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こぼらさんの三重県の旅行記

伊勢本街道・櫃坂峠〜丹生大師

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櫃坂峠(ひっさかとうげ)は、津市美杉町上多気と松阪市飯南町上仁柿を結ぶ伊勢本街道の峠です。伊勢本街道を歩いて伊勢神宮を目指してきた旅人にとって、山岳路の終わりを告げる最後の難所でした。旧峠道の大部分は現在は国道368号線に置き換わっていて、自動車で越す事ができますが、それでも対向車とのすれ違いには緊張を強いられます。 いにしえの旅人の気分を味わいながら峠を越えた後、香肌峡の景観を楽しみつつ和歌山別街道に足を伸ばして丹生大師を参詣しました。その後、松阪温泉の湯と食事でリラックスして帰りました。

三重ツウ こぼらさん 男性 / 60代

1日目2019年11月9日(土)

道の駅 美杉

津市

「道の駅 美杉」を   >

旧伊勢本街道の櫃坂峠(ひっさかとうげ)を車で越すために、「道の駅・美杉」をスタート地点として使いました。「道の駅・美杉」から櫃坂峠までは6km程度ありますが、その間に公衆トイレや自販機はありませんので、道の駅で済ませておくのをお勧めします。 「道の駅・美杉」の前(北側)を通る国道368号線を、東に向けて走り櫃坂峠に近付いていきます。晩秋の低い日射しが山に遮られ、昼過ぎだったにも関わらず道が陰っていました。

櫃坂峠(ひっさかとうげ)を越すのは初めてでした。現代では宿場もなく、鉄道駅も遠いため、歩いて越すのは難しい峠道です。自動車を使っても、道幅が狭く、対向車との交差に苦労します。それでも、大和方面から伊勢神宮に行くには最短の道であることから、中世から近世にかけてとても賑わっていた伊勢本街道の最終山岳路です。この峠を越えれば伊勢神宮は近いという旅人たちの気持ちを感じ取ってみたくて、一度は通ってみようと思っていました。 国道368号線には「伊勢本街道」の表示が出ていて、この道の歴史の古さを確認できます。

オフロードランド美杉

津市

「オフロードランド美杉」を   >

決してオフロード走行を楽しむために来たのではありません。伊勢本街道の櫃坂峠を車で越えるために、国道368号線を津市美杉町上多気から松阪市飯南町に向けて走ってきたのです。 途中、雲出川支流の立川の美しい渓流を街道脇に見つけました。近くに「名水・鶯の水」という水場もあります。この渓流の対岸にオフロードランド美杉はあります。まわりはとても静かでしたが、オフロードバイクの爆音がこだましていました。

清流の里ぬくみ

津市

「清流の里ぬくみ」を   >

街道沿いに、オフロードランド美杉より立川の上流方向へ少し進むと、「清流の里ぬくみ」の建物があります。夏場は山深くのコテージや合宿所として賑わうのでしょうが、さすがに晩秋では閉鎖されているようでした。街道から施設に行くには立川の渓流を橋で渡りますが、その付近の渓流が実に美しいのです。

「道の駅・美杉」から櫃坂峠までの間は、多くの部分が樹木によって視界が遮られています。峠道で見晴らしを期待していましたので、少々がっかりしました。 参宮の旅人たちにとって、この峠道を越してしまえば伊勢神宮まで山岳路はなく、はやる気持ちで歩いていたのだろうと察しました。見晴らしが良くても悪くても、あと少しで伊勢の地だという気持ちが強かったことでしょう。

櫃坂峠の標高は435mなので、車に乗っている限り苦労せずに越す事ができます。峠を過ぎて、少し下り坂になると視界が一気に開けます。 このあたりから櫃坂道と呼ばれる難所に差しかかります。視界が開ける分、道が深い谷の上の断崖絶壁にある事がわかるので、プレッシャーを感じてしまうのです。 車に乗っていると、ガードレールや並木があるので断崖絶壁ぶりを余り実感しません。車から降り、ガードレールに寄りかかって崖下を見ると、あらためて怖さがわかるという具合です。

