訪れた温泉は約500、『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』という書籍も出版されている温泉オタクの永井千晴(ながち)さん。
この記事では永井さんがこれまでに訪れた温泉の中から、様々なおすすめスポットを紹介してもらいます。毎月、交通アクセスや泉質などの切り口で温泉情報をお伝えしますので、いつか行きたいスポットとしてぜひチェックしてみてください。
※この記事は2022年2月6日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
「いろんな湯船に浸かってみたい」を叶える湯めぐり温泉地
28カ所の露天風呂で湯めぐりできる黒川温泉(熊本)
散策も醍醐味!地元の方御用達の外湯に浸かれる野沢温泉(長野)
どのご利益にあやかりたい?外湯めぐりで願いを込める城崎温泉(兵庫)
日帰りで“湯めぐり温泉地”を楽しむポイント
「いろんな湯船に浸かってみたい」を叶える湯めぐり温泉地
「さくっと日帰り温泉旅行のときも、いろんな湯船に浸かってみたい…」。アクティブな温泉好きのみなさんは、共感してくれるのではないでしょうか。
そんな気持ちに応えてくれる“湯めぐり充実”な温泉地には、
(1)湯めぐり手形を発行している
(2)外湯めぐりができる
(3)温泉銭湯がたくさんある
といった3パターンがあります。
(1)は、温泉地内の旅館と提携して、数カ所をリーズナブルな価格でめぐれる「手形」を発行している温泉地。泊まっていなくても旅館のお風呂に浸かれるので、お得感があるのが最大のメリットです。設備もそろっているため、温泉ビギナーにも挑戦しやすいと言えそう。
(2)は、いくつかの共同浴場をめぐれる温泉地。温泉地でときどき見かける「外湯」は、宿泊施設ではない外の浴場を指します。古くは旅館ごとにお風呂があるのはとても稀で、訪れたお客さんたちは共同浴場で温泉を楽しんでいました。その名残として、観光客が外湯を利用できるよう開放されている温泉地があります。
(3)は、温泉地に限らず、温泉銭湯がいくつもあるエリアで日帰り入浴をしまくる方法。代表的な温泉地といえば、別府温泉郷です。そこかしこに温泉銭湯があるので、どんどん入って挑戦してみることができます。
本記事では、(1)でおすすめな黒川温泉、(2)でおすすめな野沢温泉・城崎温泉をメインに紹介していきます。
28カ所の露天風呂で湯めぐりできる黒川温泉(熊本)

九州屈指の旅情ある温泉街を持つ、黒川温泉。かつては山間のひっそりとした湯治場だったのですが、1980年代に住民が一丸となってリブランディングをはじめ、見事に息を吹き返したそう。

“街全体が1つの宿 通りは廊下 旅館は客室”。黒川にある30軒すべての宿と里山の風景がひとつの旅館であるという考えのもとで運営されています。


その象徴的な取り組みのひとつが、名物の「入湯手形」。黒川温泉内にある28カ所の露天風呂のうち、好きな3カ所を選んで入浴できます。手形は1枚1300円なので、1カ所あたり約430円(有効期限は半年間)!銭湯価格で旅館の露天に浸かれるのが嬉しいポイントです。

歴史ある温泉地にはひなびた雰囲気がつきものですが、黒川には良い意味であまりひなび感がありません。時代に合ったモダンな旅館が軒を連ねていて、手入れの行き届いた“和風”が体現されていると言えます。ひとりでももちろん、家族や友人とゆっくり過ごすために、ぜひ訪れたい温泉地です。
散策も醍醐味!地元の方御用達の外湯に浸かれる野沢温泉(長野)

奈良時代から歴史を持つ野沢温泉には、温泉地内に13もの共同浴場が残っています。それぞれが徒歩圏内に点在していて、町を散策しながらめぐれるのが魅力です。


すべての外湯の料金は寸志(=お賽銭)で、受付の方もいません。
ひとつひとつが地域の方々によって管理されていて、当番制で毎日掃除したり、電気代や水道料金を負担したりしているとのこと。住民が日常的に使う大切な浴場なので、観光客は普段以上にエチケットを守って入浴しなくてはいけません。


