国立競技場や歌舞伎座などの設計で有名な日本を代表する建築家、隈研吾さん。全国には隈研吾さんがデザイン監修した宿泊施設も数多くあります。
今回はその中から11軒を厳選。いずれも旅の目的になり得るような憧れのホテルや旅館ばかりです。
※この記事は2021年11月17日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
ONE NISEKO RESORT TOWERS【北海道】
ニセコの雄大な自然を望む全室スイート。木肌に覆われたパブリックスペースも寛ぎの空間。

国際的スキーリゾート、ニセコの一角に位置するプレミアムコンドミニアムホテル。フロントやロビー、ギャラリーカフェを挟んでイーストタワーとウエストタワーの2棟からなります。


隈研吾さんがデザイン設計したのは、玄関前とロビー、ラウンジ、1階のギャラリーカフェ。ウエストタワー10階のシガーバー、同じく3階の温泉脱衣場、そしてイーストタワー1階にある『ワン・スイート』という名の客室です。

全室バルコニーとキッチン付き。アイヌ民族の伝統を継承する木肌のぬくもりに包まれた、気品あふれるスイートルーム仕様になっています。
全105室あるうち、隈研吾さんがデザインを手がけたのはたった1室。それが写真の『ワン・スイート』。まさにスペシャルな空間というわけです。ただ残念ながら、こちらのお部屋は現在、一般発売されていないそうです。
宿泊料金例としては、朝食付きのスタンダードプランで『スタジオスイート・Tatami』大人2名1室1名利用時6670円~、他。

写真は1階にあるギャラリーカフェ。イーストタワーとウエストタワーをつなぐ渡り廊下も兼ねています。他にお客さんがいなければ、思わず写真を撮りたくなるような空間です。一冊手に取り、コーヒーでも飲みながら読書もいいですね。

こちらはウエストタワー10階にあるシガーバー『One Bar』。「地元の木をふんだんに使った隈研吾さんデザインの空間に包まれ、落ち着いたひとときをお愉しみいただけます」と総支配人。余市の蒸留所で寝かせたウイスキーをはじめ、選りすぐりのウイスキーやブランデー、北海道産のワインの用意も。
12月初旬のシーズンインにはホテルの前も一面、白銀の世界。美しい冬景色に溶け込む隈研吾さんデザインの建築も見どころ。ウエストタワー3階には温泉施設もあるそうですよ。
[TEL]0136-50-2111
[住所]北海道虻田郡ニセコ町字ニセコ455-3
[アクセス]【電車】JR ニセコ駅よりタクシーで15分。JR倶知安駅より無料シャトルバス運行【車】道央道白老ICより1時間30分
「ONE NISEKO RESORT TOWERS」の詳細はこちら
WE Hotel Toya【北海道】
霧の洞爺湖をやわらかなテキスタイルで表現。美しい風景を切り取るピクチャーウィンドウも秀逸。

国立公園、洞爺湖を望む高台に『WE Hotel Toya』はあります。もともと福祉施設だった建物を生かし、インターナショナルホテルとして生まれ変わりました。
隈研吾さんは同ホテルの建物1階にあるロビーとレストランのデザイン監修をしています。

木製のルーバーが美しいエントランスから館内へと一歩入ると雰囲気が一変。目の前に現れるのは“霧深い洞爺湖”をイメージしたというオリジナルのテキスタイルで覆われたロビー空間です。

しわのある柔らかなテキスタイルで覆われた空間が、洞爺湖に面して奥までずっと続いています。表情豊かなドレープの存在感も相まって、どこか劇場のような面持ち。
「テキスタイルも隈研吾さんがデザインしたものです。三次元的に展開する幾何学を形にするため折り目を加えたデザインと、カーテンのようなデザインの2種類のテキスタイルを組み合わせ、ドラマティックな空間に仕上げています」と支配人。
全体がアースカラーで統一されているので、周りの自然の景観ともよく馴染んでいます。同じく隈氏が手がけたという家具やインテリアも空間のアクセントになっています

