濁音が多く、独特の発音やイントネーションがある秋田弁。標準語と比べると少し変わった方言ですが、その独特さがかえって新鮮に聞こえ、「かわいい」「面白い」と評判です。
秋田弁の基本的な特徴と、定番の方言の意味や使い方を、例文を交えてわかりやすく解説します!
●秋田弁の特徴とは?
・濁音が多い
・イントネーションが独特
・母音の発音の区別があいまい
・短い表現が多い
●定番の秋田弁
・「めんけ」→「かわいい」
・「んだ」「んだから」→「そうだね」
・「なんも」→「どういたしまして」
・「がっこ」→「お漬物」
・「ね」「ねね」「ねねね」→「〇〇がない」
・「ばしこぐ」→「嘘をつく」
・「まんず」→「まず」「まあ」「どうぞ」
・「○○っこ」→「わらしっこ=子ども」、「お茶っこ=お茶」
・「いだまし」→「もったいない」「惜しい」
・「しったげ」→「とても」「すごく」
・「しゃっけ」→「冷たい」
・「へば」→「それでは」「それじゃあね」
・「ねまる」→「座る」
・「ごしゃぐ」→「怒る」
・「こえー」→「疲れた」
・「さい」→「しまった」
・「なげる」→「捨てる」
・「うるがす」→「浸す」
秋田弁の特徴とは?

秋田弁は北部方言、中央方言、南部方言の大きく3つに分けられます。
そこからさらに細分化し、鹿角方言、県北方言、中央方言、由利方言、県南方言の5つに分類されています。
江戸時代には、現在の秋田県の大部分は秋田藩が治めていましたが、鹿角周辺は盛岡を中心とした南部藩が治めていたため、鹿角方言は岩手弁の影響を受けています。
また、由利本荘市とその周辺は現在の山形県北部と関係が深かったため、由利方言は庄内弁の影響を受けているそう。
他県の人が聞いてもあまり区別がつきませんが、秋田県内の人が聞くと県内のどの地域の出身かわかるそうです。
言葉や訛りの多少の地域差はあっても共通した数々の特徴があるので、秋田弁の基本的な4つの特徴を紹介します。
濁音が多い
濁音は東北方言の特徴ともいえますが、秋田弁も「かきくけこ」「たちつてと」は「がぎぐげご」「だぢづでど」と濁音で発音します。
例えば「お父さん」「お母さん」は「おど」「おが」と言います。
しかし、全てのか行とた行が濁音になるわけではなく、いくつかの法則があります。
単語の初めの1文字や促音(小さい「つ」)や「ん」のあとは濁りません。
「かかと」は「かがと」と2番目の「か」だけが濁り、「おっかない」「なんともない」など「っ」と「ん」のあとの「か」と「と」は濁らずそのまま発音します。
イントネーションが独特
発音の高低や抑揚が独特なため、訛りがきつく感じます。
3文字の言葉の場合、2つめの音にアクセントを置いて高音で発音する言葉が多いといわれています。
知っている言葉や単語でも、標準語とは異なるイントネーションやアクセントで話されると、瞬時に判断できないことがあるので、秋田弁が難しいと感じてしまう理由のひとつでもあります。
母音の発音の区別があいまい
標準語でははっきり区別されている「い」と「え」、「し」と「す」、「ち」と「つ」、「じ・ぢ」と「ず・づ」の母音の発音が区別しにくく、同じように聞こえます。
例えば「すし」は「すす」、「いき」は「えき」となります。
発音の区別がつきにくいのは、標準語と比べて口の開きが狭い傾向にあるからだそうです。
短い表現が多い
単語や動詞など1~3文字の短い言葉が多いのも特徴です。
「ける」は「あげる」、「けれ」は「ちょうだい」、「け」は「食べな」、「く」は「食べる」、など、1文字でも会話が成り立ってしまうのが秋田弁の面白さです。
一説によると、雪が多く冬が厳しい東北地方では寒さで唇がこわばるため、口をあまり開けずに発音し、なおかつ短い言葉でコミュニケーションを取れるように、このような独特の発音、単語、イントネーションになったといわれています。
定番の秋田弁
「めんけ」→「かわいい」
「かわいい」「かわいらしい」という意味で、「めんこい」とも言います。「かわいがる」は「めんけがる」。
東北地方の古語「めぐし」の変化形とされ、「めんこい」は秋田以外の地方でも使われているので、馴染みやすい言葉ですね。使い方は「なんとめんけー犬っこだぁー」など。
「んだ」「んだから」→「そうだね」
「んだ」や「んだから」は「そうだね」という相づちや肯定の意味で、日常的に使われています。
活用形も多く、「んでね」は「そうじゃない、違う」と否定の意味になり、「んだども」は「けれども」、「んだって」は「そんなこと言っても」、「んだんでね?」は「そう思わない?」、など、意味合いも様々。秋田弁の会話ではでたくさんの「んだ」が活躍します!
