これからの寒い季節に出会える野鳥のことを、公益財団法人日本野鳥の会会長の上田恵介さんに教えてもらいました!
「冬は葉が落ちて、鳥の姿を観察しやすい季節ですよ」と上田さんは言います。「ただ、冬は鳥があまり鳴かないので、鳴き声はなかなか聞きにくい。林や公園などを静かに歩き、かすかに鳴く小さな声に耳を傾けてみてくださいね」。
ほんのちょっと、興味と関心をもって外の景色を眺めてみてください! 何気なく過ごしていると目に入らないけれど、すぐそこにいるたくさんの鳥たちから、元気をもらえるかもしれませんよ♪
※この記事は2020年10月30日時点での情報です。
はじめに
◆注意点◆
鳥を探すのに夢中になりすぎて私有地に入ったり、民家やマンションの方に双眼鏡を向けたりするとトラブルの元になります。基本的なマナーを守って、野鳥観察を楽しむようにしましょう。
◆よく見る「ものさし鳥」と比べてみることから始めよう◆
野鳥を見分けるとき、身近でよく見る鳥と比べて大きさの見当をつけるのがポイントです。「ものさし鳥」は、スズメ(全長14cmくらい)、ムクドリ(同24cmくらい)、キジバト(同33cmくらい)、ハシブトガラス(同56.5cmくらい)。
ツグミ

◆鳥の特徴:スズメに似た茶色で腹のうろこ模様が目立つ。スズメよりひと回り大きく、ムクドリと同じくらいの大きさ。 全長24cm。
◆見られる場所:公園の木の枝にとまっていたり、住宅地でも見られたりする。
11月ごろから、割と目にする鳥です。北海道から九州まで全国で、公園や住宅地の開けた芝生など地上でよく見られます。
上田さんは、「ツグミとよく似た鳥に、ムクドリやヒヨドリがいます。どれも同じくらいの大きさですが、ムクドリは地面にいて灰色っぽいのに対して、ツグミは茶色。ヒヨドリは灰色で、木の上にいて、ピィーピィーとよく鳴きますが、ツグミはうるさくないですよ。ヒヨドリは尾羽が長いのが特徴です。見分けてみてくださいね」。
シロハラ

◆鳥の特徴:グレーがかった茶色で、腹の部分が白い。ムクドリと同じくらいの大きさ。全長24cm。
◆見られる場所:暗い林や、公園の中でも茂みがある暗い場所
ツグミの仲間で、グレーがかった茶色い鳥です。警戒心が強く、「じつはいっぱいいるけど、木の茂みが好きなので、滅多に人前に出てこない」(上田さん)。里山の森や公園の中の細い道に出てくるが、人が近づくとすぐに逃げてしまうそう。なので、遠くから双眼鏡で観察するのがおススメといいます。
飛んで逃げるときに、キョキョキョとけたたましく鳴く鳥がいたら、それがシロハラだそう。「茂みに飛び込むときに見える後ろ姿をチェックしてみて。尾羽の先の両端に白い斑点がありますよ。シーッと鋭く一声鳴くのも特徴」と上田さん。
アオジ

◆鳥の特徴:頭から背は緑灰色。胸から腹が黄色。スズメくらいの大きさ。全長16cm。
◆見られる場所:公園のしげみや低い木立がある場所
オスはきれいな黄色っぽい色彩ですが、メスは全体に茶色です。上田さんいわく、「スズメとよく間違えるが、スズメよりきれいな色をしているのがアオジですよ」。3~4羽で小さな群れをつくっていることが多いようです。
夏のさえずりは標高の高いところなどで聞くことができますが、冬は低地に下りてきて公園などでも「チッチッ」とかすかな声で鳴いています。「控えめな声ですが、耳を傾けてみて」と上田さん。
ジョウビタキ

◆鳥の特徴:翼に白い斑。オスは胸から腹がだいだい色。スズメと同じくらいの大きさ。全長14cm。
◆見られる場所:公園などの生垣やくい等の1~1.5m程度の低いところに、1羽でいる。
オレンジ色が美しいジョウビタキのオス。一方、メスはちょっと地味な色。この雌雄差は、「結婚するときにきれいなオスがモテるという進化をしてきたため」と上田さんは説明します。
「ジョウビタキは、鳴く時の姿勢が可愛らしいですよ」と上田さん。鳴きながらぴょこんとおじぎして、尾をぷるぷると震わせるのだそう。縄張り性が強いため、1羽でいることが多いという。
冬、雪のない地方の公園などで比較的よく見られ、「人懐こい性格なので、あなたの近くにいるかもしれませんよ」とのこと。「ヒッヒッ」と鳴く声は響くので、声で気づくことが多いかもしれません。
ルリビタキ

