宮城県にある鳴子温泉郷は、川渡温泉、東鳴子温泉、鳴子温泉、鬼首温泉、中山平温泉の5つのエリアからなる温泉地の総称です。7つの泉質が湧き出るとされ、多彩な湯を楽しめる温泉場として知られています。今回は、そのなかで鳴子温泉の日帰り入浴ができる施設をご紹介。絶景を堪能できる展望露天風呂や、貸切風呂なども取りあげているので、ぜひ旅の参考にしてみてください。(画像提供:大江戸温泉物語 ますや)
さまざまな泉質が魅力の鳴子温泉

宮城県北部に位置する鳴子温泉郷は5つの温泉地からなる一大温泉郷。なかでも温泉郷の中心部にある鳴子温泉は、古くから“奥州三名湯”の一つに数えられ、温泉街には宿泊施設や老舗の湯治宿、そして食事処、土産物店などが並び賑わいをみせています。自家源泉の宿が多いのも特徴で、多彩な湯が湧くため、湯めぐりをすればさまざまな泉質の湯を楽しめます。
お得な「湯めぐりチケット」は必見!

鳴子温泉郷では豊富な泉質を楽しむのに便利な湯めぐりチケットを販売しています。チケットには6枚のシールが付いていて、各入浴施設で必要枚数のシールを使えば、通常の入浴料金よりお得に入浴できるシステム。複数のお風呂をめぐりたい方は、ぜひ利用してみてください。
なお、日帰り入浴のみ利用可能で、宿泊施設の休憩プランには使えません。また、清掃などで入浴できない場合があるので、鳴子温泉郷の公式サイトの入浴施設一覧表を確認のうえ、事前に各施設に問い合わせてから訪れるのがおすすめです。チケットはJR鳴子温泉駅舎内の観光案内所で購入可能で、有効期限は発売日から6カ月です。
鳴子・早稲田桟敷湯
早稲田大学ゆかりの公衆浴場

硫黄泉が香る温泉街のなかで、ひときわ目を引く黄漆喰のモダンな建物が鳴子・早稲田桟敷湯です。戦後まもなく、早稲田大学の学生が掘削の実習で温泉を掘り当てたことからその名が付けられました。共同浴場として長く街の人々に親しまれてきましたが、採掘から50年後の1998(平成10)年に、早稲田大学石山修武教授の設計で全面改築し、今の姿になったのだそうです。
男女別の浴場には、温泉成分が結晶化した湯の花が漂う木枠の浴槽が2つ。熱めの湯と、ややぬるめの湯になっているので、好みの湯に浸かりましょう。観光客はもちろん、地元の人も多く訪れています。のんびり浸かるなら貸切専用の露天風呂もあるので、フロントで空き状況を確認してみてください。電話での予約も可能です。
ロゴ入りのオリジナルタオルはお土産にもおすすめ。今治製の特注品で、文字のデザインはブックデザイナーの平野甲賀氏によるもの。やや大判で使い勝手がよく、モダンかつレトロなデザインです。
日帰り入浴データ
[入浴時間]9時~21時30分(最終受付21時)
[露天風呂]あり(貸切風呂)
[貸切風呂]可(50分入浴料金に+1100円)
[レンタルタオル]なし
[購入タオル]あり(フェイスタオル440円)
[サウナ・岩盤浴]なし
宮城県大崎市鳴子温泉字新屋敷124-1
なし
鳴子温泉駅より徒歩2分/東北自動車道古川ICより40分
なし※湯めぐり駐車場・鳴子温泉駅駐車場を利用
「鳴子・早稲田桟敷湯」の詳細はこちら
源蔵の湯 鳴子観光ホテル
創業400年の伝統の宿


創業は1620(元和6)年と江戸時代初期から続く大型旅館。2024年にリニューアルされ、オールインクルーシブ(別途有料オプションもあり)が導入されました。
3階の大浴場で入浴できるのは、創業時から400年守り継がれてきた湯。御影石造りの浴槽に、さらりとなめらかな肌あたりが特徴の湯が満ちています。日によって変化するという乳白色やエメラルドグリーンの湯の色あいも楽しめます。
時間をかけ温泉を堪能するなら、露天風呂にもぜひ浸かってみてください。外のひんやりとした空気を感じながら、ヒノキの浴槽でゆったりと湯浴みをできますよ。

