 【この川のくろ谷橋ハ 絶景の地や 行脚のたのしみ ここにあり】 芭蕉翁は黒谷橋の近くに来て、鶴仙渓を眺めていたのですね。当時の橋は今のような石橋ではなく木製でしたので、もっと低くて川の流れに近い場所からの眺めだったと思います。 それにしても芭蕉翁の美しい筆遣いを見ると、各地の芭蕉句碑で見慣れただけなのですが、知り合いに出会ったような気がするのは不思議です。
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鶴仙渓遊歩道の途中、あやとり橋と黒谷橋の中間地点にある小才橋。芭蕉が鶴仙渓を眺めていた黒谷橋は、川面に突き出た岩を橋脚とした木製の橋だったといいますが、こんな感じだったのでしょうか。上に立って芭蕉翁気取りがしたくなりました。
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芭蕉の館は、芭蕉が泊まった「泉屋」に隣接していた「扇屋」の別荘を改築したものです。山中温泉街で最古の宿屋建築ですが、築110年余りなので、芭蕉翁が来訪した時代のものではありません。 広い庭園を備えた和風情緒豊かな建物である事が評価され、平成16年に大改修が加えられ、芭蕉ゆかりの品々を展示する施設となったのです。 写真中央部が玄関ですが、その右側に石像が二体見えます。芭蕉と弟子・曽良の像です。
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「芭蕉の館」の前にある芭蕉句碑。句碑よりは、「奥の細道」の有名なシーンを描いた記念碑と言った方が正しいかもしれません。二人の像の脇に解説パネルがあり、句と説明が表示されています。 【今日よりや 書き付け消さん 笠の露】 「奥の細道」に登場する句で、陸奥と北陸の長旅を芭蕉翁に随伴してきた曽良が、腹の病により一足先に帰ることになり、一人旅となってしまう芭蕉の気持ちを詠んだものです。像は芭蕉に侘びている曽良の姿で、「芭蕉と曽良・別れの像」と呼ばれています。
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1階には大広間があり、抹茶を頂きながら見事な庭園を楽しむ事ができるようになっています。
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2階に、奥の細道を旅した芭蕉翁にちなむ品々が展示されています。芭蕉が泊まった「泉屋」の若主人であり、芭蕉の弟子となった俳人・長谷部桃妖にちなむ資料も多く展示されています。
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芭蕉翁の高弟(蕉門十哲の一人)森川許六が描いた 「 奥の細道行脚之図 」。奥の細道の旅を行く芭蕉翁と曽良が描かれています。展示室の壁に掛かっていました。 レプリカのようですが、学生時代に教科書や参考書でよく見かけた絵です。芭蕉の館の前にある「芭蕉と曽良・別れの像」とは、二人の姿の印象がかなり違います。
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「芭蕉の館」の庭園。大広間の隣に扉があり、庭園に出ることができます。履き替え用の雪駄も用意されています。 かつて老舗旅館の別荘だったということは、ステイタスの高い人たちが宿泊するための特別な館だったのでしょう。 芭蕉が宿泊した「泉屋」が、どのように隣接していたのか知るべくもありませんが、こうした見事な庭園を備えた宿であったのだろうと思います。
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「芭蕉の館」の通り向かいに、観光客用の無料駐車場があります。その入口には、長谷部桃妖の句碑が立っていました。 「山人の 昼寝をしばれ 蔦かつら」(やまんとの ひるねをしばれ つたかつら) 簡略な木製の碑ではあるものの、山中温泉街にはこうした句碑が至るところで見られます。
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ゆげ街道を歩いていると、山中片岡鶴太郎工藝館がありました。俳優の片岡鶴太郎さんは芸術的才覚もお持ちであるとは聞いていましたが、温泉地でこうした作品展示をしておられるとは知りませんでした。芭蕉翁が絶賛した山中温泉郷の風情に、片岡鶴太郎さんも魅了されたのでしょうか。 工芸館にはカフェも併設されており、喉も渇いていたので入ってみました。
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片岡鶴太郎工藝館の玄関を入ると、まずはショップ(土産物売り場)があり、その右手に原画展示室の扉が、正面奥にカフェがあります。カフェの方にアクセスできる別の出入り口もあります。
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片岡鶴太郎工藝館の玄関脇には、「加賀珈琲」を扱っているカフェを示す行灯が置いてありました。加賀珈琲は石川のご当地コーヒーブランドです。 カフェルームの壁には、片岡鶴太郎さんの描いた大作「龍」がはめ込まれています。
