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2022.08.09

日本の懐石料理とはどんな料理?会席料理や割烹との違いや料理の順番などを紹介!

宿泊施設の料理や和食処などでよく耳にする“カイセキ料理”という言葉。「懐石」と「会席」のどちらが正解なの?と思っている人も多いのでは?

そこで、気になる“カイセキ料理”について、懐石と会席の違いや割烹との違い、メニューの順番と読み方、さらに知っておきたい和食のマナーまで、公益社団法人日本料理研究会の会長・三宅健介さんにお話を伺いました。

事前に知って、ぜひ食べに行ってみてくださいね。

※この記事は2022年7月29日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。

記事配信:じゃらんニュース

「懐石料理」とはどんな料理?

五感で味わう日本料理の真髄

懐石料理

料亭の茶室などで味わえる、季節を感じる食材を使ったコース料理が「懐石料理」です。茶道に関わる人以外に、一般的にはあまり馴染みのない料理といえます。
 
その内容は、温かく十分に調理された料理が適当なタイミングで提供されるなど、美味しく食べてもらう事を目的にしたスタイルです。目でも舌でも楽しめる一皿一皿が順番に提供され、和食の真髄が息づいているものとも言われています。

そんな懐石料理とはどのようなものなのか、詳しくひもといていきましょう。

「懐石料理」の由来と歴史

安土桃山時代に生まれた茶の湯のための料理

懐石料理一例
 

懐石料理一例
懐石料理一例

懐石料理の起源は日本の禅宗にあります。安土桃山時代に、寺の僧侶たちが修行中に食べていた質素な食事が発展したものと伝えられています。

当時、一日一度の食事だった修行僧が、空腹を感じた時に、自身の懐に温かい石を抱いて空腹感を和らげたことから「懐石」と名付けられました。

懐石料理は、お茶をいただく前に食べる軽い食事という意味を持ち、客が集まって抹茶を点てて飲むという「お茶会(茶の湯)」に、この懐石料理を持ち込んだのが千利休と言われています。軽く食べておいた方が濃茶(たくさんの抹茶を使ったドロリとした濃厚なお茶)を美味しくいただけるという理由から、お茶の前に出される料理という位置付けだったのです。

懐石料理の中でも、特にお茶会のための料理を「茶懐石」と呼びます。

「会席料理」や「割烹」との違いは?

懐石と会席との違い。3つの特徴

会席料理一例
会席料理一例

同音異義語でよく混同されがちですが、大きく異なる3つの特徴があります。

一つ目は、料理の目的です。懐石料理の目的は「“お茶”を美味しく味わう」ためのものです。一方、会席料理の目的は「“お酒”を美味しく味わう」ためのもので、品数も懐石料理より多い傾向にあります。

二つ目は、料理が出される場所です。懐石料理は茶室で提供されるのに対し、会席料理は料亭や宴席で出されます。

最後は提供される料理の順番です。懐石料理では、まずご飯、汁、向付(むこうづけ)が出されますが、会席料理ではご飯や汁物は最後になります

「割烹(かっぽう)」とは?

割烹
割烹料理店イメージ

割烹料理とは、カウンター形式の店舗で食べる料理。客はカウンターから直接注文し、料理人がその場で調理したものを一品ずつ提供するもので、決まった順番通りに食べる懐石料理とは異なります。料理の順序は会席料理と原則同じです。

「割」は、包丁で切るという意味で、「烹」は煮たり焼いたりして火を通すことを意味しています。

「懐石料理」の食べる順番と、メニューの読み方・意味

懐石料理
懐石料理

懐石料理は、もともと茶の湯の席で、お茶を楽しむ前に来客をもてなすための料理です。基本は一汁三菜。その内容を一つ一つ見ていきましょう。

1.折敷(おしき)

