昭和の時代からライブハウスや劇場が集まる街として知られ、様々な文化を育んできた街、下北沢。
令和の今も音楽や演劇などの文化を育て続けながら、新たなカルチャーが集まり、進化する街にもなっています。その新たなカルチャーのひとつが「カレー」なのです。
2012年にスタートし、毎年恒例となった下北沢カレーフェスティバルの参加店舗は100を優に超える程に広がり、毎年カレーフェスティバルの開催される時期には全国のカレー好きが集まり、賑わいを見せています。
そんなこともあってかいつしか下北沢はカレーの街としても知られるようになり、カレーを提供するお店も右肩上がりに増加中です。
新たなカルチャーの発信地としてその役割を担ってきた下北沢でカレーのお店が増え続けているということにも大きな意味があると感じています。
今回は下北沢にある多くのお店の中から、文化とカレーが融合したおすすめのお店をご紹介しましょう。
般°若

「般°若」と書いて「パンニャ」と読みます。タレント、俳優としても知られる松尾貴史さんがオーナーをつとめるお店なのですが、松尾さんはカレー好きとしても古くから有名。そんな松尾さんだからこそのこだわりが随所に感じられるお店です。
東北沢の小さなお店としてスタートし、現在の場所へ移転してからは広くなってより一層下北沢のカレー好きに愛されるようになりました。
看板メニューは“チキンカレー”。サラっとしたグレイビーにチキンの旨味が溶け込み、強すぎず弱すぎない絶妙なスパイス感。クオリティが高い美味しさです。
このチキンカレーはレトルトカレーも販売しており、それもレトルトとは思えないハイクオリティの美味しさに仕上がっているのですが、だからこそ是非お店のチキンカレーと食べ比べてみて欲しいんです。お店のチキンカレーを食べてみて、その後でレトルトを食べると、味への理解度が深まって、食べる楽しさをふくらませてくれます。
他にもイカスミ入りパン粉を使った真っ黒いカツカレーがあったり、羊肉のキーマや野菜カレーなど、どのカレーも美味しくて通い甲斐のあるお店です。
松尾さんがオーナーということもあってか、カレーマニアのみならず舞台人、役者、芸人さんも通うお店。カレーと文化が溶け込んでいるという意味でも、非常に下北沢らしいお店だと言えるでしょう。
カレーの店 八月

こちらのお店はカレー好きミュージシャンとして知られる曽我部恵一さん(サニーデイ・サービス)がオーナーのお店で、2020年の4月という、コロナ禍真っ只中にオープンしました。
新しいお店ですがカレーはどこか懐かしさを覚えるテイスト。僕のおすすめは“海老カレー”に“あいがけキーマ”を追加する形。
海老カレーはシャバっという以上にサラっとした仕上がり。食べてみれば元々がしっかりと旨味があるグレイビーに程良いスパイス感で、そこに海老出汁が追加されたような。
このサラサラスパイシーグレイビー、今どきのカレーにありそうでなかなかないタイプです。スパイスカレーという言葉が生まれる以前にあった、小麦粉を使わないスパイシーなカレーといった印象。
新しいお店でありながら、温故知新ならぬ「温新知故」と言えるような、何とも懐かしさを感じるんですね。
キーマはマスタードシードのプチっとはじける食感と香りが印象的であり、あくまでメインのカレーの引き立て役として機能するキーマです。混ぜても美味しくなりますよ。
同じ建物の3階には同系列のレコード店もあり、ここも音楽とカレーという二つの文化が見事に融合したお店です。
ADDA

下北沢駅周辺の再開発で生まれたボーナストラックという新エリア。飲食店や雑貨店、コワーキングスペース、シェアキッチンもあり、公園のような雰囲気でもある新しい形の小さな街です。
「この場所を訪れる人自身が、この場所のカルチャーを新たに作っていくひとりになるような、そんな仕掛けをたくさん用意しています。」とホームページにもあるように、様々なスタイルで使える楽しい場所と言えるでしょう。
そんなボーナストラックにできたADDA。日本一のカレー激戦区とも言える大阪の「ボタ」と「デッカオ」という人気店2店舗がコラボして出店したお店です。大阪と言えばいち早く文化とカレーの融合がなされ、今も進化発展している街。下北沢と似ています。
メニューは“チキンカレー”と、もう1種類を日替わりから選ぶ2種がけセット。チキンカレーにご飯、日替わりカレーはカトゥーリ(小皿)に入っていて、副菜も色々とつくのですが、その中でも茄子のモージュ(茄子のスパイス和え)が「デッカオ」の味なんですよ。茄子のモージュが大好きな僕ですが、「デッカオ」のモージュはそんな僕の中のモージュランキングでもかなり上位に入ってくる美味しさ。それが東京で食べられるというのはたまらなく嬉しいです!
カレーもスリランカカレー的でもありつつ大阪スパイスカレー的でもあるというバランス感。店主さんも「ボタ」「デッカオ」、どちらでも働いていた方なのでその腕も信頼のおけるものです。新しい街の新しいカレー。要チェックです。
オイシイカレー(通称)

