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2025.12.18

合掌造りとは?世界遺産「白川郷」「五箇山」の合掌造り集落の特徴や見どころも紹介

「合掌造り」とは、急勾配の茅葺き屋根が特徴的な日本独自の伝統建築。1995年にユネスコ世界文化遺産に登録された岐阜県の白川郷と富山県の五箇山地域では、今も合掌造り家屋に人々が暮らしています。

今回は合掌造りの特徴や歴史から、白川郷と五箇山の観光・宿泊・アクセス情報まで紹介します。

合掌造りとは

合掌造り

「合掌造り」とは、梁(はり)の上に木材を山形に組み合わせた、茅葺(かやぶ)きの三角屋根が特徴的な建築様式のことです。

現存する合掌造り家屋の多くは、江戸時代から明治時代に建てられたもの。岐阜県の白川郷と富山県の五箇山(ごかやま)では、今でも多くの人が住居として利用し、生活を営んでいます。

合掌造りに用いられる茅葺き屋根とは

合掌造り

白川郷・五箇山の合掌造りの大きな特徴は、屋根の部分が「切妻(きりづま)合掌造り」と呼ばれる形態であること。屋根裏に広い作業スペースを確保できるメリットがあり、養蚕などの作業場として活用されてきました。大きい家屋だと、高さ15m、4~5階建てのものもあります。

主用部材の一部には、耐久性に優れたクリ(栗)材が使われています。クリ材は丈夫で湿気に強く、防虫・防腐処理をしなくても長期間使える特性を持っているのだとか。

三角屋根が特徴の茅葺き屋根は何でできている?

合掌造り

茅葺き屋根の「茅」とは、白川郷・五箇山ではカリヤス、コガヤ(刈安、小茅=ススキの近縁種)を指します。通気性・断熱性・吸音性・保温性に優れるという特性があり、似たものは日本だけでなく世界各地で見られます。

屋根裏には縄やマンサクという植物の若木が使われており、釘などの金物は使用していません。雨や強風、雪の重みなどによるゆがみにも耐えるしなやかな構造です。

毎日、囲炉裏から立ちのぼる煙で屋根裏の部材がいぶされる「燻蒸(くんじょう)」によって、防虫・防カビの効果がもたらされ、建物の強度も増すのだとか。人が生活を営むことによって住居が長持ちする仕組みです。

合掌造り
茅葺き屋根の葺き替えの様子

茅葺き屋根の特性として、20~30年に一度は必ず屋根の葺き替えをしなければいけないことが挙げられます。

白川郷・五箇山では「結(ゆい)」と呼ばれる住民同士で助け合う相互扶助の精神を大切にしています。茅を全て外し、また新たな茅を1日で葺くのは大仕事で、毎年少なくとも3〜4棟は葺き替えが行われているそうですよ。

「合掌造り」の名前の由来は?

合掌造り

「合掌造り」という名称は1930年代頃から使われ始めたとされています。由来は、手を合わせた“合掌”の腕の状態が屋根の形に似ているためというのが通説です。掌を合わせたように三角形に部材を組むことを「ガッショウ」と呼ぶためという説もあります。

合掌造り集落の特徴は?

荻町地区の合掌造り集落の家は全て同じ向き!

合掌造り
展望台から見る荻町地区

白川郷・荻町(おぎまち)地区の合掌造り集落は、住居の向きが全て同じ。風の抵抗を最小限にすると同時に、屋根に当たる日照量を調節し、夏は涼しく、冬は温かく保たれる効果があります。

荻町地区では、南北に伸びる谷あいの川に沿って強い季節風が吹くため、屋根のてっぺんが川に並行になるように建てられています。屋根は東西に面しているので、午前中は東側、午後は西側と効率よく日光が当たり、積もった雪も溶けやすいのだとか。

自然のエネルギーを利用しながら家を守るという、自然と共生してきた知恵や文化も、世界文化遺産に登録された理由のひとつです。

荻町地区以外の集落では、地形や道筋など、それぞれの事情によって建てられており、法則や決まりはないというのが基本だそうです。

合掌造り集落で行われる放水

合掌造り

白川郷・五箇山の放水は、高さ30mもの水柱が集落内で上がる秋の風物詩。観光イベントではなく、火災に備えた防災訓練です。

年に一度(地域によっては数回)、点検を兼ねて一斉放水を行います。茅葺き屋根は非常に燃えやすく、出火すれば集落全体に延焼する危険性もあるため、1軒あたり1基、白川郷で最大規模の「和田家」には2基の消火用放水銃が設置されています。