デザイナーズリゾートの名にふさわしく、どこを切り取っても絵になるスポットばかり。写真は天井やバーカウンターの下に樽をあしらった、その名も『Taru Bar』。遊び心満載です。

ピクチャーウインドウを配した客室は、全室レイクビュー。ベッドやラウンジチェア、窓辺に置かれたデイベッドタイプのソファなど、部屋のどこにいても美しい湖の風景と対峙できます。
客室のカードキーやドアのルームナンバー、歯ブラシやシェーバーなどのアメニティにも木の素材が取り入れられているのも特徴。シンプルでありながらも随所にあたたかみを感じます。

全55室、広さもデザインもほぼ同じ造りでベッドのタイプだけが異なります。写真の客室は大人2名1室平日1泊朝食付き2万3000円~。キングルーム、ツインルームはトリプルルームとしても利用できます。
新千歳空港からは車で約2時間30分。ルスツやニセコのスキー場への無料送迎も行っているそうです。
[TEL]0142-89-3333
[住所]北海道虻田郡洞爺湖町洞爺町293-1
[アクセス]【電車】JR 洞爺駅より無料シャトルバスで30分【車】道央道虻田洞爺湖ICより20分
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MEMU EARTH HOTEL【北海道】
十勝の大自然に佇む『建築の聖地』。隈研吾さんをはじめ日本を代表する建築家が関わる作品に泊まる。

北海道十勝の自然の中に佇む『MEMU EARTH HOTEL』。広大な土地に点在するのは、世界各国の建築学科の学生たちによる “寒冷地適応住宅”コンペティションの最優秀作品を具現化した実験住宅です。

約5万6000坪もの広大な大地に、それぞれ可能な限り化石燃料を使わず、再生可能な資源を使い、環境に配慮し建てられた寒冷地適応住宅が5棟点在。全戸、テーマが異なる一戸建てになっています。
隈研吾さんや伊東豊雄さんなど日本を代表する建築家も関わっているこれらの作品群に泊まるという、建築好きには夢のような体験ができる施設。隈研吾さんはこの施設全体の監修を行っています。


白い屋根と白壁が特徴的な『Meme』は、隈研吾さんがアイヌの伝統民家・チセをモチーフに設計した建物です。(※客室『Meme』の表記について、正しくは最初のeの上にサーカムフレックスが入ります)
光を透過する白い膜材は二重構造になっていて、室内に明るくやわらかな光をもたらすだけでなく、膜の隙間を熱が循環することで冬でも暖かく快適に過ごせるのだそう。

『Meme』は大人2名1室平日利用、1泊2食付き1名6万6000円~。
このような北海道古来の住宅の趣と知恵を現代版に再現した実験的住宅が5棟あるので、気になる住宅を選び泊まってみましょう。

『STUDIO MEMU』はホテルのフロント、レストラン、ライブラリー、ショップを兼ね備えたパブリックスペース。
築40年以上経過した牧草保管用の倉庫を当時の雰囲気そのままに、ワークショップとして利用することをふまえ、伊東事務所の設計・監理のもと改修、再生された建物だそう。
“地球に泊まり、風土から学ぶ”をコンセプトに生まれた実験的住宅宿泊施設は、アイヌ民族の文化や北海道の自然に触れられる稀有なホテルともいえます。
[TEL]01558-7-7777
[住所]北海道広尾郡大樹町芽武158-1
[アクセス]【車】とかち帯広空港より50分、または釧路空港より2時間、新千歳空港より3時間
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ザ・キャピトルホテル 東急【東京】
日本の伝統的な建築様式を取り入れた、和モダンなラグジュアリーホテル。

都心の永田町にあるラグジュアリーホテル。隈研吾さんによる日本の伝統的な建築様式を取り入れた、洗練の和モダンな空間でゲストをあたたかく迎えています。
ホテルが入る複合ビル『東急キャピトルタワー』のアーキテクトデザインも手がけたつながりから、旧ホテル(キャピトル東急ホテル)の日本建築の精神を汲みつつも、ホテルの外観に組格子と縦格子を使い、環境の変化に追従する表情豊かなデザインになったそう。


