「災難が降りかかる」というイメージの強い厄年。一生のうちに男性は3回、女性は4回といわれています(女性は3回説もあり)。厄年を前に、神社やお寺で厄除けのお守りを購入したり、祈祷を考えたりしている人も多いのではないでしょうか。
今回は厄年から厄除け、お守りの持ち方や古いお守りの納め方まで、歴史学者で日本の思想や文化に詳しい武光 誠先生にお話をうかがいました。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
そもそも「厄」とは?男女で厄年の年齢が異なる
「厄」とは“明るい気持ちで生活することを妨げるすべてのもの”

災いや災難、苦難そのものはもちろん厄とされますが、武光先生によるとそのような不幸よりもはるかに厄介なのが、“苦しいと感じる気持ち”や“不運だと思うこと”なのだそう。
「神道で厄とは、災いによって生み出される後ろ向きな気持ちのことを指します。人は誰しも幸せになるために生まれてきているのに、苦しみや不安をずっと心に溜め込んでいると、幸運を掴むためのカンが鈍くなるんですよ。心に溜め込んだ不安や苦しみ、それこそが本来の厄なんです」(武光先生)。
なるほど、そう聞くと厄年だからといってむやみに恐れる必要はなさそうですね。とはいえ、実際に厄年に差し掛かるとどうしても気掛かりなもの。不安を取り除き、心穏やかに厄年を過ごすにはどうしたらいいのでしょうか?
厄年の年齢は男女で異なる。前厄・後厄の年齢も確認を
厄年は男性と女性でそれぞれに年齢が決まっています。厄年は数え年で当てはめますが、数え年とは「生まれた時点で1歳とし、以降元旦のたびに年齢を重ねる数え方」のことをいいます。※地域によって異なる場合があります
本厄の前年を前厄(まえやく)、後年を後厄(あとやく)と呼び、一般的にこの3年間を厄年として、古くから慎んで過ごすべき時期とされてきました。「厄年の始まりと終わりの境目については、元旦や節分などいろいろな考え方がありますが、基本的に神道では元旦とされています」(武光先生)。
女性の厄年は19歳・33歳・37歳・61歳になる1年間

女性は30代のうち、実に6年も厄年とされています。女性の30代は結婚や出産、育児やキャリアアップなどで環境が大きく変化する人が多く、さらに体調や心身のバランスが大きく変化するとき。
大きなライフイベントが一気に押し寄せる30代の数年間は、特に用心すべき年とされています。
男性の厄年は25歳・42歳・61歳になる1年間

社会的な立場上、男性の40代は中間管理職となって上にも下にも気を遣い、仕事のストレスが大きくなる人もいるでしょう。プライベートではマイホームの購入など大きな決断を伴う場合もあります。
「中世以前の農村では男性は42歳、女性は33歳で村の指導者を務めていました。人々の役に立つ年齢=『役年』が厄年に変わったという説もあり、昔も今もこの年代は人生において特に負担がかかるときだということがわかりますね」(武光先生)。
「厄除け」とは?「厄落とし」や「厄払い」とどう違う?
宗派や風習によって呼び名が違うものの、基本的には同じ意味

苦難の多い厄年を心穏やかに過ごすために、古くから行われているのが「厄除け」や「厄払い」と呼ばれるお参りです。神仏のご利益・ご加護をよりしっかりと授かりたい場合は、拝殿や本堂に上がって御祈祷(ごきとう)を受けるのもおすすめです。
これは人生の大きな節目に、災いをなくして運が開けるよう神仏にお願いする儀式で、不安な気持ちを切り替え、人生を見つめ直すきっかけにもなります。
「厄除けで有名な社寺が日本各地にありますが、わざわざ遠くへ足を運ばなくても、氏神様と呼ばれる地域の神社で厄除けの御祈祷をするだけで十分です」(武光先生)。
「厄除け」に行く時期はいつ?
「時期は特に決まっていませんが、御祈祷を受ける場合は概ね元日〜1月7日の間が目安。ただこの期間は初詣の参拝客も多いため、立春までを目処にしてもよいでしょう。いつまでにという明確な決まりはありません」(武光先生)。
御祈祷の実施や祈祷料、予約の有無は社寺によって異なるため、事前に確認しましょう。また、当日は素足を避け、靴下やストッキングを履くことを忘れずに。
厄除け・厄払いのお守りの持ち方
厄除け守りの正しい持ち方は?

