酒田ラーメンや鶴岡ラーメンなど美味しいラーメンが軒を連ねる山形県庄内エリア。ラーメンに精通する“ラーメン官僚”こと田中一明さんが「本当に美味しい」と太鼓判を押すおすすめ店を厳選してご紹介!さらに、首都圏でも脚光を浴びているという庄内のラーメンの特徴や魅力も教えてもらいました。
※この記事は2020年12月25日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
記事配信:じゃらんニュース
山形県庄内エリアのラーメンの魅力とは?

人口県内第2位の鶴岡市、同第3位の酒田市の2大都市を擁する庄内地方は、山形県の総人口の約1/4を抱える一大経済圏。同地方はその西側が日本海に面し、食文化的に海産物と縁が深いこともあり、昔から、煮干し等の魚介素材から出汁を採ったラーメンが好んで食されてきたところである。
また、同地方が提供するラーメンの大きな特徴として挙げられるのは、とにかく1杯当たりの麺の分量が多いこと。もちろん例外はあるが、一般的に、ラーメンの麺量は、日本列島を西へ向かうほど減り、東へ向かうほど増える傾向がある。そんな、麺量が相対的に多い東日本の中でも、とりわけ麺量が多いのが、庄内地域のラーメン。
余談になるが、庄内のラーメンの麺量が多いのは、麺を自家製でまかなう店舗が多いことが大きな要因のひとつではないかと考えている。自家製麺であれば、ひと玉の麺量を店側の裁量で設定できるし、概して、製麺所から卸すよりも安い価格で麺を提供することができるからだ。
さらに、麺にじっくりと熟成を掛ける店舗が少なくないのも、庄内地域のラーメンシーンの特徴だと思う。芳醇な香りを放つ熟成麺が、うま味豊かな魚介ベースのスープと阿吽の呼吸を奏でる。「麺とスープの馴染みが良い」。これは、同地域のラーメンを食べているときに抱く感覚としては、決して珍しくないものだ。
庄内のラーメンは今、同地に本店を構える店舗の支店や、その味をインスパイアした店舗が好評価を軒並み獲得。首都圏でも脚光を浴びつつある。今回の特集では、そんな庄内のラーメン店の中から、特におすすめに値する実力店を選りすぐってご紹介する。ご興味がおありの方は是非、一度足を運んでみていただきたい。
中華そば雲ノ糸【鶴岡市】
煮干し&打ち立て自家製麺。庄内らしい1杯が満喫できるエース級新鋭店

庄内エリアは、東北でも指折りのラーメン王国・山形県の中でも1、2を争うラーメン激戦区として名を馳せる、ラーメンマニアにとってのパラダイス。
そんな激戦区において、数ある老舗実力店と互角以上に渡り合い、2017年7月の開業からわずか数年で頭角を現した新進気鋭店が、『中華そば雲ノ糸』だ。
まず召し上がっていただきたい1杯は、基本メニューである「煮干し中華」。
数種類の煮干しや昆布から、出汁を採ったスープは、ひと啜りで、唾液腺から無際限にアミラーゼを噴出させるフルボディの味わい。
合わせる麺は、専用の製麺機を用いた打ち立ての自家製。好みに応じて太麺と細麺から選択することができるが、スープを力強く持ち上げる太麺がおすすめ。
強力粉を用いた極太縮れ麺は、ワシワシとした食感が、瞬時に食べ手のハートと胃袋を捉える逸品。
訴求力と味の良さとを兼ね備えたメニュー群が、着実に食べ手からの支持を集め、今般(2020年12月)、いよいよ庄内を越え、県都・山形市に待望の4号店(『山形あかねヶ丘店』)をオープン。訪れる客が絶えない上々の滑り出しを見せている。
田代食堂【鶴岡市】
山あいの名店。群を抜く清湯スープと手揉み麺の相性の良さから垣間見える、老舗の底力

創業は昭和51年(1976年)。開業から45年を数える堂々たる老舗である『田代食堂』は、風光明媚な風景が目を惹く山あいの地にポツンと佇む実力店。
ロケーションは、最寄り駅(JR鶴岡駅)から数km。率直に申し上げて、公共交通機関と徒歩でアクセスできる場所ではなく車が必須となるが、提供される「中華そば」のレベルの高さに、日々、訪問客が絶えない賑わいを見せている。
同店が手掛けるメニューは、「中華そば」及びそのバリエーションのみと、少数精鋭。
鶏ガラ・豚骨・焼干し等から丁寧に出汁を採ったスープは、透明度が高い清湯系でありながらうま味の輪郭が明確で、レンゲを持つ手が止まらない引きの強さを誇示。合わせる手揉み麺も、スープとの相性の良さを考え抜き、ベストと考えるものを製麺所に特注するこだわりよう。
食べ進めるにつれてスープが舌に馴染み、体感的なうま味が右肩上がりに増幅。気が付けば、スープまで残さず飲み干していることだろう。
[住所]山形県鶴岡市田代字大坂山309
[駐車場]あり
ケンちゃんラーメン三川店【東田川郡】
煮干しスープと、平打ち縮れ麺のコラボ。庄内を代表する店『ケンちゃん』の一角!