13の外湯すべてで源泉を使用(加水あり)。66℃の源泉がそのまま注がれているので、湯もみしたり水を加えたりしながら温度を調節します。澄んだ緑色をしていて、ちらちらと舞う白い湯の花がなんとも美しい。そして、もうもうと立つ湯気からは、ほんのり甘い硫黄のにおい…。温泉好き垂涎のすばらしい湯が注がれているのです。
どのご利益にあやかりたい?外湯めぐりで願いを込める城崎温泉(兵庫)

関西随一の人気温泉地・城崎温泉。柳並木の温泉街が美しく、年中多くの観光客が訪れています。
城崎の過ごし方の定番といえば、“浴衣姿で外湯めぐり”。浴衣で出歩くことを推奨されており、旅館でも積極的に色浴衣の貸し出しがあります。カラコロと下駄を鳴らしながら散策するのがとても楽しい温泉地です。


城崎には7つの外湯が点在していて、各施設で大人1日1300円の外湯入り放題チケットが購入できます。それぞれ観光客向けに整備されており、温泉ビギナーも安心して利用できるのが◎。
ちなみに城崎には、外湯めぐりの利用を優先するような条例が定められています。旅館への給湯量は制限され、客室に温泉をひくことは禁止とするような徹底ぶり。城崎に訪れて、外湯へ行かないのはもったいないですね。

よく温まるさっぱりした塩分豊富な温泉が、7カ所の個性豊かな湯船に注がれています。
また、それぞれの外湯には、「不老長寿」「商売繁盛」「合格祈願」などご利益があるのだとか。どの外湯へ行こうか迷ったときは、ご利益で選んでみるのもいいかもしれません。
日帰りで“湯めぐり温泉地”を楽しむポイント
ご紹介した3カ所以外にも、下呂温泉(岐阜)や鳴子温泉郷(宮城)、渋温泉(長野)、伊東温泉(静岡)など、全国各地に日帰りでも湯めぐりが楽しめる温泉地はいくつもあります。
そういった温泉地に日帰りで訪れる際のポイントをおさえておきましょう。
まずは、メインのシンボル的浴場は要チェック。指標として、大湯・総湯・元湯を目指すとよさそうです。そういった名前の施設は、温泉地の中心的な共同浴場であるパターンがほとんど。一番新鮮でいい湯が注がれている場合も多いので、マストで訪れたいところです。
次に、地元の方へのリスペクトと配慮を忘れずに。多くの場合、住民も日常的に使う浴場だったり、地元の方が管理を行っていたりします。観光客はいうなれば“よそ者”なので、迷惑がかからないように気をつけましょう。
洋服はデニムやタイツなどはなるべく避けて、脱いだり着たりがしやすい格好を選ぶのがおすすめ。私はいつもマキシ丈ワンピースを着て訪れています。湯めぐりの大敵は「めんどうくささ」。とにかく楽ちんなスタイルにしてくださいね。
そして、大量の保湿液を持参しましょう。化粧水やボディジェルなど、軽めのものが理想的です。「このあとまた浸かるから別にいいか」と保湿を怠ると、湯めぐり後にはカサカサになってしまう肌トラブルが発生しがち。毎回保湿をしておいたほうが安心です。
最後に、温泉以外でもお金を使うことを意識してみていただけると嬉しいです。日帰り入浴の料金だけでは、なかなか温泉地はうるおいません。例えば飲み物を浴場で購入したり、お土産を買ったり、ランチを地元の食堂で食べたり。私自身も、日帰りで温泉に浸からせてもらうときは、少しでも地域に貢献できるようにお金を落としたいなあと考えています。
※掲載の価格はすべて税込価格です。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、お住まいやお出かけされる都道府県の要請をご確認の上、感染拡大防止に充分ご配慮いただくようお願いいたします。
永井千晴(ながち)
温泉オタクな会社員。訪れた温泉は約500。元じゃらん編集部員。 Twitterアカウント @onsen_nagachi