厄年には神社やお寺で「厄除け守り」を授けてもらうのもおすすめです。厄年の間はお守りをいつも身に付けたり、身近に置いたりすることで神仏のご利益とご加護をいただくことができます。
「引き出しに入れたままにしたり、鞄の外に付けるなど、お守りをいい加減に扱うと悪運を招きます。神仏のパワーが宿ったお守りは大切に扱いましょう」(武光先生)。
また、お守りやお札は神社やお寺を参拝したあとに授けてもらうのがマナー。社寺を訪れたら、まずはきちんとお参りすることをお忘れなく。
神社やお寺のお守りを複数持ってもよい?
厄除けのお守りと合わせて、縁結びや学業成就、商売繁盛や家内安全など複数のお守りを同時に持っても良いのかも気になるところ。
「たくさん持つことでパワーが弱まるとか、持っていてはいけないということはありません。持っていることでなんとなく安心する、気持ちが晴れるということであれば、厄除けのお守りと合わせて他のお守りを持っていること自体に問題はありません」(武光先生)。
お守りは授かってどのぐらいの期間、効果がある?
お守りのご利益やご加護は、持っていれば永遠に続くというものではありません。「一般的に1年〜1年半で神社やお寺に返せばよいとされています」(武光先生)。
思い入れのあるお守りはいつまでも手元に置いておきたくなりますが、基本を守り、節目節目にお返しして、新しいものを授けてもらいましょう。
厄年でなくても、厄除け守りは持ってもいい?
厄年以外の年でも、不安な気持ちがある場合は厄除け守りを持っていても問題ありません。お守りのご加護にあずかり、よどんだ気持ちを一掃して幸運を呼び寄せましょう。
厄除け・厄払いのお守りの返し方
古くなったお守りはどうすればいい?

役割を終えたお守りをゴミとして扱うのは絶対にやめましょう。古くなったお守りは地元の氏神様か、授けてもらった社寺へお返しするのが基本。大きな社寺なら境内の「納札所(のうさつしょ)」など決められた場所にお守りを納めます。
「古いお守りを納める際、社務所や寺務所に気持ちばかりのお礼を包む人もいます。お金はむき出しにせず、白い包みや無地の封筒などに入れ、神社では『玉串料』、寺院では『御布施』などと書きます」(武光先生)。
お守りを返すタイミングは?
日本には年の暮れにその年の無事に感謝して、社寺にお参りする習わしがあります。その際、一年の区切りとしてお守りをお返しするのが一般的。納められた古いお守りやお札は、各社寺でお焚き上げされます。
「お守りを返す時期は、年の暮れに限らず氏神様への初詣や何かのご利益参りをする時など、実際はいつでも問題ありません」(武光先生)。守ってもらった感謝の気持ちを持って、きちんと返納しましょう。
まとめ
暗い気持ちになりがちな厄年ですが、見方を変えれば、厄払いで自分と向き合い人生を幸せへと導く良いチャンスでもあります。清く前向きな気持ちで過ごしましょう。
■歴史学者 武光 誠さん
古代史を中心に日本の思想・文化について歴史哲学的な観点から研究を進め、幅広く執筆。『知っておきたい日本の神様』(角川ソフィア文庫)、『ポケット版 開運ご利益参り』(講談社)など、日本史から世界史まで出版書籍は340冊以上。
\宿・ホテル検索はこちら/
※この記事は2023年1月17日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。
小林 亜紗子
岐阜県生まれ。旅行情報誌『東海じゃらん』編集部を経てフリーに。コーヒー、温泉、音楽好き。民芸や郷土食、地域の慣習など、無名の人々に継承されてきたものに惹かれます。二人の子どもたちを各地の温泉に連れ回し中。