下北沢は古着や雑貨のお店が多い街ですね、その下北でも人気のシニカルなうさぎがトレードマークの洋服や雑貨で知られるCUNEというブランドの運営会社がセレクトするカレー屋として、元CUNE下北沢の店内一角に2020年5月末にひっそりオープンしたお店があります。
こちら、色々と面白いんです。CUNEのあった場所の一階が不思議な空間になっていて、店内に入ると大きな木。その奥には自販機。左には「オイシイカレー」という看板と共にカウンターメインのお店があります。そのお店、店名は無いのですが看板の文字から通称オイシイカレーと呼ばれています。そしてこちらのカレー、本当にオイシイんですよ。
レギュラーメニューはシンプルに“チキン”と“ポーク”、“あいがけ”もあり、所謂スパイスカレーの範疇に入るカレーなのですが、付け合わせが個性的。紅しょうがチャトニ、きゅうりの漬物という組み合わせ。漬物と言いながら南インド料理のウールガイのような濃厚な漬物です。チャトニも南インド料理によく添えられますが紅しょうがを合わせるセンスが素晴らしいです。
そして本領発揮は限定メニュー。“塩豚清湯カレー”はウプカリというインド料理をベースに和の要素を加えたオリジナル。“和装チキンコルマ”も和出汁を使用して、やはり和の要素が上手にインドと融合しています。
わかりやすい美味しさのレギュラーメニューと、個性派の限定メニュー。お店の雰囲気も含め、是非とも一度は食べに行って欲しいと思います。
※こちらのお店は2021年4月に以下住所に移転しました。
犬拳堂(いぬけんどう)

下北沢がカレーの街に育ったきっかけである下北沢カレーフェスティバルの前身的イベント、下北沢カレー王座決定戦にも出場し、高評価を得た犬拳堂(いぬけんどう)。
実はこちらのお店のマスター、元キックボクサーということもあり、格闘技関係者が集まるお店としても知られています。カンフー映画が好きな人にとってはたまらないグッズなども店内にこっそりと飾られているのが下北的。
カレーはムエタイ的にタイカレーをベースにしたココナッツカレーなのですが、タイカレーともまた違う要素を含み、しっかりした酸味が特徴で爽やかに食べられるカレーです。お店の看板の言葉を借りるなら、「エスニックな食材からスープをとり、オリジナルブレンドしたスパイスを日本風にアレンジして作ったアジアンカリー。」というもの。これが一番わかりやすいかもしれません。
ミニカレーがあったり、ライスを豆腐に変えたりできるのも減量中の格闘技選手、あるいは健康を気にする方にも嬉しいポイントではないでしょうか。また、僕のようにカレー食べ歩きを趣味とする人にとっては、重くないカレーなのでカレーはしごにも嬉しいお店です。
重くないと言っても辛さを選べ、激辛にすればガツンとくるパンチ力で気持ち良くノックアウトされることでしょう。夜はお酒も飲めますし、何かと使い勝手の良いお店です。
Rojiura Curry SAMURAI.

下北沢はスープカレーの名店が集まる街としても知られていますが、それに加速がついたのは北海道でも人気の「SAMURAI.」が東京初進出の場所として下北沢を選んだことから始まったように思います。
個人的に東京に来る前から大好きだった「SAMURAI.」。スープカレーは野菜が命であり、北海道のスープカレーが美味しいのは野菜が美味しいからこそだと思っていて、北海道の人気店でも東京に出て来たお店の味はどうしてもクオリティが下がってしまうことが多いと感じています。
ですが、そのクオリティにほとんど差が無い状態で、しかもどのお店で食べてもちゃんと美味しいのが「SAMURAI.」の凄さだなと食べる度に思います。
カレーはとろみがあり、野菜が溶け込んで濃厚なタイプでスープカレーとしては異色の存在なのですが、その美味しさ、安定感、ブランディング、おしゃれさなど、様々な部分がしっかりしていてスープカレーチェーンの王者といっても過言では無いと思います。
僕のおすすめは“チキンと1日分の野菜20品目”という、1皿で1日に必要な野菜の摂れるメニュー。スープは4種類、辛さは1~10まで選べて、ライスの量も値段が違うので女性にも大人気。下北沢ではUberEatsも上位です。季節によって野菜が変わるのも必見!
肉も野菜もたっぷりとれるスープカレー。「SAMURAI.」はどこのお店で食べても美味しいのですが、下北エリアは「SAMURAI.」の姉妹店である、「点と線」(スパイスラーメン店)もあるので、スパイス好きの方は必見です。
東京都世田谷区北沢3-31-14
11時~15時30分(L.O. 15時)、17時30分~21時30分(L.O. 21時)
年末年始
「Rojiura Curry SAMURAI.」の詳細はこちら
トーキョースパイスカレー 赤と黒