まず目を引くのが、正面玄関で存在感を放つ大きな庇(ひさし)。これは高層建築特有の威圧感を与えないようにとの配慮から設えた木製ルーバーで、この庇があることで日枝神社の杜との一体感が生まれました。超高層ビル群に囲まれながら清々しく凛とした和の佇まいを醸し出しています。
3階にあるメインロビーの“斗栱(ときょう)”も代表的な意匠の一つ。日本の伝統的な寺社建築の屋根を支える構造の斗栱をモチーフに、高さ約7mの吹き抜け空間を実現。こちらも隣接する日枝神社の杜と建物とが融合するデザインになっています。

その他、メインエントランスでは庭や玄関を掃き清め、打ち水をする日本らしいお出迎えの姿を池の水で表現するなど唯一無二の空間にワクワクします。

同じく3階・メインロビーの吹き抜け窓の上部にも注目。簾戸とよばれる日本の建具をモチーフにしたデザインで日差しをやさしくコントロール。壁で隔ててしまうのではなく、光を操作することで空間を仕切りつつ、中庭や日枝神社の緑に溶け込むよう設計されています。

客室では障子や引き戸で自在に空間を仕切ることができる独創的な間取り、そして日本家屋の伝統的スタイルである回遊性をデザインに取り入れ、美しさと機能性を兼ね備えた空間に仕上げました。
日本の伝統的な玄関を思わせる造りで、間仕切りの障子を動かすことでシーンに応じて室内の雰囲気を変えながら過ごせます。白木を基調としたインテリアと、ホテルの歴史を紡ぐ気品あるアートワークの数々も心安らぐ和の空間を演出しています。
写真は大人2名1室平日利用時、1人1泊朝食付き3万9215円~。

洗練空間に彩りを添えるのは自由闊達な草花のアートや、旧ホテルより受け継いできた美術品の数々。北大路魯山人、棟方志功、篠田桃紅、高須英輔といった名だたる芸術家の作品に出合え、眼福です。
[TEL]03-3503-0109
[住所]東京都千代田区永田町2-10-3
[アクセス]【電車】東京メトロ 国会議事堂前駅、溜池山王駅6番出口地下直結【車】首都高速霞ヶ関ランプより3分
「ザ・キャピトルホテル 東急」の詳細はこちら
東京エディション虎ノ門【東京】
マリオット・インターナショナルの最高級ラグジュアリーライフスタイルブランド。客室からすべての内装を隈研吾さんがデザイン。

マリオット・インターナショナルが展開するラグジュアリーライフスタイルホテル『エディション』ブランドの日本一号店として、2020年秋にオープンした『東京エディション虎ノ門』。
隈研吾さんとパートナーシップを組み創り上げたのは、東京の由緒ある歴史と伝統と、近代的超高層ビルが立ち並ぶ東京のスカイラインの両方を満喫できる新世代のラグジュアリーライフスタイルホテル。

高さ180m、地上38階建ての新しい超高層複合施設『東京ワールドゲート』の31~36階を拠点とし、スイートを含め206室用意されています。


1階のホテルエントランスは高く、優雅にレイヤリングされたトルコ産のトラバーチン石材が特徴的。高さは6.4mあり、総ネロマルキーナ大理石仕上げ。よく見ると、1つ1つのパネルは石の静脈が美しくマッチングするよう緻密にデザインされています。
天井には中世ヨーロッパの教会などで見られるクロスヴォールト(交差円天井)様式を採用。やわらかな間接照明と相まって包み込まれるような安心感を生み出しています。黒と純白のドラマチックな空間も、これから始まる特別な一日のプロローグにぴったり。

もう少しパブリックスペースを紹介します。こちらは31階にある『Lobby Bar』。ロビー中央にはライトアップされた白大理石のバーカウンターを囲むように、グリーンベルベットとホワイトレザーのバースツールを配しています。

