青くきらめく瀬戸内海の絶景で知られるJR予讃線。海が見える駅として知られる「下灘駅」や多島海ならではの車窓が美しく、「伊予灘ものがたり」や「アンパンマン列車」といった観光列車も運行する人気路線です。瀬戸内海の穏やかな風景を満喫した後は、内子のノスタルジックな街並みなど、のどかな絶景を訪ねてみませんか。
香川県・愛媛県の2県をまたぐJR予讃線


四国北部、香川県・愛媛県の2県を東から西へまたぐようにして走るJR予讃線。香川県高松市の「高松駅」から愛媛県松山市の「松山駅」を経て、愛媛県宇和島市の「宇和島駅」へと至る、四国一長い鉄道路線です。
JR予讃線は、“愛ある伊予灘線”の愛称を持つ海周り区間の海景色がよく知られていますが、のどかな田園風景やミカンの段々畑、宇和海沿岸の風景と見どころはさまざま。海、川、山、そして街と変化に富んだ車窓の眺めが楽しめます。
瀬戸内海への島々への玄関口となっている高松、道後温泉にほど近い松山、今治タオルで知られる今治と、観光の拠点でもある都市を結び、四国観光には欠かせない路線といえるでしょう。
ここでは、JR予讃線ならではの絶景が楽しめる、予讃線南西部の区間の魅力を順に紹介していきます。
瀬戸内海沿い区間の美しさは必見!


見渡す限り続く穏やかな海面、そこにぽこぽこと浮かぶ緑の島々…。のどかな海景色は、瀬戸内海ならではの光景です。「高松駅」方面からは、「海岸寺駅」~「詫間駅」間、「浅海駅」~「大浦駅」間、「伊予市駅」~「伊予大洲駅」の“愛ある伊予灘線”などで、真っ青な海と空の光景が楽しめます。
遮るもののない海が広がる「下灘(しもなだ)駅」

JR予讃線で伊予灘沿いを走り、“愛ある伊予灘線”と呼ばれる区間。その無人駅「下灘駅」は、鉄道ファンならずとも一度は訪れたい絶景駅です。高台に位置するホームの先には、どこまでも広がる瀬戸内の海と、瀬戸内海の島々が描く柔らかな島影が広がっています。
数々の映画やドラマのロケに登場した「下灘駅」は無人駅ながら、休日は多くの観光客で賑わう駅。ホーム周辺には、四季折々の花々が咲き誇り、フォトジェニックな景観を一層盛り上げています。


真っ青な空と海が楽しめる日中以上に人気なのが、夕景。タイミングを図って多くの観光客が訪れます。辺りが黄金色に染まる頃、どこからともなく人が集まり、しばし夕陽と潮風に浸るひと時を過ごしています。
「下灘駅」と同じく“愛ある伊予灘線”にある「喜多灘駅」もおすすめ。「喜多灘駅」のホームには、桜の木が植えられており、春にはホームいっぱいに咲き誇る桜と、美しい瀬戸内海の眺めを堪能することができます。
大洲城を見るならここから!「伊予大洲駅」

“愛ある伊予灘線”を走った列車は、しばらく内陸を走行。「伊予大洲駅」を発車してすぐ、肱川を渡る鉄橋付近でぜひ注目してほしいのが、「大洲城」です。肱川のほとりに建つ4階4層の天守は2004年、伝統工法によって藩政時代の姿に復元されました。「伊予大洲駅」から徒歩20分ほどでアクセスできるので、“伊予の小京都”として親しまれる城下町と合わせて散策するのもおすすめです。
さほど近くはないものの、車窓から見る大洲城は周囲の情景と相まって、かなり風情があります。「列車内から見る大洲城が最も美しい」という人もいるほどです。
観光列車「伊予灘ものがたり」の八幡浜編、道後編に乗車すれば、通過に合わせて大洲城職員や観光客による力強い旗振りを見ることができます。

3月下旬~4月上旬に訪れれば、満開のソメイヨシノと大洲城のコラボレーションを楽しむことができますよ。
田んぼのなかのマンモス像にびっくり!

JR予讃線の海絶景というと瀬戸内海のイメージが強いですが、「下宇和駅」から終点の「宇和島駅」へ至る間には、宇和海とリアス式海岸の風景も見られます。
このあたりの車窓のクライマックスは、「双岩駅」~「伊予石城駅」間で見られる「わらマンモスとわらぐろ群」。青々とした田んぼのなかに突然あらわれるマンモスアートは、宇和町のシンボル的存在です。「伊予石城駅」から徒歩3分の位置にあるので、気になる人は下車して、見に行くのもよさそう。冬にはマンモスのライトアップも行われる予定です。
香川県高松市浜ノ町1-20(JR高松駅)~愛媛県宇和島市錦町10-1(JR宇和島駅)
JR予讃線運賃(高松駅~宇和島駅)5330円、自由席特急券2420円 ※子ども半額
「JR予讃線」の詳細はこちら
(画像提供:JR四国)
伊予灘の絶景と愛媛グルメに浸る、観光列車「伊予灘ものがたり」


