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2023.07.26

【滋賀県】近江鉄道の見どころを紹介!レトロな駅舎と近江国の歴史を満喫

日本一大きな湖である琵琶湖の東を走る近江鉄道。2023年で開業から125年を迎え、“ガチャコン”の愛称で親しまれる鉄道です。沿線には国宝の彦根城をはじめ、豊臣秀吉ゆかりの寺社など歴史の舞台となったスポットがいくつもあり、かつて「近江国」と呼ばれた滋賀の風情を体感できます。

車窓から望む昔懐かしい風景とともに、「近江国」のロマンを訪ねる旅をしてみませんか。

ノスタルジックな風景が広がる近江鉄道

(画像提供:近江鉄道)
(画像提供:近江鉄道)
画像提供:近江鉄道

滋賀県の東部、琵琶湖の東岸・湖東エリアを南北に走る近江鉄道。1898(明治31)年の開業から、120年以上の歴史を数える鉄道です。「米原駅」~「貴生川駅」の本線、「高宮駅」~「多賀大社前駅」の多賀線、「八日市駅」~「近江八幡駅」の八日市線の3路線からなり、その総延長距離は約59.5km。全33駅をゆっくりと運行する近江鉄道は、滋賀県民に“ガチャコン”と呼ばれ、親しまれてきました。この愛称は、走行すると継ぎ目で頻繁に音がするためにつけられたとも言われています。

(画像提供:近江鉄道)

車窓からはかつての近江商人が築き上げた伝統ある町並みや、のどかな田園風景を眺めることができます。また、近江鉄道は車両の形式やカラーリングが豊富で、乗るたびにさまざまな種類の車両に出会えます。

(画像提供:近江鉄道)

「朝日野駅」~「水口松尾駅」、「五箇荘駅」~「八日市駅」間は一面に田んぼが広がり、街中とは異なるのどかな風景が楽しめます。初夏の田植え前は水を張られた田に列車の姿が映る「水鏡」、秋には、稲穂が黄金色に染まる情景が広がります。冬は雪が積もることも多く、八日市駅より北では車窓から雪景色が見られる日も珍しくありません。

(画像提供:近江鉄道)
車内に自転車OKなスペースがある

近江鉄道では、自転車を電車内にそのまま持ち込めるサイクルトレインも運行しています。春~秋はサイクリングで名所を巡るのも気持ちよさそうです。

(画像提供:近江鉄道)
滋賀県の地酒が飲み放題!「近江の地酒電車」

近江鉄道はどの季節に訪れても楽しめますが、時期があえばイベント列車に乗るのも一興です。例年1月下旬~3月上旬の週末を中心に運行する「近江の地酒電車」は、近江鉄道沿線を中心とする蔵元の地酒が電車内で楽しめるイベント列車です。車内では、特製料理とともに、酒どころである滋賀県の地酒が味わえます。

100年以上も活躍!近江鉄道の駅舎と鉄橋

(画像提供:近江鉄道)
赤い屋根と煙突が可愛らしい洋館「鳥居本駅」

歴史ある近江鉄道では、開業当時の古い駅舎や文化財となっている駅舎が今も利用され、あちこちでタイムスリップしたかのような風景に出会うことができます。その一つである「鳥居本駅」は、赤い腰折れ屋根が印象的。1931(昭和6)年から残る駅舎で、国指定の有形文化財にも登録されています。

(画像提供:近江鉄道)
大正初期の洋風建築「新八日市駅」

「新八日市駅」は、ツタで覆われた2階建て木造建築がレトロな駅舎です。こちらは八日市線の前身である湖南鉄道の本社としても使われていて、現在の駅舎は1922(大正11)年に設置されました。近江鉄道の駅となったのは、1944(昭和19)年のこと。駅舎を覆うツタが青々と茂る初夏は、特に見ものです。

