訪れた温泉は約500、『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』という書籍も出版されている温泉オタクの永井千晴(ながち)さん。この記事では永井さんがこれまでに訪れた温泉の中から、“穴場でおすすめ”というスポットを紹介してもらいます。
毎月、穴場温泉の情報をお伝えしますので、いつか行きたいスポットとしてぜひチェックしてみてください。
※この記事は2021年9月24日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
東京から60分でたどり着く、アクセス抜群な温泉地・湯河原の「奥」
昭和14年創業。文人墨客に愛された、全13室の“純和風旅館”
飽きのこない柔らかで新鮮な温泉は、全ての湯船でかけ流し
ひとり旅ビギナーにも嬉しい朝夕部屋食。とにかく全部美味しい
東京から60分でたどり着く、アクセス抜群な温泉地・湯河原の「奥」
東京駅から電車で1時間ちょっと。さくっと行ける距離にある神奈川県・湯河原温泉は、アクセスが抜群に良いにも関わらず、落ち着いた雰囲気をまとった静かな温泉地です。箱根や熱海で楽しく過ごすのもいいけれど、湯河原でゆっくり滞在してみたい…と考える方も多いのではないでしょうか。


今回訪れたのは、湯河原駅からタクシーで10分のところにある老舗旅館「加満田」。奥湯河原温泉と呼ばれ、高級・老舗・隠れ家的な旅館が軒を連ねる大人なエリアです。加満田はその中でも比較的に泊まりやすく、おすすめしやすい温泉旅館。昨年、ワーケーションも兼ねてプライベートで泊まってきました。
昭和14年創業。文人墨客に愛された、全13室の“純和風旅館”

加満田は昭和14年(1939年)創業の老舗宿。小林秀雄・水上勉をはじめとした多くの文人墨客に愛され、作家の「缶詰め」発祥の宿と言われています。小林秀雄は30年近くお正月を加満田で過ごしたそう。

温かくスタッフのみなさまに迎え入れられ、14時半にチェックイン。全13室の客室は、それぞれ“諸先生方”に命名していただいたのだとか。一室一室の景色やレイアウトが異なるというのも、何度も通いたくなる理由のひとつです。



清潔で高級感のある客室は、シンプルで広々としており、ひとりで過ごすにはもったいないほどの居心地よさ。大きな窓からは、手入れの行き届いた庭が臨めます。ちなみに滞在した「川蝉」は1~2名の予約向けで、ほかのお部屋は絨毯敷の広縁もあるそうです。それぞれ趣が異なるという、一部屋ずつの個性をもっと知りたくなります。
お昼ごはんを食べそこねていた私は、無理を言っておにぎりをひとつオーダー。快く引き受けてくださり、客それぞれへのおもてなしを感じました。
加満田の最高にして最大のワーケーションにおすすめな理由は、全室でフリーWi-Fiが利用でき、その回線がサックサクだということ。時折、宿によってはWi-Fiが遅かったり、うまく使えなかったりすることがありますが、まったく問題ありません。
飽きのこない柔らかで新鮮な温泉は、全ての湯船でかけ流し

仕事の合間に、大浴場へ体を温めにいきました。
たゆたゆに満ちた大きな湯船には、約42℃の自家源泉が少し加温されて注がれています。もちろんかけ流しで新鮮そのもの。泉質は「カルシウムー硫酸塩泉」で、外傷や美肌によいと言われています。ほどよく重みがある飽きのこない浴感で、たっぷり楽しめました。
温泉マニアの視点でとてもすばらしいなと思ったのが、
1)洗面の蛇口もすべて温泉を使用していること
2)温泉の吐水口が湯船の中にあって、水流の音を抑えていること
の2点。
豊富な湯量を惜しむことなく蛇口からも温泉が出てくるのは、温泉マニア垂涎の設備。東京から近い奥湯河原で出会えるとは、とっても感激でした。
そして2も、とても療養に配慮した設備。通常、吐水口は湯船の外にあって、どばどばと注がれているもの。それが湯船の中にあると、浴場全体がとても静かになります。
静かな浴場は、それだけで癒やし効果抜群。奥湯河原へのんびりしに来たお疲れの方にもおすすめできると思いました。

そして、滞在中に絶対に浸かっておきたいのが、予約不要の貸し切り露天風呂。岩造りで庭に対してひらけており、開放的です。夜に行ってみると、ライトアップされた庭を鑑賞しながら浸かれました。
ひとり旅ビギナーにも嬉しい朝夕部屋食。とにかく全部美味しい

加満田は朝夕すべて部屋食でした。ひとり旅ビギナーの方でも、周囲に気を遣わずにのんびり食事を楽しめます。ご時世的にも、密を避けて滞在できるのも◎。
食事はもう、とにかく全部美味しかったです。夕食は酒飲みが好むような逸品が揃っていて、私も日本酒がどんどん進んでしまいました。先付・前菜にあった「柿ナマス胡麻和え」「焼カラスミ」「牡蠣味噌煮」「鮭南蛮漬」…うーん、たまりません。
料理は地元の野菜や魚介類を使ったものばかりで、いずれも上品な仕上がりでした。私が訪れた11月は、マナガツオの柚香焼と、蕪と豚角煮がメイン。一粒一粒が生きているような美味しいお米で、たっぷりお腹を満たしました。

仕事の都合で早めにチェックアウトしなければいけない私に、少し早めに朝食を用意してくださいました。慌ただしいワーケーションの客にも、ものすごく気を遣ってくださり、大変ありがたかったです…。
ワーケーションにも、癒されたい都民の駆け込み宿にも

都内からほど近い距離にある旅館ながら、温泉も食事も滞在も大満足の1泊2日でした。高級宿ではありますが、交通費や移動時間を考えれば、都民のひとり通い宿としてよさそう。
ワーケーションでの滞在も、じっくり心身を休めたい都民の駆け込み宿としてもおすすめ。温かくもてなしてくださり、作家たちが逗留したくなるような居心地の良さが脈々と受け継がれていると感じました。
\過去の記事はこちら/
“ひとり温泉”を楽しむ特集一覧
■プロフィール

永井千晴(ながち)
温泉オタクな会社員。訪れた温泉は約500。元じゃらん編集部員。
Twitterアカウント @onsen_nagachi
『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』

2020年11月26日発売。訪れた温泉は約500湯。ヒマさえあれば女ひとりで温泉を巡りまくっている「温泉オタク会社員」による温泉偏愛エッセイ!つぶやくと同時に6.8万RTされた「東京・大阪から1泊2日で行けるお勧め温泉チャート」付き
書籍の情報はこちら
https://www.gentosha.co.jp/book/b13386.html
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永井千晴(ながち)
温泉オタクな会社員。訪れた温泉は約500。元じゃらん編集部員。 Twitterアカウント @onsen_nagachi