伊勢本街道 櫃坂峠

かつて伊勢本街道の難所の筆頭として知られた櫃坂峠と櫃坂道。狭い街道の路肩には簡単なガードレールがしつらえてあるだけで、その外側は深い谷になっています。運転していて、とても緊張します。

伊勢本街道 櫃坂道

写真は、伊勢本街道の難所と言われた櫃坂道です。「お伊勢参りして こわいとこどこか、櫃坂(ひっさか)・飼坂・鞍取坂…」と第一に唄われたくらい手強かった櫃坂峠。その櫃坂峠の中でも、最も手強い部分は櫃坂道と呼ばれました。 街道の路肩が崩れた跡が見えます。樹木を植えて補強しているようですが、大きく育つ前に崩れてしまうようです。古来より雨が降れば路肩が崩れやすく、団体の旅人や荷車が通過するのに苦労していた姿が想像できます。

櫃坂道を遣り過ごし、松阪市飯南町上仁柿地区まで下りると、ようやく人里が見え始めます。茶畑が綺麗です。ひとまず無事に峠を越せて安心しました。昔の旅人たちも安堵したことでしょう。

上仁柿地区まで下りてくると道幅が広くなり、対向車が気にならなくなってきました。いま通って来た櫃坂峠や櫃坂道の方を振り返っています。

高福寺

高福寺が見えます。高福寺の石垣の下には古い道標があり、「右いせ宮川へ九リ(里)」と刻まれているらしいです。昔の伊勢本街道は、高福寺の石垣の下を通っていたということです。 伊勢神宮の手前の「宮川の渡し」まで、ここから36kmにまで近付いたのです。普通に歩けば、あと1日で到着できる距離です。 伊勢参宮の旅人たちは道標を見て、無事に櫃坂道を踏破できた事を喜んでいたことでしょう。また、あと少しで伊勢神宮に到着できる事を知り、険しい峠道の連続であった道中の苦労を思い出していたのではないでしょうか。

国道368号線を走り、飯南町下仁柿を過ぎ、あと1kmほどで櫛田川に突き当たる地点に面白い景色を見つけました。山の尾根に沿って杉木立が並んでいるのです。尾根の手前にも向こうにも杉はありません。まるで馬のたてがみのようです。 私有地の境としてなのか、切り立つ尾根が崩れ落ちないように補強として植えてあるのか。いずれにせよ、とても印象的な眺めでした。

香肌峡

多気町(多気郡)

「香肌峡」を   >

飯南郵便局付近から望む香肌峡です。澄んで青い水に、少し紅葉を見せ始めた山々が迫り、見事な渓谷美を見せていました。 伊勢本街道は、櫃坂峠を越えた後、櫛田川に突き当たり、和歌山街道と合流していました。写真は、まさに合流地点付近(粥見赤滝の交差点)で撮影しています。 往時は、香肌峡に沿うように伊勢本街道(伊勢に向かう)・和歌山街道(松阪に向かう)が通っていました。昔の旅人は、香肌峡の美しい眺めを見ながら伊勢や松阪に進んだのでしょう。

香肌峡

多気町(多気郡)

「香肌峡」を   >

香肌峡は松阪の奥座敷とも言われ、神秘的な雰囲気の山々の間を蛇行して流れる櫛田川の渓谷です。 川の流れを遮るように、奇岩がごろごろしている場所もあります。何千年もの間、櫛田川の激流に晒され続けても砕かれず、耐え抜いた固い岩が露出しているのです。

伊勢本街道は、国道368号線と国道166号線とが交差する「粥見赤滝」交差点で左に折れ、国道166号線として東上します。「粥見赤滝」交差点から「大石駐在所前」交差点までの区間は、伊勢本街道と和歌山街道とが合流したルートになっているのです。 伊勢本街道は東上した後、「大石駐在所前」交差点で和歌山街道と分岐します。和歌山街道は引き続き国道166号線として松阪に向かい、伊勢本街道は県道700号線として伊勢に向かいます。 私たちは県道700号線を東上し、伊勢本街道の宿場町や川の渡しがあった津留より少し南下し、和歌山別街道沿いの名刹・丹生大師に向かいました。

丹生大師神宮寺

多気町(多気郡)

