日本各地にある温泉地。魅力的な宿が多くどこに行こうか悩んでしまいますよね。そこでこの記事では、日本全国の名湯を知り尽くす温泉のプロたちに、選りすぐりの温泉宿を教えてもらいました。選んでくれたのは、温泉ビューティ研究家の石井宏子さん、温泉専門家の北出恭子さん、温泉ソムリエ家元の遠間和広さん、温泉ライターの西村理恵さんの4名。温泉旅で、極上の湯浴みを楽しみましょう。
【群馬県草津町・草津温泉】草津温泉 奈良屋
湯守の技と白旗源泉の湯を、伝統の宿で味わう

草津温泉のシンボル・湯畑から徒歩1分の場所に佇む「草津温泉 奈良屋」は、1877(明治10)年創業の老舗旅館です。温泉は、草津で最も古いと言われている白旗源泉。強酸性で知られる草津の湯を、湯守が日々の温度や湯量を見極めながら管理し、まろやかな湯あたりへと整えています。

大浴場には内湯と露天風呂を備え、男女それぞれに趣の異なる湯船を用意。さらに貸切露天風呂もあり、源泉の力強さを静かに味わうことができます。白旗源泉の鮮度と、湯守の技が織りなす草津らしさを体感できる一軒です。

館内は全面畳敷きで、素足で過ごせる落ち着いた空間。客室は和室・洋室・和洋室など多彩に揃い、モダンな設えが印象的です。湯畑至近の立地とともに、草津の名湯をじっくり堪能できますよ。
プロが注目!すごいポイント
草津を代表する老舗旅館。湯守が湯量を細やかに調整し、伝統の「湯もみ」で湯温を整えるなど、絶妙な湯加減を生み出しています。強酸性の白旗源泉をやわらかく感じさせる、その職人技こそが奈良屋の真骨頂です。(温泉ソムリエ家元・遠間和広さん)
【群馬県中之条町・四万温泉】積善館 本館
建物そのものが温泉文化を表す、木造の湯宿

四万温泉「積善館 本館」は、日本最古と言われる木造湯宿建築として知られ、群馬県の重要文化財にも指定される歴史的な宿。豊富な湯量と高温の源泉を生かし、昔ながらの湯治文化を今に伝えています。
なかでも象徴的なのが「元禄の湯」。5つの小さな湯船が並び、それぞれ温度が異なるため、自分に合った湯加減でじっくり浸かることができます。

客室は利用人数に応じて選べる和室タイプが中心。中には床下を源泉が流れる天然床暖房付きの部屋もあり、湯宿ならではのぬくもりを体感できます。朝食は白米のほかおかゆを選択できるのもこの宿ならではですね。
プロが注目!すごいポイント
1930(昭和5)年に建てられた「元禄の湯」は、四万のシンボル的な湯殿です。何度も入浴していますが、いつ行っても清掃が行き届いていて気持ちよく入浴ができました。アーチ型の窓から光が差し込んでくる日中の入浴が特におすすめです。(温泉ライター・西村理恵さん)
【群馬県中之条町・たんげ温泉】たんげ温泉美郷館
山間に湧く一軒宿。滝を望む秘湯での湯治が叶う

群馬・中之条町の山間にある「たんげ温泉 美郷館」は、「日本秘湯を守る会」に名を連ねる一軒。カルシウム-硫酸塩泉のやわらかな湯ざわりが特長で、体を芯から温める湯として親しまれています。

露天風呂「月見の湯」は、季節ごとに表情を変える山景色が魅力。初夏は特に美しく、「滝見の湯」では新緑と滝を眺めながらの入浴ができます。大浴場「瀬音の湯」は太い木の梁とステンドグラスが印象的で、大正ロマンを思わせる空間。貸切風呂は、宿泊者は無料で、空いていればいつでも利用可能です。
館内は総欅造りのロビーをはじめ、木のぬくもりに満ちた設え。客室も和室を中心に落ち着いた造りで、山あいの静けさに身を委ねる時間が流れます。
プロが注目!すごいポイント
滝を望む「滝見の湯」、木造浴舎とステンドグラスが印象的な「瀬音の湯」、渓流を見下ろす露天「月見の湯」など、浴場ごとに景色と趣が異なるのも魅力。湯はシルクのようにやわらかく、湯上がりはしっとりとぬくもりが持続します。(温泉専門家・北出恭子さん)
【群馬県みなかみ町・法師温泉】法師温泉 長寿館
浴槽の底から湧く、湯力あふれる湯を堪能できる