引き続きご紹介するのは、酒田市に本店を構え、山形県内を中心に、県外(秋田、青森)にも支店を擁する『ケンちゃんラーメン』。
「煮干しを過不足なく絶妙に利かせたスープに、300gに及ぶ平打ち縮れ麺が詰め込まれる」。
この基本的なラインは店を問わず共通しているが、店舗ごとにスープのテイスト、麺の太さ・形状・食感に明確な個性があり、各店に「自分はこの店推し!」という熱心な固定ファンが付く傾向があるのが、『ケンちゃんラーメン』の醍醐味。そのありようが、どことなく『ラーメン二郎』に似ているような気がするのは、私だけだろうか。
かく言う私のお気に入りは、『ケンちゃんラーメン三川店』。開店する前から店の前に長蛇の列が連なる繁盛ぶりは、他の『ケンちゃん』と同様。
上質なカエシの風味と奥深い煮干しの滋味とが舌上でガッチリと手を結ぶスープは、放散されるビビッドなうま味に、忘我の境地に陥ってしまうほど秀逸。
麺とスープとの相性もすこぶる良好で、300gの麺量も、物足りなく感じてしまうほどだ。
[住所]山形県東田川郡三川町猪子大堰端313-1
[駐車場]あり
中華そば八千代【東田川郡】
庄内ラーメンの地力の高さを、まざまざと実感!慈母のように優しい癒しの1杯

続いてご紹介するのは、『中華そば八千代』。昭和36年(1961年)という創業年は、老舗が多い庄内エリアのラーメン店の中でも指折りの歴史の長さ。
店舗の場所は、庄内町における鉄道の玄関口・JR余目駅から300m程度。駅から5分も歩けば、店の前まで辿り着ける立地の便は、車でのアクセスが前提となっている庄内地方のラーメン店立地事情に鑑みれば、有難いことこの上ないと言うほかない。
店内は、他の庄内の実力店同様、営業時間中は、時間帯を問わずその味に魅せられた地元客の訪問が途切れない盛況ぶり。提供されるメニューは「中華そば」のみと、シンプル極まりない点も、個人的には好印象だ。
麺の分量によって、大きさが「特」「大」「中」「小」の4種類に分かれるが、連食をお考えなら「中」がおすすめ。
安易に油の風味に頼らず、魚介等の天然素材の上質なうま味がじっくりと丁寧に引き出されたスープは、訴求力と食べ手を選ばない普遍性とを兼ね備えた味わい。
スープの魅力が最大限引き立つよう、極力穏やかな佇まいに調整された中細麺にも、老舗の技を感じる。
[住所]山形県東田川郡庄内町余目三人谷地1-2
[駐車場]あり
煮干しラーメン専門店 麺や猪鹿蝶【東田川郡】
庄内に誕生した、煮干しラーメンのニュータイプ。頬落ちるローストポークは必食!

最後にご紹介するのは、『麺や猪鹿蝶』。上で紹介した『中華そば八千代』と同じく、余目駅近傍に軒を構えるが、こちらは、2019年9月にオープンした比較的新しい店舗。
このように、新旧の実力店が仲睦まじく共存するのも、庄内地方のラーメンシーンの妙味のひとつだ。「背脂ラーメン」や「どろ煮干しラーメン」も好評だが、最初に召し上がっていただきたいのは、基本メニューである「ラーメン」。
麺は、「手揉み」と「細ストレート」の2種類から選択可能だが、スープを過不足なく絡め口元へと運び込む手揉み麺がおすすめ。
煮干しの滋養味を優しく穏やかに湛えたスープは、洗練された食味と上質なあと口が特徴。
低温調理が施されたローストポークをトッピングに採用している点も含め、今、首都圏で一世を風靡しているアッサリ煮干しスープの味わいに通じるところがある。
煮干し系にありがちなエグ味や癖が抑えられ、煮干しラーメン初心者にも食べやすい1杯に仕上がっている点も、特筆に値する。
[住所]山形県東田川郡庄内町余目三人谷地189
[駐車場]あり
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※参考データ:公益財団法人国土地理協会「2020年4月調査 市町村別 人口・世帯数(日本人住民+外国人住民)」
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田中 一明(たなか かずあき)
通称「ラーメン官僚」。ラーメン食べ歩き歴20年以上、実食杯数は11,000杯以上に及ぶ。直近の数年間は、毎年700杯~800杯のラーメンをコンスタントに実食。2016年現在、日本でラーメンシーンの「今」を最もよく知る人物。