「丹生大師神宮寺」を   >

真言宗の寺院である丹生山神宮寺。通称・丹生大師の仁王門です。大修復が完了し、2019年10月に落慶法要が行われたばかりの仁王門。修復直後なので、中の仁王像ともどもピカピカです。 もともとの仁王門は1716年(享保元年)に建立され、300年余りの歴史を有する建造物だったので、こんなにピカピカに改修した経緯が気になりました。調べてみると、先代の仁王門は老朽化が著しくなってきていたため、大阪の篤志家が数億円もの資金を寄贈して大改修に踏み切ったそうです。その篤志家は、子供時代を仁王門前で過ごしたお方だそうです。 大部分の部材が新しくなりましたが、引き続き使用された部材もあるそうです。 丹生大師には初めての訪問だったので、歴史ある先代仁王門が見られなかったのは残念でしたが、まさにこれから数百年の歴史を刻んでいこうとしている仁王門に出会えたのもラッキーな事ではあります。

丹生大師の仁王門の傍らには和歌山別街道の表示が出ています。和歌山別街道とは、和歌山城と田丸城(三重県玉城町)とを結んでいた街道です。 江戸時代、松阪以南の伊勢国は紀州藩の領地でした。伊勢神宮の近くにある田丸城と和歌山城とを結ぶ街道を整備する事で、瀬戸内と伊勢湾を陸路でつないでいたのです。

丹生大師神宮寺

多気町(多気郡)

「丹生大師神宮寺」を   >

仁王門をくぐり、すぐ右手に、先代仁王門の上にあって300年にわたり参詣者を見守ってきた鯱瓦が飾ってありました。先代の仁王門が立てられたのは1716年(享保元年)なので、8代将軍・吉宗の時代です。その頃に作られた鯱瓦は長期の風雪に耐えてきた風格があります。鯱瓦の奥は、蓮の葉が浮かぶ「姿見の池」です。

仁王門をくぐり参道を進むと、弘法大師が自らの姿を映したとされる「姿見の池」が右手に広がります。自らの姿を池に映したのは、自我像を刻むためでした。 丹生大師の大師堂には、弘法大師の自我像(御影像)が祀られています。

参道をまっすぐ進むと、正面に見えてくるのは意外に小さな薬師堂です。小さくても、西国薬師四十九霊場の三十五番札所となっています。 薬師如来は伽藍の東に祀られるものですので、西には阿弥陀如来が祀られていた可能性があります。今で言うと、仁王門のあたりに阿弥陀如来像を祀った堂があったのかもしれません。

薬師堂の左手に本堂(観音堂)があります。ただし本堂は南向きなので、本堂の横が見えます。丹生大師は、もともとは丹生神社の神宮寺なので、本堂は丹生神社の社殿と向きを合わせているのです。 現在の本堂は17世紀後半に建立されました。十一面観音像が祀られています。 丹生大師は、弘法大師が若かりし頃の師・勤操大徳によって774年に開山されました。813年、真言密教の聖者となった弘法大師が、あらためて七堂伽藍を建立して大寺としたと伝わります。

丹生大師神宮寺

多気町(多気郡)

「丹生大師神宮寺」を   >

本堂と薬師堂を見て、目を左に向けると、長い石段の奥に大師堂が見えます。石段に沿って回廊も大師堂の方へ伸びています。丹生大師の見所の一つで、とても美しい風景です。 この回廊は、僧侶や参詣者を外敵から守るための施設だったそうで、三重県内の寺院では、ここでしか見られない造りとのこと。ですから、回廊の中を歩いて本堂に向かうことができます。 仁王門同様に、回廊もピカピカだったのが印象的です。古くからあった回廊は、2017年10月の台風により倒壊してしまい、仁王門と併せて修復され、2019年10月に完成した直後だったのです。

私たちは回廊の中を通らず、石段を上って大師堂に向かいました。石段を上るにつれて、徐々に姿が見えてくる大師堂は、いかにも古刹という感じがします。 ところで丹生大師は、女性の参拝も認められていたので女人高野ともいわれます。回廊は、女性が姿や顔を見られる心配をせずに、安心して参拝できるように設けられたのかもしれません。