自然湧出の湯を守り続ける一軒宿。最大の特徴は浴槽の下から温泉が湧くことです。浴槽に敷き詰めた玉石の間からぷくぷくと源泉が湧き出し、加温・循環に頼らない新鮮な湯にそのまま浸かることができます。
大浴場「法師乃湯」は、明治時代の面影を残す木造建築。高い天井と大きな窓からやわらかな光が差し込み、湯けむりが立ちのぼる光景は圧巻です。登録有形文化財である歴史的空間で、湯と建築が一体となった体験が味わえます。基本的には混浴ですが、20時~22時は女性専用時間です。

客室は落ち着いた和室が中心。窓の外には四季折々の自然が広がり、静かな山の気配に包まれます。湯そのものの魅力や、歴史を体感したい人におすすめの湯宿です。
プロが注目!すごいポイント
登録有形文化財の「法師乃湯」は、日本の温泉芸術というべき鹿鳴館様式の建築。アーチ型の窓から差し込む光や太い梁、シンメトリーに置かれた湯桶、立ち上る湯けむり、全てが美しく感動的です。浴槽の底から湧き出る自噴温泉の弱アルカリ性の硫酸塩泉は、肌をしっとりとうるおしてくれます。混浴ですが、夜に女性専用時間もありますよ。(温泉ビューティ研究家・石井宏子さん)
【神奈川県箱根町・芦ノ湖温泉】小田急 山のホテル
自家源泉を掛け流し。芦ノ湖畔の美肌の湯


芦ノ湖畔にある「小田急 山のホテル」は、自家源泉の湯を加温・加水なしで掛け流す温泉が魅力。泉質はアルカリ性単純温泉で、やわらかな肌あたりが特徴です。大浴場や露天風呂のほか、ジェットバスや気泡湯、サウナも備えています。

最上階のプレミアムルームには芦ノ湖を一望できる温泉ビューバスを設置。また、庭園に面した1階の温泉付き和洋室でも、客室でゆったりと湯浴みが可能です。
1948(昭和23)年創業、岩﨑小彌太男爵の別邸跡に建つクラシカルなホテルで、芦ノ湖や富士山を望むロケーションも格別。広大な庭園に咲くツツジやシャクナゲを眺めながら、歴史ある名湯に浸かる時間を楽しめます。
プロが注目!すごいポイント
芦ノ湖の湖畔というロケーションがまず格別。湖を望む景色に加え、庭園のツツジの美しさも印象的です。さらに注目したいのは、温泉が自家源泉であること。鮮度の高い湯を楽しめる点は大きな魅力です。(温泉ソムリエ家元・遠間和広さん)
【長野県山ノ内町・上林温泉】上林ホテル仙壽閣
1日1000t以上の湯量を誇る、クラシックな高原の温泉宿

「上林ホテル仙壽閣」は志賀高原の玄関口にあり、上林温泉に佇む宿。自慢は、1日1000t以上という圧倒的な湯量を誇る源泉使用(加水あり)の天然温泉です。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物・硫酸塩泉。やさしい湯ざわりの温泉です。露天風呂では巨大な岩から大量の温泉が流れ出ています。木のぬくもりに包まれた空間で、豊富なお湯と森林浴を存分に味わえます。

夕食は懐石料理で、料理長こだわりの月替わり献立が並びます。メイン料理では林檎を食べて育った信州牛を堪能でき、朝食は和定食と洋定食から選択可能です。

貸切風呂は内湯と露天がセットになった贅沢な造り。宿泊者はもちろん、日帰りでも利用可能(有料・当日予約制)で、プライベートな湯時間を満喫できます。

この客室では露天風呂と内風呂の2種を贅沢に楽しめます。窓から雄大な北信濃の山々を望めますよ。
プロが注目!すごいポイント
湯量豊富で驚きました。洗い場一面に掛け流された温泉があふれています。60度近い泉温があるのですが、壁を伝うようにしてお湯が注がれているためか湯船の中では適温に。ダイナミックな湯音は、まるで温泉が奏でる音楽みたいです。お湯に浸かり温泉の音を聞いていると、とても気持ちがリラックスしてきます。(温泉ライター・西村理恵さん)
【長野県山ノ内町・湯田中温泉】湯田中温泉 よろづや
桃山建築の大浴場に浸かる、歴史薫る湯宿

江戸時代から続く歴史ある旅館。館内に3本の自家源泉を持ち、豊富な湯量の温泉を加温・加水なしの掛け流しで堪能できます。本館には2003(平成15)年に国の登録有形文化財に登録された「桃山風呂」。木造伽藍建築の大浴場で、格天井や精緻な意匠が施された荘厳な空間となっています。