◆鳥の特徴:瑠璃色。わき腹が黄色っぽい。スズメと同じくらいの大きさ。全長14cm。
◆見られる場所:冬になると低い山などで見られる
夏の間は亜高山帯で繁殖し、冬になると東京の高尾山のような低い山まで下りてきます。
美しい青い個体はオス。メスは頭から背にかけて薄い茶色で、尾の先だけ瑠璃色です。
オスは2歳くらいにならないと、青くならないそう。自然界では青いオスは数が少なく、美しい青い個体はめったに見られないため、「会えたらラッキー。バードウォッチャーも喜びます」と上田さん。
ジョウビタキに似た声で、「ヒッヒッ」と鳴くそう。「街中でヒッヒッと聞こえたらジョウビタキ、山でヒッヒッと聞こえたらルリビタキと思っていいですよ」。
ベニマシコ

◆鳥の特徴:長めの尾、翼に白い帯。オスは茶色に赤味が入った色。スズメと同じくらいの大きさ。全長15cm。
◆見られる場所:林や周辺のやぶを好む。
オスは夏の繁殖期に赤味が強くなります。ベニマシコは、「しょっちゅうみられる鳥ではない」そうですが、「荒川や多摩川の河川敷で木やススキが生える茂みがある場所や、里山で茂みがある場所で見られます。出会えたら嬉しい鳥ですね」。
鳴き声は、「フィッフィッ」と口ごもるような、柔らかくソフトな声。「耳を澄まして聞いてもらえたら。ネットで鳴き声を聞いて聞き分ける“修業”が必要かもしれませんね」。
シメ

◆鳥の特徴:太いくちばしと短い尾。スズメよりひと回り大きい。全長18cm。
◆見られる場所:公園など
シメは、「ずんぐり体型のいかつい感じ。鳥のお相撲さんのようです」と上田さんは表現します。
特徴である太いくちばしを使って、硬い木の実を割って食べるので、パチパチと音がしたらシメがいるかもしれません。「公園などで高い木の上を見てみて」と上田さん。下に人が通っても逃げないそうです。
木から木へ飛ぶときに「シーッ」と一声鳴いて、波打って飛ぶのも特徴だそうです。飛んだ姿もよく観察してみるといいかもしれません。
マガモ

◆鳥の特徴:オスは頭部が光沢のある緑色。見る角度によって藍色光沢にも見える。メスは茶色。くちばし全体が淡い黄色。ハシブトガラスよりひと回り大きい。全長59cm。
◆見られる場所:湖や沼、河川、海岸など。
主に冬、日本各地の水辺で見られます。カルガモに次いでよく見られる水鳥です。
マガモは、アヒルの先祖だそう。低い声でグァーとかクワッと鳴きます。
オスは頭部が光沢のある美しい緑色ですが、メスは全体的に茶色で、カルガモ(雄雌とも茶色)との見分けが難しいといいます。マガモは冬が結婚シーズンなので、つがいで仲良く泳いでいることが多いそうです。
キンクロハジロ

◆鳥の特徴:オスは白黒のツートーンカラー。黄色い目。ハシブトガラスよりひと回り小さい。全長43.5cm。
◆見られる場所:池や沼、波の静かな入り江など
やや小型のカモ類です。
オスは白黒のツートーンカラーで、冠羽(かんう)が後頭部に垂れているのが特徴です。メスは体が茶色っぽいです。目が金色に見えるので、鳥名にも「キン」とついているそう。潜るのが上手で、池や海辺で貝や小エビなどをとって食べています。
カモ類は全国的に見やすく、「1日中、寝たいときに寝て、食べたいときに食べる。時間に自由なイメージ。カモたちの集まる池にいつ行っても複数種見ることができますよ」と上田さんは話します。
ユリカモメ

◆鳥の特徴:冬羽は全体的に白く、くちばしと足が赤い。ハトよりひと回り大きい。全長41cm。
◆見られる場所:海岸のほか、河川や湖沼など
小型のカモメ。シベリアで繁殖して、9~10月ごろには日本に南下。5月ごろまで、東京湾などをはじめ、日本全国の海辺や河川で観察できます。
内陸まで川を上がってくるのが特徴。夜は海の上で集団で眠っていて、朝になると川をさかのぼってくるといいます。「ウミネコなどは海でしか見られないですが、ユリカモメは内陸の水辺でも見られますよ」と上田さん。
マガン