(画像提供:近江鉄道)
「八日市駅」の駅舎2階にある「近江鉄道ミュージアム」

近江鉄道の本線と八日市線が接続する「八日市駅」駅舎2階の改札内には「近江鉄道ミュージアム」があり、近江鉄道の歴史を伝える品々や運転機器が展示されていて、乗客以外も無料で入館できます。

(画像提供:近江鉄道)
路線最古の駅舎である「桜川駅」

近江鉄道(彦根―愛知川駅)開業から2年を経た1900(明治33)年に開業した「桜川駅」。120年以上前の開業当時のものと思われる駅舎がそのまま利用されています。草創期の姿を残す、近江鉄道最古級の駅舎です。

(画像提供:近江鉄道)
五箇荘~尼子間にある長さ239mの愛知川橋梁

駅舎ではありませんがこちらもおすすめしたいのが、真っ赤なカラーの愛知川橋梁。近江鉄道本線の五箇荘駅を過ぎてすぐの愛知川に架かり、1898(明治31)年に建設された鉄道橋です。明治末期に造られた鉄道用トラス橋梁では滋賀県内唯一の橋で、国指定の登録有形文化財でありながら今も活躍しています。運がよければ、隣の橋を疾走する東海道新幹線に出会えます。

■近江鉄道
滋賀県甲賀市水口町虫生野(近江鉄道貴生川駅)~滋賀県米原市米原(近江鉄道米原駅)
【運賃】2040円(貴生川駅~米原駅)【1デイスマイルチケット】900円 ※金土日・祝日に利用でき全線一日乗り放題【近江の地酒電車】※運行日や料金、予約方法など詳細は公式HPを確認
「近江鉄道」の詳細はこちら

(画像提供:近江鉄道)

風情ある水路とレトロ建築を巡る「近江八幡駅」

近江鉄道の見どころとなる駅を、南から順に見ていきましょう。まずご紹介するのが、八日市駅より八日市線に乗り換えて5駅、八日市線の終点となる「近江八幡駅」。豊臣氏2代目の豊臣秀次が開いた城下町は、江戸~明治時代にかけて、全国各地で商業活動を行った近江商人の町として発展しました。当時物流の手段として使われていた「八幡堀」とその周囲に広がる趣ある町並みにモダンな洋館が点在する風景は、のんびり散策するのにぴったりです。

八幡堀

八幡堀

戦国時代、豊臣秀次の居城・八幡山城のお堀であった八幡堀は、琵琶湖へと続く水路として発展しました。水路に沿って石積みや土蔵が並ぶ情景は、時代劇のロケ地にも使われています。八幡堀を船で遊覧する八幡堀めぐりも運行しています。

かわらミュージアム

(画像提供:かわらミュージアム)
(画像提供:かわらミュージアム)

八幡堀沿い、瓦工場跡地に建つのが「かわらミュージアム」。近江八幡の伝統産業である「八幡瓦」を中心に、瓦の歴史や作り方を紹介しています。展示物でもある瓦づくしの建物10棟には約2万4000枚もの屋根瓦が使われ、周囲の街並みと景観に合わせるため、一枚一枚すべての瓦の表面を金ブラシで削り落として古びた趣にしています。敷地内には瓦のオブジェ、古瓦をデザインしたアートな道もあります。

■かわらミュージアム
滋賀県近江八幡市多賀町738-2
9時~17時(最終入館16時30分)
月(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始 ※4・5月と10・11月は無休
入館料【大人】300円【小中学生】200円
近江鉄道近江八幡駅よりバスで7分、八幡堀八幡山ロープウェー口より徒歩3分
「かわらミュージアム」の詳細はこちら

(画像提供:かわらミュージアム)

旧八幡郵便局

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
1921(大正10)年に建築された滋賀県の有形文化財

近江八幡を歩くと、明治~昭和にかけて建築家・ヴォーリズ氏が手掛けたレトロモダンな洋館とそこかしこで出合えます。英語教師として近江八幡に赴任後、建築設計事務所を設立したヴォーリズの建築物は、国内外で1600棟以上に及ぶのだそう。その一つである旧八幡郵便局は、ヴォーリズの初期の代表作です。趣ある玄関や窓のアートは、中に入って自由に見学できます。

