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2025.03.28

精進料理とは?使ってはいけない食材や食事の作法、おすすめ店など紹介<2025>

精進料理の由来から基礎知識、食べる際の作法を、和ごはん研究家の麻生 怜菜さん監修のもと解説。また精進料理を食べられるおすすめの店も紹介します。

精進料理とは、野菜や豆腐など植物性の食材のみで作った料理のこと。仏教の戒律を守る修行僧の食事として生まれ、今もお盆のお供え物に用意する家庭もあります。近年は、健康食でも好まれることがあるのだそう。気になる人は、ぜひ精進料理の店に足を運んでみてくださいね。

精進料理とは

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理とは、肉や魚などを使用しない料理です。仏教における戒律に基づき、「殺生(生き物を殺すこと)」を避け、「煩悩(人を苦しめ、煩わせる心)」を刺激しないために生まれました。

「精進」とは仏教用語で「美食や肉食を避け、粗食や菜食によって精神修養をする」という意味を持っており、精進料理は食材として「精進物」のみを使用するのが特徴です。精進物とは、肉・魚介類を用いない植物性の食材で、野菜類・穀類・海藻類・豆類・木の実・果実などを指します。

もともとは食べること自体が修行の一つでしたが、現在では四季折々の旬の食材を楽しめる健康食と捉える人も増えています。

精進料理の由来

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

中国から仏教が伝来した6世紀半ばごろ、一緒に日本に伝わってきたといわれている精進料理。

平安時代ごろまでは、現在のように厳密ではなく、魚や鶏を除く鳥は「禁の例に在らず(=食べることを禁止しない)」と但し書きをつけることもあったと伝えられています。

鎌倉時代になると、仏教の一派である禅宗の広まりと共に、肉類は一切食べてはならないという菜食のみの精進料理が徐々に定着し、一般の人々にも精進料理の考え方は広まっていったそうです。

精進料理の調理方法に関する心構え

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

仏教では、料理の準備や調理から、食事中のマナーや作法、後片付けまで、食にまつわる行動全般を修行の一環と捉えています。

禅宗のひとつ「曹洞宗」の開祖で、日本の精進料理の礎を築いたといわれる道元禅師は、食事を作る人の心構えを『典座教訓』という書物にまとめました。

その中では「食材に対する敬意を持つこと」「整理整頓を心がけ、道具を大切にすること」「食べる人の立場になって作ること」「手間と工夫を惜しまないこと」、そして料理をする上で「三心(さんしん)が大切であること」を説いています。

三心とは、「喜心(きしん)=作る喜びやもてなす喜び」「老心(ろうしん)=思いやりや気配り」「大心(だいしん)=偏りや固執のないおおらかな心」のことです。

さらに『典座教訓』では、調理方法や味付けに関しても次のような記載があります。

調理方法は、生・煮る・焼く・揚げる・蒸す、の5つ。味付けは、苦い・酸っぱい・甘い・辛い・塩辛いの「五味(ごみ)」に、素材の持ち味を生かすために薄味にする「淡味(たんみ)」を加えた「六味(ろくみ)」。そして色は、赤・白・緑・黄・黒の五色を基本に、ひとつの食材でも調理法や味付け、色の組合せによって、いろいろな料理が考えられるという内容です。

現在では、こうした細かなルールを全て実践しているところは少なくなっていますが、精進料理を調理したり食べたりする際は、心がけるべきことが多数あると覚えておきましょう。

精進料理の食べ方の作法

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

宗派や時代によっても異なるため一概には言えませんが、精進料理の基本的な作法として代表的なものを、具体的にいくつか紹介します。

まず、食べ物を口に入れたら箸を置き、不用意に音を立てないこと。目の前の食べ物と向き合い、食べることに集中するのも修行の一つだからです。そして、姿勢を正して座り、器は両手で丁寧に扱うこと。

こうした作法により、所作が美しくなり、食事に集中できて素材の味を堪能することにつながります。少しでいいので、日常に取り入れてみるのもおすすめですよ。

精進料理で使ってはいけない食材

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理には、使ってはいけない食材が大きく分けて2種類あります。

1つ目は、動物性の食材。肉、魚介、卵などのほか、バターやチーズ、牛乳といった乳製品も動物から摂取しているものなので、使わないのが基本です。

2つ目は、「五葷(ごくん)」と呼ばれる匂いが強い野菜。ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・ノビルなど、ネギの仲間のことを指し、欲情や怒りの心を起こすものとして禁じられているそうです。

精進料理の代表的なメニュー5選

野菜の煮物

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

季節の旬の野菜を使った煮物は、精進料理の代表的なメニューの一つ。動物性のかつおだしは使わないため、昆布や干し椎茸などで取った「精進出汁」で作るのが基本です。

ごま豆腐

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

ごま豆腐は、精進料理には欠かせない一品で、貴重な栄養源として重宝されてきました。名前に「豆腐」が入っていますが、大豆を使った豆腐とは異なり、胡麻をすりつぶして水で溶いた葛粉(くずこ)と混ぜ合わせて固めたものです。

野菜の天ぷら

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

野菜の天ぷらは「精進揚げ」とも呼ばれる精進料理の代表的なメニュー。よく使われる食材は、にんじん、れんこん、さつまいもといった芋類、椎茸などのきのこ類です。また、動物性の食品は使えないため、卵液(一般的に揚げ物で用いる卵)などは避けて調理します。

がんもどき

(画像提供:写真AC)
(画像提供:写真AC)