「なんも」→「どういたしまして」
「いえいえ」「どういたしまして」などとして使います。北部では「なんもだす」とも言うそう。「大丈夫ですよ」という意味も含んだ、柔らかく、思いやりのある優しい印象の言葉です。
使い方は「なんもなんも、気にさねでけれ(いえいえ、気にしないでください)」など。
「がっこ」→「お漬物」
お漬物のことで、京言葉の「雅香」が転じて「がっこ」となったという説があるそうです。
たくあんを燻製にした「いぶりがっこ」は酒の肴としても有名ですが、そのほかにも「ナタ漬けがっこ」やお茶と一緒に食べる「お茶がっこ」などがあります。
秋に収穫した野菜を漬け込み翌年の春までの保存食としていたので、たくさんの種類の美味しい「がっこ」が存在します。
「ね」「ねね」「ねねね」→「〇〇がない」
短い言葉や表現が多い秋田弁ですが、なかでも「ね」の使い方には注目です。
「ね」は、1文字だけだと「〇〇が無い」と言う意味で使用しますが、なんと「ね」の連続で会話ができてしまいます!
「ねね」と2つ続くと「〇〇が無いじゃん」という意味と「寝ない」の意味を表します。「ねねね」と3つ続くと「寝ないじゃん」「寝なさい」という意味に変わってきます。
例文1「ペン持ってる?」 「ね(持ってないよ)」
例文2「ペンはそこにあるよ」 「ねね(無いじゃん)」
という使い方。
さらに
例文3「ねねね(もう寝なさい)」「ねね(まだ寝ないよ)」
と会話が成立してしまうのです。
文字にするとわけがわかりませんが、実際にはイントネーションの違いで使い分けているそうです。
「ね」を自在に操ることができれば、秋田弁上級者です!
「ばしこぐ」→「嘘をつく」
嘘のことを「ばし」、嘘つきのことを「ばしこぎ」と言います。「嘘ばし(嘘ばっかり)」という秋田弁が省略されて「ばし」と言うようになったという説があります。
「嘘ばっかりついて」を秋田弁にすると「ばしばしこいで」になるそう。よく使われるのは「ばしこくでねぇ(嘘つくなよ)」「ばしこぎ!(嘘つき!)」など。
「まんず」→「まず」「まあ」「どうぞ」
秋田弁の会話ではよく使われる言葉。「まあ」「本当に」などといった、軽い感嘆の意を表す言葉ですが、限定的な意味だけでなく、シチュエーションでニュアンスも異なるようです。
嬉しい時には「まんずまんずまんずまんず」と繰り返し、喜びを表現することも。主な使い方は「まんずやってみれ!(まずはやってごらん!)」「まんず秋田さ来てたんせ(どうぞ、秋田に来てください)」など。
「○○っこ」→「わらしっこ=子ども」、「お茶っこ=お茶」
身近なものや自分が所有するものに対して語尾に「っこ」がつきます。基本は「名詞+っこ」。大きなものに対してはあまり使わず、小さなものに愛着や親近感を込めて使われています。
使い方は、「お茶っこ」「雪っこ」「飴っこ」「わらしっこ(こども)」など。
「いだまし」→「もったいない」「惜しい」
物や機会の損失を惜しむ時に使いますが、食べ物を残す、まだ使えるものを捨てる時に多く使用するそう。「痛ましい」という言葉を語源とするらしく、「かわいそう」というニュアンスで使用することもある。
使い方は、「いだましごどした(惜しいことをした)」「捨てるにはいだましい(捨てにはもったいない)」など。
「しったげ」→「とても」「すごく」
良い意味でも悪い意味でも「すごい」ときに使う方言。「死ぬほど、死ぬだけ」を語源としているので、「しんたげ」という言い方をする場合もあります。可愛い!と評判の秋田弁です。
使い方は「しったげうんめぇなぁ~(すごい美味しい)」「しったげ、好きだや(すっごく好き)」など。