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平成14年に片岡鶴太郎さんが、この工芸館の母屋をアトリエにして描いた「龍」がカフェルームの奥の壁に掛かっていました。カフェルームに入ると、正面奥に白龍が構えていて来店者を睨み据えているように見えます。絵はとても大きく、龍の眼光も鋭くて圧倒されます。
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「龍」の大きな絵を、すぐ前で見ながら頂いた特製宇治金時。抹茶シロップは、品のある穏やかな甘さでした。金時には練乳がたっぷり掛かっていて美味しかった。しばし暑さを忘れることができました。
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家内はアイスカフェオレ。ローカルブランドの加賀珈琲なのに平凡な味だったらしく、私の特製宇治金時を見て、うらやましがっていました。
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カフェで涼んだ後で、片岡鶴太郎さんの作品展示室に入りました。原画展示室やカフェのある建物は昭和6年建築の洋館で、平成11年に国指定登録有形文化財となっています。作品展示室に入るには入館料500円(大人)が必要です。 原画展示室内は撮影禁止なので、案内パンフと入館券で片岡鶴太郎さんの展示作品を紹介します。展示室で一番存在感を放っているのは鷲の墨彩画です。とても大きな絵で、数メートル離れて見ないと全体の様子がわかりにくいほどです。
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案内パンフや入館券には、生き生きと輝く魚の絵が印刷されています。本物は原画展示室の壁に掛かっています。 片岡鶴太郎さんは魚の絵が得意なようで、多くを描いています。なんでも大の魚好きで、往年の料理の鉄人・道場六三郎氏より魚のさばき方を教えてもらった程だそうです。新鮮な魚を入手して、絵のモデルにした後は、それらを自分で料理し美味しく頂くのが楽しみなのだそうです。 原画展示室入館記念なのか、山中塗の箸を頂けました。鶴太郎さんの作品ではありません。
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菊の湯(男湯)前にある芭蕉句碑。山中温泉の由来である白鷺伝説オブジェの隣に立っています。石ではなく木製の碑ですが、温泉街の中心にあり、奥の細道に登場する名句を紹介しています。 【山中や 菊はたおらぬ 湯の匂 芭蕉】(やまなかや きくはたおらぬ ゆのにおい) 句意は(菊の露を飲んで700歳まで生きたとされる菊慈童の伝説があるが)「山中温泉では、菊の露に頼らなくても、湯の香りをかいでいるだけで長寿が期待できそうだ。」といったところでしょうか。山中の湯を、芭蕉翁はとりわけ気に入っていたようです。 この句は、山中温泉の総湯である「菊の湯」の名前の由来にもなっています。
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菊の湯(男湯)玄関の斜め前(白鷺伝説オブジェの斜め後ろ)にあります。達筆すぎて、とても読み取れません。調べてみると次の句が刻まれているようでした。 【秋水の 音高まりて 人を想ふ】 昭和27年9月に、俳人・高浜虚子が山中温泉で詠んだ句です。虚子は昭和18年にも山中を訪れていて、孫弟子・森田愛子女史とその母親に歌謡や舞いを披露してもらい、素晴らしい思い出となったようです。森田愛子は昭和22年に早世し、亡き後に山中を再訪した虚子が女史を思い出して詠んだとされます。 虚子の門弟・伊藤柏翠は、古の芭蕉翁と森田愛子を想っての句であると説明していたそうです。同じく著名で、山中に足跡を残した俳人として、芭蕉翁に敬意を払っていたのでしょう。
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「芭蕉珈琲」と渋い名前を冠する喫茶店。俳聖・松尾芭蕉が足跡を残した山中温泉街の中心地にあります。自家製ワッフルやパイ、フォンダンショコラなどのスイーツがメインです。
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芭蕉という名前から、抹茶系のドリンク・スイーツがメインかと思いましたが、そうではありませんでした。店内の雰囲気はロン毛にジーンズ姿の学生がたむろしていそうな70年代風で、昭和後半にタイムワープしたような気分になります。
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「芭蕉珈琲」のプリントが渋いコーヒーカップ。お腹が空いてきていたので、特製フレンチトーストとセットにして頂きました。 特製フレンチトーストは10食限定でしたが、平日だったので夫婦で2食オーダーできました。
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特製フレンチトースト。コーヒーをセットして850円也。トッピングの完熟ラズベリーがとても美味しかった。シナモン風味が利いたトーストも、フランスパンの持ち味が良く出ていました。とっても食べ応えがあります。
芭蕉が絶賛した山中温泉郷
1日目の旅ルート
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