栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」の小池智子さんに、身近で見られる秋から冬の花の名前や特徴を教えてもらいました。
「フラワーパークのある北関東では、最低気温が氷点下となる日も多い寒い季節ですが、その中でも元気に活動を続けている植物たち。そのパワーがすごいと思います」と小池さんは話します。
肩をすくめる寒い季節です。もし、通勤、通学、散歩の途中に、町の中で頑張って咲く花たちに出会ったら、少しだけ気にしてみてくださいね。
パンジー、ビオラ

◆特徴: スミレに似た形の花。花色は黄色やオレンジ、紫、白、ピンクなどがあります。
◆見頃・時期:10月頃~4月頃
どちらもスミレ科の植物です。株がドーム状に育ち、その表面を覆うようにみっしりと花が咲きます。
「昔は、花径の大きさによって大輪のものはパンジー、小輪のものはビオラと言われていましたが、今は改良品種も多くなり、はっきりした区分を設けにくいそうです。」と小池さんは説明します。
花壇や鉢植えで目にすることが多く、「寒くなってくるこれからが、株が詰まってよく育つ季節。切り戻しをすれば5月頃まで楽しめますよ」。
フユシラズ

◆特徴: オレンジ色の小ぶりな花が初冬から春先まで咲く。花径は1~2cmほど。
◆見頃・時期:11~4月頃
フユシラズは、キンセンカ等を含む「カレンデュラ」の仲間で、別名「寒咲カレンデュラ」とも言います。草丈は20~50cmほど。旺盛に育ち、こぼれ種でも増えるため、場所によっては雑草化しているところもあるかもしれません。
フラワーパーク園内では冬場に寄せ植えの素材として使うことがあるそう。「朝晩の園内は氷点下になることもありますが、寒さに負けず元気に咲いてくれますよ。」(小池さん)
ウインターコスモス

◆特徴: コスモスに似た花径3cmほどの花。やや肉厚な花びら。白や黄色の花色。
◆見頃・時期:10~12月(霜が降りる頃まで)
ウインターコスモスは、キク科センダングサ属(ビデンス属)の植物です。和名は「キクザキセンダングサ」といいます。
花だけ見ると、コスモスに似ていますが、ウインターコスモスの方が少し小さめで花径3cmほど。やや肉厚な花びらと、コスモスよりもしっかりした茎を持ちます。「花壇植えで目にすることが多いですよ。」(小池さん)
ハボタン(リーフ鑑賞)

◆特徴:白や赤、ピンク色のキャベツのような葉
◆見頃・時期:11月~2月頃
ハボタンはアブラナ科の植物です。葉の姿が牡丹の花のようであることから、「ハボタン」という名前がついています。
冬花壇やお正月に飾る門松の足元に植えられているのが「ハボタン」。キャベツのような葉をしていて、白やピンクなどのカラーリーフを楽しみます。葉の形も、丸葉や切れ込みが入ったクジャク葉、ちりめん葉等さまざま。種類が多く、10月頃から販売されることが多いです。
冬花壇や寄せ植えなどで楽しめます。「花壇でハボタンだけ集めて植えてもとても可愛らしくなりますよ!」。
シロタエギク(リーフ鑑賞)

◆特徴:表面には細かい白い繊毛があるシルバーの葉。
◆見頃・時期:10~3、4月
キク科セネシオ属の植物。「シルバーの葉が美しく、花壇一面に植えると白銀の世界をイメージさせてくれますよ」と小池さんは話します。
春になると草丈も30~40cmまで伸び、6~7月には黄色い花が咲きます。「かわいい小花ですが目立たない地味な花なので、カラーリーフとしての鑑賞をおススメします。」(小池さん)
クリスマスローズ