豆腐を潰して、ニンジンやごぼうなどの刻んだ野菜を混ぜ、油で揚げた料理です。“もどき”の名前がついているとおり、もともとは肉の代用品として作られたもの。大豆製品は重要なタンパク源であり、こうしたもどき料理にも活用されていました。

けんちん汁

(画像提供:ピクスタ)
(画像提供:ピクスタ)

精進料理の汁物として知られているのが、多くの根菜を煮込んで作られるけんちん汁。食材を無駄なく使えて、手軽に栄養を取ることができます。昆布や干し椎茸を使った精進出汁を基本に、清汁で仕上げることも、味噌仕立てで作る場合もあります。

精進料理を食べられるおすすめの店

高尾山薬王院【東京都】

(画像提供:高尾山薬王院)
天狗膳(3300円)※献立は仕入れや季節により変更あり

東京都心からのアクセスがよく、秋の紅葉をはじめ自然豊かな行楽地として多くの人が訪れる高尾山。その中腹に位置する「高尾山薬王院」では、境内の宿坊「大本坊」で精進料理を提供しています。

伝統を守りながらもより現代的に進化させた野菜料理が中心で、「天狗膳」と品数の多い「高尾膳」(4400円)の2コースから選べますよ。いずれも、希望日の2日前までに電話またはFAXにて予約が必要です。

(画像提供:高尾山薬王院)

食事をする部屋はすべて和室で、2名用の個室から団体向けの大広間まで、人数に合わせて様々なタイプが用意されています。

■高尾山薬王院
東京都八王子市高尾町2177
食事可能時間11時~14時※2日前までに電話またはFAXにて要予約
なし※正月期間は料理提供なし。詳細は公式HPを確認
ケーブルカー高尾山駅より徒歩約20分
あり(有料)
「高尾山薬王院」の詳細はこちら
「高尾山」の口コミ・周辺情報はこちら

(画像提供:高尾山薬王院)

高野山 宿坊 恵光院【和歌山県】

(画像提供:高野山 宿坊 恵光院)
竹御膳(5800円)

弘法大師・空海によって平安時代に開かれた高野山は、日本の仏教における一大聖地ともいわれています。そんな高野山にあるお寺内で精進料理をいただけるのが「高野山 宿坊 恵光院」です。

出汁も含め、動物性食材を一切使用せず、調理方法や味付けも昔ながらの方法を今も残しているのだそう。おすすめは、約10品が揃うスタンダードなコース「竹御膳」。肉や魚などは使用していませんが、しっかりした味付けでボリュームも申し分なしです。

(画像提供:高野山 宿坊 恵光院)

畳敷きの個室でゆっくりと料理を味わえるのも魅力。また、弘法大師・空海を祀る「奥之院」にほど近い場所にあるため、合わせて散策するのもいいですね。

■高野山 宿坊 恵光院
和歌山県伊都郡高野町高野山497
食事可能時間11時~13時※前日までに電話にて要予約
なし
高野山駅よりバスで15分/京奈和自動車道紀の川東ICより約45分
あり(無料)
「高野山 宿坊 恵光院」の詳細はこちら
「高野山 宿坊 恵光院」の口コミ・周辺情報はこちら

(画像提供:高野山 宿坊 恵光院)

泉仙 大慈院店【京都府】

(画像提供:泉仙 大慈院店)
ぼたん(6200円)

「泉仙(いずせん) 大慈院店」は、1963年より臨済宗大徳寺派の大本山「大徳寺」の境内で営業している、精進鉄鉢料理の店です。「鉄鉢」とは、僧が食物を受けるために用いた鉄製のまるい鉢のこと。鉄鉢をかたどった器で提供される料理が特徴です。

メニューは「ぼたん」、「あやめ」(3800円)、「ゆり」(4800円)の3コースから選択可能。四季折々の味覚を盛り込んだ、禅のこころと京料理の伝統を現代に生かした品々を堪能できますよ。

(画像提供:泉仙 大慈院店)

桜や紅葉など、季節の移り変わりを楽しめる景観も素敵です。和の雰囲気あふれる店構えや、店へと続く石畳の道は京都らしさを感じられます。

■泉仙 大慈院店
京都府京都市北区紫野大徳寺町4 大慈院内
11時~16時※6名以上は要予約
12月26日~31日
北大路駅よりバスで約7分/名神高速道路京都東ICより約30分
なし(近隣に有料パーキングあり)
「泉仙 大慈院店」の詳細はこちら

(画像提供:泉仙 大慈院店)

まとめ

修行や作法と聞くと少し敷居が高く感じる方もいるかもしれませんが、季節の旬の食材をじっくり味わえる精進料理は、身体にも心にもプラスになるはず。ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。

<監修者プロフィール>

和ごはん研究家 麻生 怜菜さん

和ごはん研究家
麻生 怜菜
1982年長崎県生まれ。全国を転々とした幼少時代を過ごす。旅行好きの両親の影響もあり47都道府県全ての地域食材、郷土料理食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺(調布市)であったことをきっかけに、寺の行事食に関わるようになり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味をもつ。日本の伝統食、特に精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、2011年より食文化発信の場「あそれい精進料理教室」を主宰。

現在は、日本大学生物資源科学部非常勤講師(日本食文化史/おいしさの科学)・フードアナリスト1級認定講師として、講師・講演活動もおこなう。日本食文化史・精進料理研究家として日本の伝統食の考え方やレシピを発信している。

主な著作は「寺嫁ごはん 心と体がホッとする“ゆる精進料理”」(幻冬舎)、「和食deワンプレートごはん」(タツミムック)、「おからパウダーでスッキリ腸活レシピ」(主婦の友社)ほか。
あそれい精進料理教室
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※この記事は2025年3月6日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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