茅葺きの中に火が入ると消火するのは難しく、放水銃は消火のためというより、周辺から出た火が燃え移って火災が広がるのを防ぐのが主目的だそう。

放水訓練の日、サイレンと同時に水柱が一斉に上がる様子は圧巻です。

岐阜県「白川郷」とは

岐阜県「白川郷」

ここからは岐阜県・白川郷と、富山県・五箇山それぞれの特徴を、もう少し詳しく紹介します。

白川郷は、岐阜県飛騨地域の庄川(しょうがわ)流域を指す名称ですが、中でも大野郡白川村荻町地区がよく知られています。

岐阜県「白川郷」

白川郷の合掌造り集落では“売らない、貸さない、壊さない”の三原則を住民同士で定め、民家の外観を壊す改装は行わないようにしているとか。

岐阜県「白川郷」

ユネスコの世界文化遺産に登録されたのも、建物や景観だけではなく、「結」という地域に根付く住民同士の相互扶助の営みが高い評価を受けてのことです。

今もなお、合掌造り家屋に多くの人が暮らす白川郷。単なるモニュメントとして見物するのではなく、自然と共に生きる人々の暮らしを見たり体験したりできるのが最大の魅力です。

白川郷のおすすめ観光・体験スポット

合掌造り
(画像提供:PIXTA)

一般公開されている合掌造り家屋では、内部がミュージアムのようになっているものだけでなく、地元食材を味わうプランがあったり、民宿として宿泊できたりするスポットもあります。現地の人々の暮らしや文化を体験できるチャンスですね。

観光ガイドサービスを利用して散策するのもおすすめ。また、日帰り入浴ができる温泉施設なども近隣にありますよ。

白川郷は富士山、立山と並んで日本三霊山のひとつといわれる白山の東側に位置するため、近くの「白山国立公園」では様々なアクティビティやプログラムを体験できます。

▼白川郷のおすすめ観光・体験スポットはこちら

白川郷周辺の宿泊施設

せっかく白川郷に宿泊するなら、実際にかつて住居として使われていた建物を利用した合掌民宿もおすすめ。囲炉裏を囲んで地元食材を使った素朴な山里の料理を味わえば、まるでタイムスリップしたかのような感覚も楽しめます。

一般民宿、旅館、近代的なホテルやゲストハウスもあるので、好みに合わせて宿を選んでくださいね。

宿泊プランに自然体験プログラムが組み込まれた施設もあります。

▼白川郷のおすすめ宿はこちら

白川郷へのアクセス

白川郷の周辺に駅はありません。金沢・富山・名古屋などの駅から高速バスを利用するか、車でアクセスできます。

【車でのアクセス】
・東京方面より
中央道・長野道・東海北陸道で約5時間10分、白川郷ICで降りたら、R156経由で白川郷エリアまでは約5分です。

・大阪方面より
名神道・東海環状自動車道・東海北陸道経由で約3時間15分、荘川ICで降りたら、R158~156経由で白川郷エリアまで約45分です。

駐車は村営せせらぎ公園駐車場(普通車1回2000円)を利用してください。

【電車・バスでのアクセス】
・東京方面より
東京駅より北陸新幹線で富山駅へ。富山駅から高速バス利用、約1時間20分で白川郷バスターミナルに到着します。

・大阪方面より
新大阪駅より東海道新幹線で名古屋駅へ。名古屋駅から高速バス利用、約2時間45分で白川郷バスターミナルに到着します。

▼白川郷観光の詳細はこちら

富山県「五箇山」とは

富山県「五箇山」
相倉集落

五箇山は、岐阜県との県境である富山県南砺市内に位置し、白川郷と同じ庄川流域に点在する40の集落の総称です。

世界文化遺産に登録されている相倉(あいのくら)と菅沼(すがぬま)の2つの集落には、合掌造り家屋が多く残っており、白川郷と同様に今も人々が生活しています。

富山県「五箇山」
相倉集落のライトアップ

相倉集落は標高約400mに位置し、20棟の合掌造り家屋が現存しています。多くは江戸時代末期から明治時代に建てられており、最も古いものは17世紀にまで遡ると言われています。

第1駐車場に「世界遺産相倉合掌造り集落保存財団」の事務所があるので、観光拠点としてぜひ立ち寄ってみましょう(営業時間8時30分~17時)。そこから段々畑を5分ほど登ると、集落の全景を一望できる展望エリアがあります。