日帰り入浴の営業は、基本的に土曜、日曜、祝日ですが、営業をしない日もあるので電話で問い合わせをしましょう(0229-83-4330) 。また、時間は2時間と短めなので余裕を持って訪れてください。
日帰り入浴データ
[入浴時間]【土・日・祝】12時~14時(最終受付13時30分)
[露天風呂]あり
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]あり(フェイスタオル無料、バスタオル220円)
[購入タオル]なし
[サウナ・岩盤浴]なし
大江戸温泉物語 ますや
温泉街を見晴らす露天風呂とグルメバイキングが自慢



温泉街の高台に建つ大型旅館。8階の大浴場からは、鳴子温泉の温泉街や、その向こうの山河を一望できます。
おすすめは、浴場「天馬」の展望露天風呂。周囲には山々の大パノラマが広がり、湯船に体を預ければ、まるで自然の中で入浴をしているような開放感を味わえます。もちろん、内湯からの眺めも見事。大きなガラス窓越しに温泉街の情緒豊かな風景も楽しめます。
また、男女入れ替え制のもう1つの浴場「天翔」は、施設名にちなんだ枡がモチーフです。天井から枡へ、枡から湯船へと湯がリレー式に注がれていく様子を眺めながら、温泉を満喫できます。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。少しぬるっとしており、肌はしっとりとうるおうといわれています。


日帰りの入浴付きディナーバイキングプランも用意されています。和洋中のバラエティに富んだメニューをお腹いっぱい食べられますよ。創作料理のほか、「気仙沼モウカザメのチリソース」や「白石温麺」といったご当地メニューが並び、カニ食べ放題も期間限定で開催(紅ズワイガニ、またはトゲズワイガニの脚と爪のみの提供)。お風呂と一緒に地元料理を堪能できるのは嬉しいですね(カニ食べ放題は、2025年3月31日まで開催予定。仕入れ状況により延長、または再開する場合あり)。
日帰り入浴データ
[入浴時間]15時~24時(最終受付22時)
[露天風呂]あり
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]あり(バスタオル220円)※入浴付ディナーバイキングプランはバスタオル付
[購入タオル]あり(フェイスタオル110円)※入浴付ディナーバイキングプランはフェイスタオル付
[サウナ・岩盤浴]なし
宮城県大崎市鳴子温泉湯元82
なし
鳴子温泉駅より徒歩5分/東北自動車道古川ICより55分
なし※大江戸温泉物語 幸雲閣駐車場を利用、要問い合わせ
「大江戸温泉物語 ますや」の詳細はこちら
滝の湯
鳴子温泉神社の御神湯に浸かる


鳴子の街には、観光客も利用できる共同浴場があり、滝の湯はその1つ。温泉街の温泉神社のご神湯を引く湯治場風情漂う施設です。
入浴券は券売機で購入するスタイル。総ヒバ造りの浴室には、大小の湯船が2つあり、建物裏手から樋で導いた乳白色の湯が満ちています。滝の湯の名の通り、樋から滝のように湯が流れ落ちているので、打たせ湯としても心地よい刺激を楽しめますよ。
なお、洗い場にシャワーはありません。石鹸やシャンプーの持ち込みは可能ですが、浴場が狭いので洗髪などは周囲に配慮して行ってください。混雑時は譲り合う、撮影などはしない、といったマナーも忘れないようにしましょう。
日帰り入浴データ
[入浴時間]7時30分~21時(最終受20時30分)
[露天風呂]なし
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]なし
[購入タオル]なし
[サウナ・岩盤浴]なし
鳴子ホテル
広々とした浴場で老舗の湯に浸かる


温泉街の高台にたたずむ創業150年以上の老舗ホテルです。敷地内に湧く3本の源泉を、24時間体制で5人の湯守が管理しています。
浴場は男女入れ替え制。「芭蕉の湯」は、石造りの大きな湯船が特徴です。メインの大浴場のほか、すわり湯や半露天風呂など、さまざまなスタイルで温泉を楽しめます。特徴的なのは、外気や湿度によって湯の色が透明、緑色、乳白色、鶯色などに変化すること。泉質は変わらないはずなのに、湯の色によって湯ざわりが変わるように感じるのが不思議です。


もう1つの温泉「玉の湯」はヒノキ風呂で、温泉場の温かみを感じさせる浴場。とろりとして肌にまとわりつくような弱アルカリ性の湯は、古い角質を落とす効果が期待でき、肌がつるつるになるといわれています。
「玉の湯」には、「こうやまき桶風呂」と「青畳石風呂」の半露天風呂が併設されています。鳴子の山々を眺めながら、ゆっくり温泉に浸かれます。