「松山駅」~「伊予大洲駅」・「八幡浜駅」を運行する観光列車「伊予灘ものがたり」。こちらは“大切な人と過ごす時間と空間”というコンセプトのもと、2022年4月に車両を全面リニューアルしました。伊予灘の夕焼け空を連想させる1号車「茜の章」、太陽や柑橘類の輝きを表現した2号車「黄金(こがね)の章」に続き、新たに登場した貸切車両である3号車「陽華(はるか)の章」が走ります。


3両編成の車内は、海を望む展望席や4名まで利用できるボックス席を設えたレトロモダンな落ち着ける空間。3号車「陽華の章」は、なんと2名~8名で車両を貸切することができます。
「伊予灘ものがたり」は1日4便の運行。朝の海を眺めて過ごせる「大洲編」から、海に沈む夕陽に出会える「道後編」まで、運行時間と発着場所が異なる4コースから選べます。




乗車のみも可能ですが、せっかくなら瀬戸内海・伊予灘の穏やかなきらめきを前に、愛媛のグルメも楽しみたいところ。写真上から旬の野菜たっぷりのモーニングが味わえる「大洲編」、愛媛県産の旬の食材を中心とした和洋折衷料理を内子杉の木箱で提供する「双海編」、松山の老舗が手掛けるフレンチが楽しめる「八幡浜編」、愛らしいスイーツが砥部焼のお重で用意される「道後編」と、行き先と時間帯に合わせて料理の趣が異なります。
※メニュー内容は季節や天候により異なります。
一つのコースを楽しむのもよいですが、往復で乗車するのもおすすめ。例えば往路の「八幡浜編」でランチ、復路の「道後編」でアフタヌーンティーを味わってみては?
<伊予灘ものがたり>
[運行区間]松山駅~伊予大洲駅、松山駅~八幡浜駅
[運行日時]土日祝を中心に各コース1日1便運行 ※運行日は公式HPより確認を
大洲編:松山駅発8時26分~伊予大洲駅着10時28分
双海編:伊予大洲駅発10時57分~松山駅着13時01分
八幡浜編:松山駅発13時31分~伊予大洲駅着15時12分~八幡浜駅着15時50分
道後編:八幡浜駅発16時14分~伊予大洲駅発16時33分~松山駅着18時17分
[予約方法]全国のみどりの窓口にて乗車日1カ月前より販売開始
大洲編(松山~伊予大洲)3670円+「朝のひとときを味わう旬彩モーニング」3000円
双海編(伊予大洲~松山)3670円+「内子杉の木箱で彩る和杉膳(わさんぜん)」5500円
八幡浜編(松山~八幡浜)4000円+「門田フレンチ~伊予灘ミニコース~」5500円
道後編(八幡浜~松山)4000円+「伊予灘の菓織箱(かおりばこ)・アフタヌーンティーセット」3500円
※3号車「陽華の章」に乗車の場合は、利用人数分の運賃・特急料金のほか、グリーン個室1室2万8000円が必要(定員8名、2名以上から利用可能)
※食事は要事前予約
「伊予灘ものがたり」の詳細はこちら
(画像提供:JR四国)
わくわくいっぱい!アンパンマン列車に乗ろう

高知県出身のやなせたかし氏にちなみ、四国を走るアンパンマン列車は現在、計6種類運行。そのうちJR予讃線を運行するのは、虹のデザインが可愛い「予讃線8000系アンパンマン列車」、アンパンマンとばいきんまんの大きな顔が描かれた2両が走る「予讃線宇和海アンパンマン列車」です。

「予讃線8000系アンパンマン列車」の特徴は、なんといっても楽しいレインボーカラー! 特急「しおかぜ」もしくは「いしづち」として運行します。1号車に16席設けられた普通車指定席のアンパンマンシートは、まさに虹の座席そのもののカラフルさです。


空をイメージした車内デッキ、ドキンちゃんがキュートな洗面台、そしてトイレにいたるまで、なんとも楽しいアンパンマンワールドが広がっています。運行区間は「岡山駅」あるいは「高松駅」~「松山駅」。グリーン車の車内は、外観のラッピングのみでアンパンマンの装飾はないので、予約時は注意が必要です。

