お盆に先祖や亡くなった人々の精霊を迎え、ふたたびあの世に送り出すために行われる「迎え火」「送り火」。何を使って、いつ、どのようなやり方で行うのか、ご存知でしょうか。
また、京都の伝統行事である「京都五山送り火」をはじめとした、全国の代表的な送り火・大文字焼についてもご紹介します。
送り火とは

「送り火」とは、お盆に帰ってきたご先祖様の精霊を再びあの世に送り出すための行事です。
逆に精霊を迎え入れるために火を焚くことを「迎え火」と言います。かつては玄関先や庭などで火を焚いていましたが、現在は防火上の理由で盆提灯を灯すこともあるようです。
お盆に迎え火・送り火をする意味

迎え火には、お盆の初日に先祖や亡くなった人々の精霊が道に迷わずに戻ってこられるようにという目印の意味があるといいます。
そして、お盆を一緒に過ごした霊が、今後は無事にあの世に戻れるように願いを込めて焚くのが送り火です。
お盆の迎え火・送り火の準備とやり方
迎え火・送り火のやり方は、地域や宗派によって異なりますので、以下は一つの方法として参考にしてください。
用意するのは「おがら」「焙烙(ほうろく)」「盆提灯」などです。
「おがら」とは、皮をはいだ麻の茎で、お盆の時期になると花屋やスーパーなどで売っているところも多いようです。用意が難しい場合は、割り箸などで代用することもできます。
その「おがら」を乗せるのが「焙烙」と呼ばれる素焼きの受け皿です。こちらも耐熱性の平皿などで代用が可能です。

「盆提灯」は、現在は電気灯を使ったものがほとんどで、迎え火・送り火として用いることもできます。

迎え火・送り火は、玄関や庭など危険が少ない場所を選び、近くに水を用意し、風向きにも十分に注意しながら行って下さい。
小さく切った「おがら」を焙烙に乗せて火をつけ、手を合わせてご先祖様に祈ります。燃え尽きたら、しっかり消火を確認しましょう。
マンションやアパートでは、迎え火・送り火を行うことが防火上の観点から難しくなっているため、代わりに盆提灯を利用するのもおすすめです。
かつてはお墓で焚いた迎え火の火種を持ち帰るために使われた盆提灯ですが、現在は先祖や故人の霊が迷わず帰ってくる目印として飾る役割もあります。
送り火・迎え火はいつやるの?

先祖や亡くなった人々の精霊を供養する日本古来の風習であるお盆。地域によって行われる時期が異なり、7月に行われるものは「新盆」、8月に行われるものは「旧盆」と呼ばれていますが、行事としての内容は変わりません。
そのため迎え火や送り火の時期も地域によって異なります。迎え火が行われるのは盆入りの日で、7月または8月の13日の夕方に焚かれ、送り火は盆明けの日に行われ、7月または8月の16日の夕方に焚かれるところが多いですが、1日前後する地域もあります。
夏の風物詩の「送り火」・「大文字焼」

大文字
「大」の字を松明の炎で描く行事で、お盆の送り火として全国各地で行われています。
なぜ「大」の字を書くのか、その理由は「魔除けの象徴である五芒星(ごぼうせい)の意味がある」「北極星をかたどっている」「弘法大師に由来する」など諸説あります。
ここでは全国の代表的な送り火・大文字焼の行事を紹介します。
京都五山送り火

京都の夏を代表する伝統行事の一つで、お盆の精霊を送るために例年8月16日に行われます。
まず20時に東山に「大」の字が浮かび上がり、続いて松ケ崎に「妙」「法」、西賀茂に「船形」、大北山に「左大文字」、そして嵯峨に「鳥居形」が順番に点灯され、点火時間はそれぞれ約30分間です。
※気象条件によって点火や消火の時刻が変更になる場合もあります。
「京都五山送り火」の詳細はこちら
奈良大文字送り火

世界平和を祈る行事として、終戦記念日である8月15日に例年行われています。
18時50分より春日大社境内の飛火野で慰霊祭が行われ、大文字は若草山の南側にある高円山の中腹にて20時に点火されます。
平城宮跡や奈良公園など、奈良市内の様々な場所から見ることができます。
「奈良大文字送り火」の詳細はこちら
箱根 強羅大文字焼

箱根三大祭りの一つにも数えられる「強羅大文字焼」。先祖供養の送り火として、例年8月16日の夜に行われています。
強羅温泉の正面に位置する明星ヶ岳の頂上付近で19時30分より、松明200~300本を使用して作られる大文字が徐々に点火されていきます。
「箱根強羅観光協会」の詳細はこちら
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Akiko
美味しいものを求めて、国内外を旅するライター。最近は山登りも始めるも、何よりの楽しみは下山後のビールと温泉。