2つの大浴場のどちらが、男風呂になるのか女風呂になるのかは日によって異なります。また、清掃によって日帰り入浴ができない場合もあるので、必ず電話で確認してから訪れるようにしましょう。
日帰り入浴データ
[入浴時間]11時~最終受付15時
[露天風呂]あり
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]あり(フェイスタオル無料、バスタオル300円)
[購入タオル]なし
[サウナ・岩盤浴]なし
ホテルたきしま
のぼせに注意!驚くほど体が温まる薬湯が名物の温泉

仲町通り沿いにあるホテルたきしまは、名湯を日帰りで楽しめる施設。名物はなんといっても地下の「薬湯(くすりゆ)」です。基本的に貸切利用のお風呂で、こぢんまりとした浴槽に、加温なし、循環なしの掛け流しの湯がはられています。ほんのり黒っぽい湯は、ほぼ中性のナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉。木材のような独特の香りがあり、とろりとした湯ざわりです。
この温泉では、宿の人が「初めてなら、肩まで浸かるのは1分以内にしたほうがよい」と注意するほど、体が温まるのだそう。気持ちよく湯に浸かったら、その後数時間は体がぽかぽか。事前予約はできないので、訪れた時に先客がいれば順番を待たなければいけませんが、それでも待って入浴する人も多い個性派な温泉です。
お土産は、全身洗浄剤「OKちゃん」がおすすめ。源泉が配合されていて、顔、髪、体のどこでも洗えるアイテムです。
日帰り入浴データ
[入浴時間]9時~17時
[露天風呂]なし
[貸切風呂]可
[レンタルタオル]なし
[購入タオル]なし
[サウナ・岩盤浴]なし
宮城県大崎市鳴子温泉新屋敷28-1
なし
鳴子温泉駅より徒歩7分/東北自動車道古川ICより40分
あり
旅館すがわら
温泉熱を利用した低温サウナに入ろう


旅館すがわらは、湯治場の風情を今に伝える、創業150年の老舗宿。3つの大浴場などがあり、日帰り入浴の場合は1つの浴場を選んで入浴します。
注目は、2023年に誕生の男女別大浴場「うるおいの湯」。浴室は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした広めの浴槽があり、3種の温泉のうち2種がブレンドされています。特徴はヒノキ張りのサウナを併設していること。源泉の熱を使った60度~70度の低温サウナで、じっくり体の芯まで温まります。いい汗をかいた後は、水風呂に入って爽快感も倍増です。
露天風呂のみの大浴場(旧「摩天風呂」)は、珍しいブルーの湯“すがわらブルー”で知られています。源泉に含まれるメタケイ酸のシリカ粒子の拡散現象で、時に温泉が青く見えるのだそう。なお、日帰り入浴時間中は、通常女風呂になっています。
露天風呂と内湯を備えた大浴場「美肌の湯」は、源泉に最も近く、湯の鮮度は一番なのだとか。とろりとしたなめらかな湯は全身をふんわりと包み込むようです。こちらは、日帰り入浴時間中、通常は男風呂になっています。

どの温泉に入るか迷うところですがそれぞれが魅力的。何度も足を運ぶ温泉ファンが多いというのも納得です。
日帰り入浴データ
[入浴時間]10時30分~17時(最終受付16時)
[露天風呂]あり
[貸切風呂]可
[レンタルタオル]あり(バスタオル330円)
[購入タオル]あり(フェイスタオル220円)
[サウナ・岩盤浴]あり
大江戸温泉物語 幸雲閣
6階の大浴場から美しい自然を一望



大江戸温泉物語 ますやと同グループが運営する幸雲閣。黒い湯の花が舞うという珍しい黒湯、乳白色が特徴的な白湯の2種の泉質を楽しめる施設で、そのうち日帰りで利用できるのは6階大浴場の「黒湯」です。
名前の通り黒色をした黒湯は、皮膚の角質を軟化して取り除き、肌をなめらかにする作用があるのだそう。ゆったりと湯に浸かりながら、ガラス張りの大浴場や、露天風呂から、里山の景色を眺め湯浴みをしましょう。日帰り入浴を夜の22時まで受け付けているというのも嬉しいポイント。黒い湯は窓からの景色を鏡のように映すので、夜には湯面が夜空と一体化したような感覚になりますよ。