■旧八幡郵便局
滋賀県近江八幡市仲屋町中8
【土日祝】11時~17時
月~金(土日祝のみ公開)※不定休や特別開館あり
入館無料
近江鉄道近江八幡駅よりバスで7分、大杉町八幡山ロープウェイより徒歩3分
「旧八幡郵便局」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

近江商人のゆかりの地「五箇荘駅」

画像提供:近江鉄道
画像提供:近江鉄道

江戸時代~明治にかけて、近江を拠点に全国で行商をしてきた近江商人。その発祥地の一つとされる五個荘にある「五箇荘駅」は、近江商人の屋敷をイメージして建てられました。突き出た部分の屋根は、五角形になっています。

五個荘金堂の町並み

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
「中江準五郎邸」
(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
「外村繁邸」
(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
「藤井彦四郎邸」のヒュッテ
(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
「藤井彦四郎邸」の庭園

漆喰の白壁をめぐらした土蔵と、琵琶湖で使われた船の板を再利用した舟板塀が続き、錦鯉が泳ぐ水路が走る「五個荘金堂の町並み」。近江商人の屋敷が並ぶ五個荘金堂地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。朝鮮半島や中国大陸に20店以上の百貨店を出店した一族の本宅「中江準五郎邸」、近江商人を題材にした作品を多く書いた作家・外村繁氏の旧宅「外村繁邸」、暖炉を配した贅沢な造りの迎賓館「藤井彦四郎邸」を訪ねれば、近江商人の暮らしぶりも垣間見られます。

■五個荘金堂の町並み
滋賀県東近江市五個荘金堂町
【中江準五郎邸・外村繁邸・藤井彦四郎邸3館】10時~16時30分
【中江準五郎邸・外村繁邸・藤井彦四郎邸3館】月、祝日の翌日、年末年始
3館共通券(中江準五郎邸・外村繁邸・藤井彦四郎邸)大人1000円、6歳~15歳500円
近江鉄道五箇荘駅より徒歩15分~30分
「五個荘金堂の町並み」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

滋賀が誇る天下の名城がある「彦根駅」

天下の名城の一つに数えられる彦根城の最寄り駅が「彦根駅」。駅前では近江国彦根藩の初代藩主である井伊直政の銅像が迎えてくれます。

国宝 彦根城

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

江戸時代、徳川家に仕えた譜代大名井伊直継・直孝が建てた井伊家の居城。現存する国宝五天守の一つに数えられる天守をはじめ、国の重要文化財となっている4つの櫓(やぐら)が、1622(元和8)年の完成当時の姿を今に留めています。

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

日本の城郭では唯一といわれる左右対称の形から「天秤櫓(てんびんやぐら)」と名付けられた櫓です。大堀切から「天秤櫓」に続く木造の橋の構造が見られます。

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

こちらは「彦根城天守」。高さ21mと小ぶりながら、切妻破風(きりづまはふ)、入母屋破風(いりもやはふ)、唐破風(からはふ)を配した美しい姿を見せています。

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

江戸時代から定刻を知らせていた「時報鐘(じほうしょう)」。隣接した「聴鐘庵」では抹茶(和菓子付き500円)でひと休みできます。

■国宝 彦根城
滋賀県彦根市金亀町1-1
8時30分~17時(最終入場受付16時30分)
なし
入場料800円(玄宮園と共通)
近江鉄道彦根駅より徒歩15分
「国宝 彦根城」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

玄宮園(げんきゅうえん)

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
園内には彦根城天守を一望できるポイントがある
(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
11月の紅葉ライトアップ、冬の雪景色も美しい

1677年に4代藩主・井伊直興が作庭を始めた大規模な池泉回遊式庭園。中央の池には4つの中島があり、さまざまな形式の橋を渡って自由に散策できます。園内には玄宮園十勝(10カ所の名勝)と呼ばれる見どころがあるほか、冬の雪景色や初夏に咲く蓮や菖蒲の花、11月の紅葉など、四季折々の情景が楽しめます。