◆鳥の特徴:首が長くて、くちばしと足が桃橙色。胸は黒く、ずんぐりとした体形。全長72cm。
◆見られる場所:大きな湖沼に群れで飛来する
かつては日本各地に渡ってきていましたが、現在は宮城県・伊豆沼や石川県・大聖寺など、大規模な越冬地は限られています。数千羽単位で飛来。農耕地で落ち穂などを食べています。
「グヮングヮン」という鳴き声から名前が付いたそう。飛んでいるときによく鳴きます。「警戒心が強いので、望遠鏡で遠くから観察するのがよいです」と上田さん。
タシギ

◆鳥の特徴:10cmほどあるまっすぐ長いくちばし。ハトよりひと回り小さい。 全長26cm。
◆見られる場所:秋冬の水田など
稲の刈り取り後の田んぼに潜んでいます。長いまっすぐなくちばしを、土の中に突っ込んで虫やミミズなどを食べます。保護色で、枯草に紛れてしまうので見つけにくいそうです。
「冬の田んぼのあぜ道を歩いていていると、突然、『ジェッ』としわがれ声で鳴いて飛び立っていく鳥がいたら、タシギです」と上田さん。「右に左にカクカクと揺れて上昇していく。その飛び方も特徴的ですよ」。
モズ

◆鳥の特徴:大きな頭にタカのようなくちばし、とまっている時に長い尾を回すように振る。ムクドリよりひと回り小さい。全長20cm。
◆見られる場所:農耕地、公園などでも見られる
モズは漢字で「百舌鳥」と書きます。ヒバリやツバメなど、他の鳥の声のまねをするのが上手なところから由来するといいます。繁殖期の春先3月頃、オスだけが小さく声真似をして、 “ぐぜり“する習慣を持つそうです。「なぜかはわからないが、メスに対する求愛に関係するのではないかと考えられています」と上田さん。
10~11月頃にかけては、【モズの高鳴き】の季節。冬の縄張りをつくるため、「キィーキィー」と甲高く鳴いているのが聞けます。
モズは木の上から見つけた虫などの獲物を、舞い降りてとるので、比較的開けた場所にいます。
【モズのはやにえ】という食べ物を貯蔵する習性もあります。縄張りでするので、もし庭の枝にカマキリやカエルなどが刺さっていたら、近くにモズがいるかもしれません。
キクイタダキ

◆鳥の特徴:雄雌ともオリーブ色。頭頂部は黄色い。スズメの半分くらいの大きさ。全長10cm。
◆見られる場所:冬になると低い山におりてくる。針葉樹の上部を好む。
日本最小の鳥です。夏は亜高山帯(2000m前後の山)で過ごし、冬になると東京・高尾山のような低い山に下りてきます。しかし、高い針葉樹の葉の茂みを好むので「姿を見るのはなかなか難しいです」と上田さん。
頭頂部の黄色が、菊の花をいただいているように見えることから、鳥名がついているそうですが、「その頭頂部は見ようと思ってもなかなか見られません」。
「チリリリ」と小さな細い声で鳴きます。「近くにいる気配を感じてくださいね」。
オオハクチョウ

◆鳥の特徴:くちばしの黄色が大きめ。全長140cm。
◆見られる場所:北海道や東北の広い湖や河川など
シベリアから群れで飛来します。群れは複数の家族(親と幼鳥数羽)で構成されています。上田さんは「オオハクチョウは一冬中、家族でいます。幼鳥は真っ白ではなく灰色っぽいので、よく見てみてくださいね」。
新潟県の瓢湖や宮城県の伊豆沼など、広い湖面と落ち穂を拾える田んぼがある場所で観察できます。越冬地では11月ごろから、北へ帰る2月初旬まで見られるそう。「オオハクチョウがいる場所は観光地になっていて、各地のパンフレットに飛来時期が案内されています。飛来する場所に行けば、簡単に見られますよ」。
取材協力:公益財団法人 日本野鳥の会
まとめ
日本野鳥の会の会長・上田恵介さんに、冬の野鳥を15種類ご紹介してもらいました!日本野鳥の会が主催する「探鳥会」は、予約制で人数制限をするなどの制約はあるといいますが、徐々に再開中だそうです。「野外観察なのでおススメできます。普段目にしない、知らなかった鳥の世界に触れられますよ。心の健康にもよいですよ」と上田さんは話します。
今回ご紹介してくれた鳥の中には、見られるとラッキーという珍しい野鳥などもありました。「冬、水鳥はよく見られ、観察しやすいですよ。三脚などを立てて望遠鏡で観察するのも楽しいです。また、町の中でも静かな公園に行って、耳を澄ます時間をもってみてください」と上田さんは話します。
いつもの公園でも、ほんのちょっとの興味と関心を持ってみると、違う景色が見えるかもしれませんね。季節が変わってもたくましく自然界で生きている野鳥たちの姿を見ると、私たち人間も元気をもらえそうな気がします!
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、各自治体により自粛要請等が行われている可能性があります。
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