丹生大師神宮寺

多気町(多気郡)

「丹生大師神宮寺」を   >

女人高野といわれる丹生山神宮寺の大師堂。16世紀終わりに建立され、17世紀終わり頃に再建されています。 屋根の頂に宝珠を乗せた宝形造りの建物です。本堂と同じく南面建ちです。

大師堂は御影堂とも呼ばれ、弘法大師が42歳の時に自ら彫り刻んだと伝わる自我像が本尊として祀られています。 向拝の上に伸びた屋根の隅の瓦飾りを見ると、江戸時代の建物だと感じます。

丹生大師の参拝を終えて、駐車場に戻る途中、こんな面白い幟が立っていました。ネコの「いちご」と「じゅん」って、どういうキャラクターなんでしょう? 参拝を終えてから幟を見て、仁王門の落慶法要の直後だった事を知った私たちでした。 あとは、日帰り温泉に寄ってリラックスすることにしました。

松阪温泉 熊野の郷

松阪市

「松阪温泉 熊野の郷」を   >

浴槽の種類が多い日帰り温泉で、中のレストランで本格的なバイキング料理も楽しめるようになっています。 浴場は和風とバリ風(どうしてバリなんだろう?と思う)の2種類があり、週によって男女が入れ替わります。私が訪問した日は男湯が和風になっていました。内風呂には広めの源泉風呂や勢いよく泡が噴き出す寝湯があり、露天風呂には広くて野趣あふれる岩風呂と大きな岩をくりぬいた浴槽が3つあります。さらに、洞窟の中にこもるようにして利用するミストサウナがありました。利用料金は、土日祝・平日に関係なく一律700円ですが、食事もすると割安に感じます。その訳は後で説明します。

「松阪温泉・熊野の郷」に入ると、まず受付と土産物売り場があり、その奥にレストランがあります。レストランの脇の回廊を、さらに奥に進むと浴場に行けるようになっています。

松阪温泉 熊野の郷

松阪市

「松阪温泉 熊野の郷」を   >

レストランのピザ焼き石窯の通路向かいに休憩室があります。休憩室は10畳ほどの和室になっていますが、面白いことに縁側に足湯があります。土産物を買いに来たり、レストランで食事をしに来ただけのお客さんも、湯が楽しめるように配慮されています。

浴場前の回廊から、中庭や足湯の方を見ています。先の写真とは逆方向から見ていることになります。 写真右奥にレストランや土産物売り場、そして足湯のある休憩室があります。大浴場に行くには、写真右の回廊を歩いて移動します。

松阪温泉の中にあるレストラン「レッフェル・松阪店」の様子。基本がバイキング形式になっています。メイン料理を選びドリンクバーセットを追加すると、サラダや炊き込みご飯、スープや味噌汁、ソフトドリンクやデザートなどを食べ放題・飲み放題で楽しめます。

レッフェル 松阪店

メイン料理として選んだ「きのこデミグラスハンバーグ」。これで999円(税別)というのは高いと思いきや、そうではありません。サラダバーという名目でバイキング料理(サラダ・スープ・各種惣菜・炊き込みご飯・パン・フルーツなど)が付いていて、とてもお値打ちなのです。他にステーキ類やピザなどのメニューがありますが、全てサラダバーが付いています。 さらにドリンクバー(220円+税)を追加すると、ソフトドリンクとデザートも飲み放題・食べ放題になります。一人1,300円余りで、美味しくてなかなか本格的なバイキングが楽しめました。

サラダバーコーナーで盛り付けてきたサラダやスープ。特にサラダは、へたなビュッフェ専門レストランよりも料理数が充実していて、良い食材が使われていました。ポテトサラダは、ハムがたっぷり入っていたのが印象的です。

最後にデザートを楽しんで、帰途につきました。 濃厚な味が楽しめるジャージー牛乳のソフトクリーマーも用意されていましたし、ぜんざいには白玉をたっぷり入れて、童心に帰って楽しめました。 料理もデザートも、温泉施設にあるレストランのレベルを越えていました。湯にも料理にも満足できました。

伊勢本街道・櫃坂峠〜丹生大師

1日目の旅ルート

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