同じく31階のロビーラウンジエリアは高さ7.8mあり、床から天井までのフルハイトウィンドウを採用。日中は東京湾や東京タワーを含む最高のパノラマビューを、日没後は東京の夜景が楽しめます。
ロビーの壁はライトステインドオーク材を使用した大和張りを含む、数種類の板張りで仕上げ。親密な空間を演出できるよう、寸法やバランスは緻密にデザインされているそうです。
床はトルコのデニズリ採石場で源泉されたライトベージュのトラバーチン石材を磨き使用。重厚感あるダークウォールナット材とのコントラストも美しく、品を感じます。
ロビー天井は、木製のスラットによって高さがより強調され、開放的に。アトリウムを覆う木製のスラットの庇(ひさし)も個性をプラス。25種、500以上もの植栽あふれる空間を光がやさしく照らし、まさに天空のオアシスといった感じでしょうか。こうした緑あふれる空間も隈研吾さんデザインの特徴といえるでしょう。

客室の内装デザインもすべて隈研吾さんが監修。写真は全22室あるスイートのなかで、最もテラス面積が広く人気がある『テラススイート』1泊1室39万2150円~。客室108平米、プライベートテラス60平米からなるラグジュアリーな空間で、東京のすばらしいランドマークを見渡せます。
[TEL]03-5422-1600
[住所]東京都港区虎ノ門4-1-1
[アクセス]【電車】東京メトロ 神谷町駅直結、またはJR 新橋駅よりタクシーで約5分【車】首都高速汐留飯倉出口より2分、汐留出口または霞が関出口より5分
「東京エディション虎ノ門」の詳細はこちら
ATAMI 海峯楼【静岡】
多くの建築家が称賛!海とつながる『水の縁側』。4室だけのスモールラグジュアリーとして再生。

水とガラスが印象的な隈研吾さんの建築。1995年竣工のゲストハウスが設えを残しながら、4室だけのスモールラグジュアリーとして甦りました。

エントランスからブリッジを渡り館内へ。ロビーから続くガラスの階段を上りきると現れるのが『ウォーターバルコニー』。水とガラス以外の要素を可能な限り排し構築された非日常空間です。

こちらは隈研吾さんがデザインした<水/ガラス>という作品で、水でできた縁側によって建築と海を接続しようという試みから生まれました。目の前の海と、建物の水の縁側がつながって見え、海に浮かんでいるような一体感が味わえます。
建築家の間では、実は御法度に近いといわれるガラス建築。造る人はいても、庇を出すデザインは稀少だそうですが、そんななか、こちらは縁側も庇(ひさし)も深いのが特徴なのだとか。
ラグジュアリースイートに宿泊するとお食事処として利用できるそうです。


朝は霞んでいる太平洋と水の縁側、室内のガラスのテーブルまで境目がなくなり、すべて溶け合い幻想的なんだそう。

4室すべてオーシャンビューですが、デザインと間取りはそれぞれ異なり部屋ごとに個性があります。
写真の『ラグジュアリースイート「誠波(せいは)」』は90平米あり、壁一面の大きなガラスの窓からインフィニティの水盤に続く海を一望!ジャグジー付の露天風呂もあります。大人2名1室平日利用、1人1泊2食付き7万5900円~。

非日常の絶景を堪能したら、館内にある貴重なアートにも触れてみましょう。明治末期から平成にかけ活躍した版画家の徳力富吉郎氏や、ガラス造形作家の狩野智宏氏、日本画家の千住博氏らの作品も見どころです。
[TEL]0570-0117-22
[住所]静岡県熱海市春日町8-33
[アクセス]【電車】JR 熱海駅よりタクシーで3分(無料送迎あり、予約制)【車】東名厚木ICより1時間
「ATAM 海峯楼」の詳細はこちら
児島あさこ
編集者・ライター。旅先での楽しみは日頃おせわになっている人へのおみやげ選び。道の駅、美術館、セレクトショップ、うつわ屋さん…など贈る人の好みに合わせて物色している時間が幸せです。好きな町は金沢。