折敷

懐石料理で最初に出てくる「お膳」のことです。ここにはご飯、汁、向付(むこうづけ)の3品が並びます。

向付とはお膳の配置で、ご飯と汁の両椀に対して、「向こう側に付ける」という意味で付けられています。なますや刺身が盛り付けられることが多いです。

2.椀盛(わんもり)

椀盛

煮物椀とも言われ、塗り椀を用いた煮物が提供されます。野菜、肉、魚、麩、しんじょなどを彩りよく盛り、汁をかけたものです。主にすまし汁仕立てにすることが多いのが特徴です。

3.焼き物

焼き物

主に焼き魚が提供されます。一つの皿に人数分が盛り付けられており、食べる分を取り箸で分けるのが正式なマナーです。

現在では骨を取り除いた魚の切り身が出されることがほとんどです。

4.預け鉢

預け鉢

鉢肴とも言い、いわゆるご飯のおかずです。炊き合わせや酢の物などが一般的です。

5.強肴(しいざかな)

強肴

焼き物までで一汁三菜となり、ひとまずはここで終わりになりますが、少し物足りない時に「強いてもう一品勧める肴」です。「進肴」とも言われ、主に炊き合わせや酢の物が出されます。

6.吸い物

吸い物

背が高めの小さな蓋付きの椀に入れて出されます。吸い物で口の中や箸を清めるという意味があり、「箸洗い」または「すすぎ汁」とも呼ばれます。

7.八寸

八寸

一辺が八寸(約24cm)の杉の器などに盛り付けられたことからこう呼ばれるようになりました。海の幸と山の幸で作られた、それぞれの肴を盛り付けることが一般的です。

8.湯桶・香の物(ゆとう・こうのもの)

湯桶・香の物

懐石の締めくくりです。

湯桶は炒り米やおこげに湯を注いで、少量の塩を加えたり、湯漬けにしたりしていただくもの。香の物は漬物のことです。

9.主菓子・濃茶(おもかし・こいちゃ)

最後に出されるのがお菓子とお茶です。主菓子とは濃茶の味を引き出すための生菓子で、茶道ではお馴染みの和菓子です。濃茶はたくさんの抹茶を使ったドロリとした濃厚なお茶です。

「会席料理」の食べる順番と、メニューの読み方・意味

会席料理

続いて「会席料理」の内容を見ていきましょう。

お酒を美味しくいただくための食事で、料理の順番が違う以外に、揚げ物などの油料理などが出ることも特徴です。

1.先付け(さきづけ)

先付け

最初に出る料理で、お通し・突き出しにあたります。旬の食材を使い、お店ごとに創意工夫を凝らした一品が提供されます。

2.お凌ぎ(おしのぎ)

お凌ぎ

「空腹を凌ぐ」という意味を持つ料理です。空腹でお酒を飲むと酔いが早く回り、それを防ぐために先付けの後にお腹を少し満たしてくれる炭水化物をメインにした料理が少量出されます。

1・2貫ほどの寿司や小ぶりのそばなどが出されることが一般的です。

3.椀物(わんもの)

椀物

吸い物です。「箸洗い」・「口すすぎ」という意味があり、次の料理に向けて口の中をリセットすることが目的です。他にもその店の出汁や味付けの基本をお客様に伝えるという目的もあります。

吸い物はシンプルな料理なので、出汁や味付けの具合が顕著に出ます。それため、お客様にこれから続く料理への期待を膨らませるものでもあります。

4.向付(むこうづけ)

向付

元は「懐石」で使われる用語ですが、主に刺身を出す時に使われています。旬の魚をお造り(刺身)にしますが、昆布締めにして魚の旨味を引き出すなど、手間をかけたものもあるのが特徴です。

5.煮物

煮物

旬の野菜を使った煮物です。食材の味を最大限に引き出すため、煮る工程で別々に調理し、一つの器に盛り付けることから「炊き合わせ」とも言われています。

「椀物で店の出汁や味付けを知り、炊き合わせで評価が決まる」とも言われています。

6.焼き物

焼き物

旬の魚を使用した焼き魚が多いのですが、店によっては肉の場合もあります。焼き物は、華やかな盛り付けも特徴で、もみじや松などがあしらわれ、目でも楽しむことができます。