通常はバーなどの飲食店の空き時間を間借りして、カレーのお店を開くという「間借りカレー」というスタイルのお店もかなり増えてきました。こちらのお店もそんな間借りカレー店のひとつ。ミュージックバーのランチタイム間借りというのがまた下北沢らしくて良いですね。
実はこちらのお店、日本のカレーの歴史を紐解いていくと避けては通れない老舗の名店「デリー」から派生した高田馬場「ボンベイ」の姉妹店なのです。
店名の赤と黒というのはカレーの色のこと。“赤”は薬膳テイストのボンベイカレー。“黒”は「デリー」の看板メニューでもある激辛のカシミールカレー。その二つをあいがけで食べる事ができるのも嬉しいです。
滋味深いスパイス感の赤はカルダモンシードなどのホールスパイスがしっかりと入っており、香り高い味わい。カシミールは激辛ですがその辛さに意味がしっかりとある激辛であり、辛いからこそ美味しいという辛美味の完成系のひとつと言えるでしょう。
そしてさらに、実は赤でも黒でもない“インドカレー”というカレーもあり、実は僕が一番頼むのはそれだったりします。テイクアウトやデリバリーにも力を入れているお店なので、下北沢界隈の方でなくてもその味を楽しめますよ。
Curry Spice Gelateria KALPASI

最後にご紹介するのは浅草の間借りカレー時代から大人気で、千歳船橋に独立してからは予約のなかなか取れないお店として多くのカレー好きを虜にしてきた名店「カルパシ」の下北沢店です。
下北沢のお店は予約無しで行ける気軽さが嬉しく、そしてスパイスを使ったジェラートも種類豊富というのがまた最高じゃないですか。このジェラートも凄いんですよ。意外性あるスパイスとの組み合わせがこれほどまでに美味しくなるのかと驚きます。
美味しいカレーの後に食べる美味しいスウィーツ程幸せになれるものを僕は他に知りません。つまり、こちらのお店に行けば幸せになれることが確実なのです。
メニューは日替わりというか随時入れ替わっていく形。豆のカレー、チキンカレー、ポークカレーの3種類が不定期に変わっていきます。どのカレーを食べても最高に美味しいのは流石「カルパシ」なのですが、下北沢店のシェフの腕の素晴らしさもあってこそ。
実は下北沢店のシェフはカレーマニアの間で大人気となりながら惜しまれつつ閉店した中目黒「リロンデル」と、銀座「グリーンカレーめぇ」のシェフだった方なのです。つまりは二人の天才シェフが手を組んだお店ということ。お二人のセンスの競演により、千歳船橋の本店とはまた違う魅力が生まれているのが素晴らしいです。
カレー、副菜、そしてジェラートと、最初から最後まで美味しいお店です。予約無しで行けるとは言え人気店ですから、行列は覚悟の上で行くのが良いでしょう。
東京都世田谷区北沢2-12-2 サウスウェーブ下北沢 1階
11時30分~20時
木曜日
「Curry Spice Gelateria KALPASI」の詳細はこちら
まとめ
他にも下北沢には美味しいカレーのお店、面白いカレーのお店がたくさんあります。カレー専門店ではないお店がカレーを出していて、それがまた美味しいのも下北沢の特徴と言えるでしょう。それを探す楽しさがあるのも下北沢の良さ。
まだ売れていないけどめちゃめちゃカッコ良いバンドを探すように、知名度は無いけど最高に面白い演劇をしている劇団を探すように、あるいは掘り出し物の古着を探すように、下北沢で美味しいカレーや面白いカレーを探してみてください。
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※この記事は2022年8月19日にじゃらん編集部が更新しました。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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カレーおじさん\(^o^)/
2006年から毎日カレーを食べ続けているカレー偏愛家。 年間平均カレー食数は1000を優に超えるという圧倒的経験を生かし、TVや雑誌などでカレー情報発信中。 カレーイベントやレトルトカレーのプロデュースも行う。 http://akinolee.tokyo