◆特徴: 寒さに強く育てやすい植物。草丈は20~50、60cm。
◆見頃・時期:12月後半~4月頃
クリスマスローズは、冬に花を咲かせるキンポウゲ科の植物です。花びらに見えるところは「がく」と呼ばれる部分で、長期間楽しめます。
もともと「ヘレボルス」という学名の植物で、花形や花色は多様。日本ではヘレボルス属全般をクリスマスローズと呼びます。本来のクリスマスローズはクリスマスの頃に開花する、「ヘレボルス・ニゲル」と言われています。
夏場には落葉樹の下にひっそり生えていて、「葉が地面からにょきにょきと生えている姿がかわいいです」。
フクジュソウ

◆特徴: 花径4cmほどの黄色い花。地面からつぼみの部分だけが出て咲く。
◆見頃・時期:1月下旬~2月頃
漢字で「福寿草」と書き、お正月の縁起物の鉢花としても出回ります。春植物として全国的に親しまれている花です。
早咲きの梅の花が咲くころ、地面からポッとつぼみだけが出たような状態で、黄色い花が咲きます。茎は徐々に伸びていき、花が終わりかけたころに、ニンジンのような葉が出てきます。
「周りがまだ冬枯れの景色の中に黄色い花が咲くので、とてもよく目立ちますよ」(小池さん)。
サザンカ

◆特徴: 花びらの枚数が10枚程度。葉はギザギザで質感が少し固め。花色は白、ピンク、紅。
◆見頃・時期:11~2月頃
サザンカは垣根に使われることも多く、剪定をして背丈が1~2mほどに仕立てられたものを目にすることが多いかもしれません。大きく育つと、10m近くの大木になる場合もあるようです。
サザンカとツバキは花がとてもよく似ています。このあとご紹介する寒椿も同じ、ツバキ科の仲間。一般的な見分け方のポイントは、「花の散り方」。「ツバキは花の塊がポトッと落ちるのに対し、サザンカと寒椿は花びらがばらけて散ります」。
寒椿


◆特徴: 赤やピンク、白などの八重咲きの花。花びらの枚数が14枚以上。
◆見頃・時期:12月~2月
ツバキの園芸品種といわれます。ツバキに比べてやや小ぶりな花を咲かせます。ツバキは2~4月、より春に近い頃に見頃になりますが、寒椿は寒の頃(12月~2月)に咲きます。
小池さんは「サザンカより少し遅れて咲きます。サザンカと寒椿は花も似ているので、見分けはなかなか難しいです。樹形や立ち姿で見分けがつくらしいですが、私には困難です…」と話します。
寒紅梅

◆特徴:八重でボリュームのある直径2cm程度の花。色は濃いピンク、赤。
◆見頃・時期:12月後半~2月頃
梅の仲間で、八重咲の極早咲きの系統が「寒紅梅」です。普通の梅が1~3月頃に見頃を迎えるのに対し、1、2か月ほど早く咲きます。
「真冬の景色の中で、きれいな花を咲かせてくれるので、すごく目立ちます」と小池さん。「強い風が吹き荒れる中でも咲いてくれるので、強いなぁと思います」。
日本水仙

◆特徴: 白い花、中心部分が黄色。
◆見頃・時期:12月~1月頃
スイセンも品種が多くありますが、日本水仙は丈が大きい方です。球根植物で植えっぱなしでも大きく育ちます。園内では30㎝ほどの大きさになっています。植物体は有毒なので、ニラなどと間違って食べることがないようにご注意を。
「スイセンの甘い香りがしますが、個人的に春に咲くスイセンよりはあっさりした香りだと思います」(小池さん)。伊豆下田の爪木崎、兵庫県淡路市、福井県の越前海岸などが群生地として知られます。「寒い中咲いてくれるので、見ていると元気になりますね」。
ロウバイ


◆特徴: 蝋(ろう)細工のような梅に似ている黄色い花
◆見頃・時期:12月~2月頃
「ロウバイという名ですが、梅ではないです」と小池さんは話します。「蝋細工のようなツヤツヤとした花の質感は、特別な存在ですね」。
ロウバイはロウバイ科ロウバイ属の植物。開花期と、実がなっている時期以外はあまり目立たないとのこと。ロウバイの花は内側の花弁が茶褐色ですが、一般に出回っているのは、すべての花弁が黄色のソシンロウバイなどの園芸品種だそうです。
庭木や公園などで植栽されていることが多いかもしれません。「とても甘い香りがするので、冬場はその存在を、きっと香りだけで気づかせてくれますよ」。
ギョリュウバイ