7.強肴(しいざかな)

強肴

もともと「懐石」で使われる言葉ですが、懐石と同じく「強いてもう一品すすめる肴」という意味があります。出される料理は決まってはいませんが、おもに酒に合うような揚げ物や和え物、珍味が多く、店によっては「預け鉢」や「進め鉢」と呼ぶこともあります。

8.ご飯・香の物(こうのもの)・留め椀(とめわん)

ご飯・香の物・留め椀

締めの料理です。ご飯は店によっては炊き込みご飯や小さな丼を出すところもあります。香の物は漬物、留め椀は赤だしや味噌汁です。

9.水菓子・甘味

水菓子・甘味
口の中をサッパリしてくれるもので、水菓子は果物を指し、店によってはアイスクリームやシャーベット、趣向を凝らしたデザートなどの甘味の場合もあります。

気を付けたい和食のマナー

お箸のマナー

食事中、お箸を使わない時は、箸置きに置くのが基本。お椀や汁物の器の上にお箸を置くのはやめましょう

箸袋がある場合は、食事が終わったら箸袋に戻し、端を折って使用済みであることがわかるようにすると良いと言われています。ただし、厳格なルールではないので、相手に不快感を与えないようにすれば良いぐらいに考えておけばいいでしょう。

お椀や汁物の蓋(ふた)のマナー

蓋は裏を上にして料理の奥に置きます。奥に置くスペースがない時は、横に置いても大丈夫です。

食べ終わった時には、蓋を元通りにするのがルールです。

料理屋で使う塗りのお椀などは高価な物も多く、蓋を重ねると傷つけてしまいます。また、塗りの器に金属のスプーンを使うのも傷をつけてしまいますので、気をつけましょう。お椀を大切に扱うことを念頭に入れておきましょう。

手に持っていい器

お椀や小鉢はもちろん、刺身のしょうゆ皿も持ち上げて口元に運ぶのはOKです。刺身の皿や大鉢の皿などは手で持ってはいけません。また空いた手をお皿代わりに添えるのは実はNGです。

ちなみに、煮物の器に残った煮汁は、口をつけてすべて飲んでも構いません。せっかくの美味しいお出汁ですから、すべていただきましょう。

焼き魚の食べ方

下身を食べるときに裏返すことはやめましょう。中骨を外して皿の奥に置いてから下身を食べます。骨越しに下身をつついて食べるのもマナーに反しています。

たまに、お箸を左右の手に一本ずつ持って身をほぐす人を見かけますが、これも控えた方がいいでしょう。

お造りや天ぷらの食べる順序

お造りは白身から赤身へ、天ぷらは野菜などの淡白なものからアナゴなどの濃厚なものへ、と言われています。素材の味がわかりやすいからというのが理由ですが、厳格なルールではありません。

まとめ

敷居が高い「懐石料理」。気軽にその世界観に触れるなら「松花堂弁当」で

懐石料理について見てきましたが、お茶室でいただくなど、あまり機会のない敷居が高い料理という印象が強いものです。

しかし、身近な懐石料理もあるんです。それが「松花堂弁当」です。松花堂弁当は略式の懐石料理と言われ、懐石料理の定石に従った配置になっています。まずは松花堂弁当で、懐石料理に触れてみるのもいいかもしれません。

今回「懐石料理」についてお話を伺ったのは
公益社団法人日本料理研究会
会長 三宅健介さん
日本料理研究会プロ向けレシピ検索サイト
日本料理研究会 公式ホームページ

※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。

真下智子  真下智子

温泉好き、旅好きの二児の母。夫の仕事の関係で、青森から鹿児島、シンガポールと、様々な土地で生活する。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉観光実践士の資格をもつ。

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