入浴付きディナーバイキングプランでは、臨場感あふれるライブキッチンでバラエティに富んだビュッフェメニューを味わえます。「気仙沼ホルモン陶板焼き」や「気仙沼モウカザメのチリソース」、牡蠣を使用したパスタ、牡蠣フライなど宮城のご当地メニューがおすすめ。ますや同様、カニの食べ放題(紅ズワイガニ、またはトゲズワイガニの脚と爪のみの提供)も期間限定で実施しています(カニ食べ放題は、2025年3月31日まで開催予定。仕入れ状況により延長、または再開する場合あり)。
日帰り入浴データ
[入浴時間]15時~24時(最終受付22時)
[露天風呂]あり
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]あり(バスタオル220円)※入浴付ディナーバイキングプランはバスタオル付
[購入タオル]あり(フェイスタオル110円)※入浴付ディナーバイキングプランはフェイスタオル付
[サウナ・岩盤浴]なし
東多賀の湯
濃厚な乳白色の硫黄泉が心地よい


日帰り入浴でも利用できる、自炊施設を備えた昔ながらの湯治宿です。
男女別の浴室は、総ヒノキ造りの山小屋風で、乳白色の硫黄泉がこぢんまりとしたヒノキの湯船を満たしています。加水や加温をしない、湧き出たままの湯は驚くほど濃厚。加温していないため、日によって湯の温度は異なりますが、皮膚を刺激しやすい泉質は熱く感じやすいのだそう。掛け湯をするなどして体が慣れてしまえば、湯の肌ざわりはなめらかで、体の芯まで染み渡るような心地よい温泉です。なお、シャワーやカランといった設備は腐食するので設置していません。

湯上りの水分補給には、館内で販売しているミネラルウォーターがおすすめ。紅葉の名所として知られる鳴子峡の上流地下1000mから湧き出た天然の温泉をボトリングした、まろやかでクセのない味わいが評判です。お土産にまとめ買いしていく人もいるそうですよ。
日帰り入浴データ
[入浴時間]10時30分~14時30分(最終受付14時)
[露天風呂]なし
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]なし
[購入タオル]あり(フェイスタオル100円)
[サウナ・岩盤浴]なし
ホテル亀屋
クセになる重曹泉の黒湯を堪能できる



ホテル亀屋は鳴子温泉の温泉街入り口に建つ大型ホテル。1階に内湯と露天風呂、6階に展望大浴場があり、日帰り入浴では1階の風呂が利用可能です。
宿の名物は、黒湯と呼ばれる濃い茶色に見える温泉。独特の薬のような香りと黒い湯の花が特徴の重曹泉です。同様の泉質は東鳴子温泉エリアに多く、鳴子温泉では比較的少数派。天然の保湿成分であるミネラルを豊富に含む湯は、皮膚表面の余計なものを乳化し美肌が期待できる温泉として知られています。
内風呂のほか、開放感のある露天風呂もあります。特に、男性用露天風呂からは、JR陸羽東線が走る様子も眺められますよ。

注意点は、日帰りの入浴時間が12時から14時までと短めなこと。早めに訪れ、ゆっくり湯に浸かってくださいね。
日帰り入浴データ
[入浴時間]12時~14時※14時までに退出
[露天風呂]あり
[貸切風呂]不可
[レンタルタオル]あり(バスタオル330円)
[購入タオル]あり(フェイスタオル220円)
[サウナ・岩盤浴]なし
鳴子温泉 日帰り入浴マップ
1本の坂道沿いに温泉街が広がる鳴子温泉は、土地勘がなくても散策しやすい街。ホテル亀屋から高台の鳴子ホテルまで約20分と徒歩での移動も可能です。温泉街をそぞろ歩きしながら、いくつかの温泉の湯めぐりを楽しむのがおすすめです。
まとめ
鳴子温泉は泉質がさまざまなので、隣同士で色も温度も、酸性度も、異なることがよくあります。長い歴史のなかで各施設が守り継いできた、それぞれの温泉の素晴らしさをぜひ肌で感じてみてくださいね。
※この記事は2024年12月20日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。
※掲載の価格は全て税込価格です。
星 マチコ
東北・宮城県在住のライター、兼2人の子どもの母。見て、聞いて、触れて、温度感のある観光情報を発信中。雪山が好き。休日はマニアックで美しい絶景を求め、東北をあっちこっちさまよっている。