「しゃっけ」→「冷たい」
「冷やっこい」が変化した方言で、「ひゃっけぇ」と発音することもあります。とっても冷たいときは「しゃっけー!」「しゃっこい!」となります。
使い方は「水がしゃっこい(水が冷たい)」「しゃっけどもうめな(冷たいけどおいしいね)」など
「へば」→「それでは」「それじゃあね」
さようならを意味する言葉で、「せば」「へばな」と言われることもあります。「へばな(それじゃあね)」、「へばまんず(それじゃあ、またね)」などと、親しい間柄のお別れの挨拶として、日常的に使われている秋田弁です。
目上の方には言わないカジュアルな挨拶なので、使うときは注意しましょう。
「ねまる」→「座る」
松尾芭蕉の俳句にも使われている言葉で、方言というよりも古い時代の名残の言葉のようです。座るだけでなく、くつろいだ状態のことを言い、楽な姿勢や横になって休憩する時にも使います。
「ここさねまれ」は、「ここに座りなさい」「ここに横になりなさい」「ここで休憩しなさい」などと様々な意味を持ちます。
「ごしゃぐ」→「怒る」
叱る、どなる、ひどく叱るなど、少し強い意味で「怒る」時に使います。「ごしゃぐ」は「怒る」、「ごしゃいだ」は「怒った」、「ごしゃがれだ」は「怒られた」。また、腹が立つことは「ごしゃげる」という言い方もします。
使い方は「しったげごしゃがれだ(すごく怒られた)」「ごしゃぐな(怒らないで)」など。
「こえー」→「疲れた」
「怖い」と勘違いされがちですが、「疲れた」という意味の秋田弁。軽い疲れの時は「こえ」、とても疲れている時は「こえー」となります。疲れたので〇〇だ、とつなげる時は「こえくて」や「こえして」と変化します。
使い方は「しったげこえー( とっても疲れた)」「こえくてダメだ(疲れてもうダメだ)」「こえしてなもかもね(疲れてどうにもならない)」となります。
「さい」→「しまった」
「しまった」だけでなく、失敗した時の「あっ!」、驚いた時の「あれ!」などとして、「しまった、やっちゃった、まずい、ちくしょう」という気持ちの場面で使われます。地域によっては、「さいさい」と重ねたり、「さささささ」とさの一文字を繰り返したり、「さっさ」と表現します。
使い方は「さい! 忘れた(しまった! 忘れた)」「あ、さいさい!(あ、しまった!)」
「なげる」→「捨てる」
東北地方から北海道にかけて広く使われている定番の方言。秋田や東北出身の方に「それなげておいて」と言われて戸惑う、ということが関東地方で多々あるそう。
「それなげておいて」は「それ捨てておいて」の意味。「なげる」は「投げる」から来ています。
「うるがす」→「浸す」
「潤わせる」から来ている方言で、「うる」は水に濡れているさま、「うるがす」で「濡れた状態にする」ということ。なので「水に浸す」「水に浸して十分に水分を含ませる」という意味で使われます。
使い方は「米をうるがす(米を水に浸す)」「少しうるがしておげ(少しのあいだ水に浸しておいて」など。
※この記事は2024年9月13日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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※この記事は2024年9月にじゃらん編集部が更新しました。
仲西なほ子
沖縄出身、沖縄育ち、沖縄在住。15年間の東京生活を満喫してUターン。現在はフリーランスで取材・執筆・編集・コピーの仕事と、美容の仕事でプライベートサロンも稼働中。息抜きは沖縄県内のリゾートホテル巡り。