「松山駅」~「宇和海駅」を運行する「予讃線宇和海アンパンマン列車」は、大きく元気なアンパンマンとばいきんまんの顔が特徴。たくさんのなかまたちがデザインされた列車です。車内にアンパンマンシートはありませんが、天井にアンパンマンのなかまたちが描かれていますよ。
どちらのアンパンマン列車も運行情報は、2カ月前の月末からJR四国の公式ホームページにて公開。急な変更もあるため、乗車前には必ず最新情報をチェックしましょう。
<予讃線8000系アンパンマン列車・予讃線宇和海アンパンマン列車>
[運転区間]予讃線8000系アンパンマン列車:松山駅~岡山駅・高松駅
予讃線宇和海アンパンマン列車:松山駅~宇和島駅
[運行日時]運行日は公式HPより確認(2カ月前の月末より公開・公開後に変更あり)
[予約方法]全国のみどりの窓口および公式HPより、乗車日1カ月前より販売開始
予讃線8000系アンパンマン列車(松山~高松):運賃3560円+指定席特急券2730円(繁忙期200円増し、閑散期200円引き)※子ども半額
予讃線宇和海アンパンマン列車(松山~宇和島):運賃1830円+指定席特急券1730円(繁忙期200円増し、閑散期200円引き)※子ども半額
「アンパンマン列車」の詳細はこちら
(C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
(画像提供:JR四国)
予讃線を訪れるのにおすすめの時期は?
予讃線の運行区間は、穏やかな瀬戸内海沿いのエリアが中心。愛媛県は晴天率が高く、晴れが多い県といわれ、他県と比べても日照時間が長い地域です。夏の暑さはどこか爽やかで冬の積雪はほとんどなく、寒さもそこまで厳しくありません。そのため、予讃線は一年を通して楽しめる路線です。
一方で、愛媛県らしいみかん畑の風景が見たいなら、10月頃~5月・6月に訪れるのがおすすめ。この時期、愛媛はさまざまな柑橘類の収穫シーズンを迎えます。みかん畑だけでなく、一般のご家庭で作っているところもあるので、沿線の至るところで柑橘類の実りが見られますよ。
予讃線で訪れたい絶景スポット
別子銅山・東平(とうなる)/JR新居浜駅

約280年の歴史を持つ別子銅山の跡地で、標高750mの山中にある産業遺産。全長333mの観光坑道や砂金採り体験ができる「端出場ゾーン」、「端出場ゾーン」より定期観光バスツアー(11時・13時出発)で探訪できる「東平ゾーン」があります。
「端出場ゾーン」では、カゴ車や人車まで再現された「鉱山観光列車」に乗って観光坑道へ。観光坑道ではリアルな再現人形で別子銅山の歴史が垣間見られます。ほか「別子温泉~天空の湯」や「レストラン もりの風」、お土産処を備えた複合施設「マイントピア別子本館」もあります。


東平地区は、“東洋のマチュピチュ”と称されるほどの美しさ。遊歩道が整備され、索道停車場跡や鉱石の保管庫などを散策できます。
※東平地区は現在、落石の影響による通行路の閉鎖により、一般車両での見学とバスツアーを休止中。通行止めが解除となり次第、公式HPにて再開の告知あり。
愛媛県新居浜市立川町707-3(端出場ゾーン)
端出場ゾーン9時~17時(各施設により変動あり)、東平ゾーン10時~17時
端出場ゾーンなし(2月に臨時休業あり)、東平ゾーンなし(12月~2月は閉山)
入場無料、東平ゾーンへの定期観光バスツアーは中学生以上1350円
【列車】JR新居浜駅よりせとうちバス20分(端出場ゾーン)
「別子銅山・東平」の詳細はこちら
(画像提供:(一社)愛媛県観光物産協会)
ふたみシーサイド公園「道の駅ふたみ」/JR伊予上灘駅


真っ白な砂浜に、海と空のブルーが織りなすコントラストが美しい絶景の公園。夏は海水浴場として賑わうほか、夕景が美しい公園としても知られ、日本の夕陽百選に選ばれています。砂浜の中央、海に向かって突き出ている恋人岬にあるのは、夕陽のモニュメント。海一望のレストランのほか、土産物店や魚介を販売する店もあります。
(画像提供:ふたみシーサイド公園「道の駅ふたみ」)
八日市(ようかいち)・護国(ごこく)の町並み/JR内子駅

江戸後期から明治にかけて、ハゼノキから製造する木蝋(もくろう)の生産によって栄えた内子。その面影を色濃く残しているのがこちらです。約600mほどの通りに軒を連ねるのは、浅黄色の土壁と漆喰の装飾に彩られた町家や豪商の屋敷。その温かみある色彩がノスタルジックな情景をつくり、夕暮れ時に散策していると、タイムスリップしたかのような気分に浸れます。歴史ある建物を活かしたショップやカフェを巡りつつ、のんびりと過ごせます。
(画像提供:内子町観光協会)
※この記事は2022年6月22日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
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梶本 愛貴
長野県出身。おもに旅や鉄道、書籍などの記事を書いています。 旅はぼーっとするのが好き、列車は乗るのが好き、温泉は万座や草津など強めの湯が好きです。大人になって改めて感じた旅や列車の面白さをお伝えしていきます。