富山県「五箇山」
菅沼集落

菅沼集落には、9棟の合掌造り家屋が現存しています。1925(大正14)年に新築されたものも1棟あり、この時代まで合掌造り家屋が造られていたことが分かります。

富山県「五箇山」
菅沼集落のライトアップ

五箇山・白川郷には、平安時代末期に平家ゆかりの人々が落ち延び、住み着いたとする落人(おちうど)伝説が伝わっています。五箇山は江戸時代には加賀藩領となって、養蚕や和紙づくり、火薬の原料となる塩硝(えんしょう)づくりなどの産業が盛んになり、合掌造りはこれらを製造する作業場の役割も果たしていました。

相倉と菅沼ではライトアップも実施。幻想的な冬のライトアップが印象深いですが、季節ごとに趣が異なり、山の四季を感じられます。ライトアップ日時などの詳細は、公式ホームページを確認してくださいね。

五箇山のおすすめ観光・体験スポット

五箇山和紙漉き体験館
五箇山和紙漉き体験館

相倉・菅沼いずれの集落にも、合掌造り家屋を利用した民俗館をはじめ、風情あふれる飲食店やお土産店などがあります。地元名物の「堅豆腐」や、岩魚料理なども味わえますよ。

また、相倉集落の「五箇山和紙漉き体験館」では和紙漉き体験、菅沼集落の「塩硝の館」では火縄銃を持つ模擬体験もできます。

キャンプにスキー、桂湖(境川ダム)でのカヌー・釣りなど自然の中でのアクティビティや、日帰り温泉を堪能といった多彩な過ごし方ができます。

▼五箇山のおすすめ観光・体験スポットはこちら

五箇山周辺の宿泊施設

せっかく五箇山に宿泊するなら、かつて住居として使われていた建物を利用した合掌造りの民宿もおすすめ。世界遺産(相倉地域)で5軒、そのほかの集落で2軒あります。岩魚の塩焼きや山菜などの地元料理、囲炉裏の体験はもちろん、満天の星や朝の澄んだ空気は、きっと忘れられない思い出になるはず。

合掌造りの民宿以外にも、温泉旅館や一般の民宿、ゲストハウスや合掌造りのコテージ、キャンプ場などもありますよ。

▼五箇山とその周辺のおすすめ宿はこちら

五箇山へのアクセス

金沢・富山・名古屋などの駅や空港から公共交通機関を利用するか、車でアクセスします。

【車でのアクセス】
・東京方面より
中央道・長野道・R158・高山清見道路・東海北陸道経由で約6時間20分、五箇山ICを降りたら菅沼合掌造り集落まではすぐ、相倉合掌造り集落までは約15分です。

または、関越道・上信越道・北陸道・東海北陸道を経由して約6時間20分で五箇山ICです。

・大阪方面より
大阪府内からは、名神道・東海北陸道経由して約4時間20分で五箇山ICです。

駐車場は、菅沼の展望広場駐車場、相倉の第1・第2駐車場(いずれも協力金1000円)が利用できます。

【電車・バスでのアクセス】
・東京方面より
東京駅より北陸新幹線で富山駅へ。富山駅からあいの風とやま鉄道を利用して、高岡駅・新高岡駅・城端駅のいずれかで世界遺産バス(加越能バス)に乗り換え、相倉口バス停、菅沼バス停にアクセスできます。

世界遺産バスで城端駅から相倉口バス停までは23分、菅沼バス停まではさらに15分が目安です。

・大阪方面より
大阪駅より特急サンダーバードで敦賀駅へ。敦賀駅より北陸新幹線で新高岡駅まで1時間20分ほど、新高岡駅・城端駅からは世界遺産バスで上記と同じです。

また、4〜11月は金沢駅から菅沼バス停までの高速バス(予約制)も運行されているので、東京・大阪方面のどちらから訪れる場合も便利です。

▼五箇山観光の詳細はこちら

▼南砺市観光の詳細はこちら

上記のアクセス情報はあくまで目安です。白川郷・五箇山いずれも、出発地や時間により複数のアクセス手段がありますので、必ず事前に確認してお出かけください。

まとめ

合掌造りと、白川郷・五箇山について紹介しました。“日本の原風景”といわれるように、景色が注目されがちな合掌造り集落ですが、昔の人の知恵や、人々と自然との共生の中で育まれてきた文化を体験できる貴重な場所です。どの季節にも見どころがあるので、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。

画像提供:白川村役場、南砺市観光協会

※この記事は2025年12月9日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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