■玄宮園(げんきゅうえん)
滋賀県彦根市金亀町3-40
8時30分~17時(最終入場受付16時30分)
なし
入場料800円(彦根城と共通)
近江鉄道彦根駅より徒歩15分
あり(1台400円)
「玄宮園(げんきゅうえん)」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

彦根城お堀めぐり

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

井伊家に伝わる資料をもとに、江戸時代の彦根藩主専用船を再現した船で巡れる「彦根城お堀めぐり」。彦根城の天守や石垣を眺めながら、約45分かけて城の内堀をゆったりと巡ります。お堀から眺める情景はもちろん、ガイドによる詳細な案内は聞きごたえたっぷりです。

■彦根城お堀めぐり
滋賀県彦根市金亀町 玄宮園前船着場
【平日】10時~15時【土日祝】10時~16時 ※時期により運航時間に変動あり
不定
乗船料【中学生以上】1300円【3歳~小学生】600円 ※時期により変動あり ※12月上旬~3月中旬までは3日前までに要予約
近江鉄道彦根駅より徒歩12分
「彦根城お堀めぐり」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

豊臣秀吉ゆかりの大社へ「多賀大社前駅」

近江鉄道多賀線の終点「多賀大社前駅」を出ると、目の前に大鳥居があり、そこから「表参道絵馬通り」が続いています。こちらは古くから全国的な信仰を集める多賀大社の最寄り駅。通りの両脇には、土産物店のほか、カフェや飲食店が並び、歩くだけでも楽しめます。

多賀大社

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

近江鉄道に乗ったらぜひお参りしたいのが「多賀大社」。“お多賀さん”の名で親しまれる滋賀県第一の大社で、年間約170万人の参拝客が訪れます。御祭神は天照大神(あまてらすおおみかみ)の両親で、初めて夫婦の道を始めたと言われる伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)と伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)。生命の親神さまであることから、莚命長寿、縁結び、厄除けのご利益で知られ、武田信玄や豊臣秀吉も信仰したと伝えられます。

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
石の反り橋である「太閤橋」

清流に囲まれた境内に入ると、豊臣秀吉が母の病気平癒のお礼として寄進したとされる「太閤(たいこう)橋」が迎えてくれます。続いて奥には堂々とした本殿、能舞殿、絵馬殿が建っています。厳かな雰囲気が漂う現在の社殿は、1932(昭和7)年に再建されました。

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)
「多賀大社 奥書院庭園」

有料で見学できる「多賀大社庭園」は、「太閤橋」とともに豊臣秀吉により寄進された安土桃山時代の庭です。自然の樹木を背景にした造りや自然石の石橋など見どころが多く、春や夏の緑はもちろん、秋の紅葉も見事です。

■多賀大社
滋賀県犬上郡多賀町多賀604
[参拝時間]8時30分~16時
なし
参拝無料 ※奥書院庭園拝観300円
近江鉄道多賀大社前駅より徒歩10分
「多賀大社」の詳細はこちら

(画像提供:(公社)びわこビジターズビューロー)

まとめ

政治や経済の要であった「近江国」を走る近江鉄道の沿線には、その長い歴史を物語る見どころがいくつもあります。近江鉄道に乗って、戦国武将や近江商人ゆかりの水路の町、国宝である彦根藩主の居城、古くから信仰を集める県下きっての大社へ。気になる地をのんびりと訪ねてみてはいかがでしょう。

※この記事は2023年5月19日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。
※掲載の価格は全て税込価格です。

梶本 愛貴  梶本 愛貴

長野県出身。おもに旅や鉄道、書籍などの記事を書いています。 旅はぼーっとするのが好き、列車は乗るのが好き、温泉は万座や草津など強めの湯が好きです。大人になって改めて感じた旅や列車の面白さをお伝えしていきます。

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