◆特徴: 梅の花に似た花とツンツンした葉。花色はピンクや白。
◆見頃・時期:11~12月、2~5月頃
「御柳(ギョリュウ)」という中国原産の木に樹形が似て、梅に似た花を咲かせることから「ギョリュウバイ」というそうです。ニュージーランドやオーストラリア原産の低木で、花の蜜は「マヌカハニー」と呼ばれています。
園芸店では草丈20~50cmくらいのものが販売されているのを目にしますが、「寄せ植えなどでは和風のものにも、洋風のものにも合わせやすい植物です」(小池さん)。
エリカ、カルーナ


◆特徴: ピンクや赤、白色などの花
◆見頃・時期:種類により様々
どちらもツツジ科の植物で、それぞれエリカ属、カルーナ属に分かれています。
日本で、エリカとカルーナは、あまり区別されず「エリカ」と総称されることがあります。クッション状の樹姿や、針のように細い葉、枝に密に咲く小さい花の様子が「よく似ているためでしょうか…」と小池さんは話します。
エリカの花は、小さいタイプの「淡雪エリカ」のようなものから、中間的な「ジャノメエリカ」、大ぶりな「クリスマスデライト」のようなものがあり、さまざまな色と形を楽しめます。
カルーナは、葉色も豊富で、赤葉や銀葉など様々な品種があり楽しめます。「どちらも寄せ植えや花壇のアクセントの素材として楽しんで」と小池さん。
千両、万両


◆特徴:赤い実が葉の上につくのが千両、下に吊り下がるようにつくのが万両。
◆見頃・時期:11月中旬~1月
その名から、商売繁盛の縁起物として使われることが多い千両や万両。どちらも赤い果実を観賞するために、同じ仲間と思われがちですが、マンリョウはサクラソウ科、センリョウはセンリョウ科の植物です。
花は夏頃に咲きますが、実が赤くなるのが11月中旬から1月頃。その赤い実を鳥が食べて、あちこちに散布されているので、植えた覚えがない思わぬ場所でも目にする機会が多いかもしれません。
千両は、万両に比べると薄手でギザギザが目立つ葉。株の天辺、葉の上に赤い実がなります。一方、万両は、濃緑色の肉厚な葉で、細かな丸っぽいギザギザがあります。その葉の下側に吊り下がるように赤い実がなります。
千両の方が寒さに弱く、「園内で地植えしたときも、葉が茶色くなってしまいました。軒下などで寒さよけをしてあげるとよいでしょう」と小池さんは話します。
■取材協力/「あしかがフラワーパーク」
あしかがフラワーパークでは、2020年10月17日~2021年2月7日、東日本最大級500万球以上のイルミネーション「光の花の庭」を開催中です。



2017年に「日本三大イルミネーション」に選ばれ、夜景鑑賞士が選ぶイルミネーションランキングでは4年連続で全国1位を受賞する圧巻のイルミネーションが楽しめます。
「現在、秋の花と光の共演が楽しめます。これからクリスマス、新年とテーマを変えて演出されますので、花とイルミネーションを楽しんでください!」(小池さん)。
まとめ
これからの寒い季節に、身近で見られる花15種類の名前を、あしかがフラワーパークの小池さんに教えてもらいました。
写真撮影のポイントについて、「冬は、まわりが落葉する時期なので、その花だけが際立って写りますよ。ほかのものに影響されず、その花そのものの魅力を伝えるにはいい季節だと思います」と小池さんは話してくれました。
新年が明けると春に向けて芽吹く季節がやってきます。寒さに耐え、元気に生きている花たちのパワーを、身近に感じてくださいね!
※この記事は2020年10月30日時点での情報です。
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