館内には他にも温泉蒸し風呂や露天風呂が併設された「東雲風呂」があり、「桃山風呂」と時間制で男女交代となります。

また、2023年に誕生した「梵」は、2種類のサウナと貸切風呂を備えたプライベートSPA。約50度の温泉スチームサウナと、サウナの本場フィンランド製のストーブを採用したロウリュサウナを満喫でき、リング型のシャワー付き水風呂と、貸切温泉も堪能できます。

客室は和洋室をはじめ、二間続きの和室など、5タイプ。歴史ある湯浴みと現代的なリラクゼーションをともに味わえる一軒です。
プロが注目!すごいポイント
登録有形文化財の大浴場「桃山風呂」は、安土桃山時代の伽藍建築をイメージした湯殿で、荘厳な神社仏閣にいるかのような雰囲気。大きな楕円の湯船の容積は24tもあり、とてつもなく豊富な自家源泉で満たされています。弱アルカリ性の塩化物・硫酸塩泉で、肌がしっとり潤う美肌の湯です。奥には昔ながらの温泉蒸し風呂もあります。内湯の外は驚きの庭園露天風呂、日本庭園全てが岩風呂の温泉という贅沢さです。
(温泉ビューティ研究家・石井宏子さん)
【静岡県伊豆市・伊豆修善寺温泉】伊豆修善寺温泉 新井旅館
文化財の湯殿で、美肌の湯を堪能できる

修善寺温泉の老舗「新井旅館」は、すべての湯船が源泉使用(夏場は一時加水する場合あり)。泉質はアルカリ性単純泉で、pH値8.5と高く、無色透明のやわらかな湯が肌を包み込みます。
特に象徴的なのが、1934(昭和9)年築・総檜造りの「天平大浴堂」です。国の登録有形文化財である格式高い湯殿からは、庭園の池と鯉を望む贅沢なひとときを過ごせます。

露天「木洩れ日の湯」では、木々の間から差し込む光や紅葉を楽しみながらの湯浴みが魅力。

さらに2023年にリニューアルした「あやめの湯」、同年誕生した露天「折節の湯 雪花」など、新旧の湯処が揃います。貸切風呂は予約制の「睡蓮」(45分1100円)と、空いていれば自由に使える無料の「翡翠」を用意。

客室は、数寄屋造りの趣ある和室が中心。庭園を望む部屋もあり、静かな時間が流れます。歴史ある建築美とともに、湯を楽しむ滞在が叶う一軒です。
プロが注目!すごいポイント
なんといっても名物の天平大浴堂は必湯です。仏教芸術が花開いた天平時代をイメージした総ひのき造りの建築が見事。立つと胸元近くまで深さがある「深湯」は、湯の力強さを一層感じられます。とろりと柔らかに寄り添うような感触の温泉で肌も心もストレスをリリース。ほかにも男女入れ替えで楽しめる大浴場や露天風呂、貸切風呂もあり、全て源泉掛け流しです。(温泉ビューティ研究家・石井宏子さん)
【静岡県伊豆市・湯ヶ島温泉】湯本館
川端康成も愛した、狩野川ほとりの秘湯

天城湯ヶ島温泉、狩野川のほとりに佇む「湯本館」。1872(明治5)年創業の老舗で、川端康成が代表作『伊豆の踊子』を執筆した宿として知られます。館内には当時の資料も展示されていますよ。

温泉は源泉掛け流し(加温・加水なし、放流式)。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉で、肌を磨く湯として知られます。渓流を望む露天風呂は、川のせせらぎが聞こえる、癒やしの空間です。「日本秘湯を守る会」に加盟する一軒でもあり、素朴で飾らない湯の魅力が息づいています。

客室は全6室の和室。落ち着いた空気の中、川の流れや山の気配を感じながら過ごせますよ。
プロが注目!すごいポイント
川端康成の『伊豆の踊子』ゆかりの宿で、懐かしい伊豆を感じられる和の宿です。清流・狩野川のほとりにある露天風呂は、新緑や紅葉、涼しい川風を感じながら入浴できる開放的な岩風呂。中伊豆は硫酸塩泉の名湯が多いのですが、湯本館の温泉も、ガラスのようにきらめく透明感があり、お肌を磨いてくれるようなすばらしい湯質です。(温泉ライター・西村理恵さん)
まとめ
次の温泉旅は、ただ泊まるのではなく、湯に浸かる時間そのものを目的に。心と体を解きほぐす、とっておきの一湯を見つけてみてください。
※この記事は2026年4月24日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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※掲載の価格は全て税込価格です。
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山田陽子
旅とグルメをこよなく愛し、年間500軒以上は食べ歩く。九州の旅行、グルメ、温泉について主に執筆。 共著に「ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく福岡・九州」がある。
















