日本に返還されて50年が経過した沖縄。450年続いた琉球王国は沖縄県となり、戦争、統治を経て今では世界的な観光地に。
そして、この土地と年月が育んだ沖縄の4つの伝統工芸が、琉球ガラス、やちむん、琉球びんがた、琉球漆器。
琉球~沖縄で花開いた「美」の作り手と届け手をご紹介します。
琉球ガラス
再生ガラスが生み出す唯一無二の色、泡、形。
沖縄でガラス製品づくりが始まったのは明治時代。当時は今のような特徴はなく、他の産地同様、需要に応じてランプのほやなどを製造していた。しかし昭和に入ると戦争と米軍統治が状況を変える。爆撃で工場は破壊され、原材料も不足。そんな状況下、米軍が廃棄したコーラなどの空き瓶を再利用。不純物を含む再生ガラスならではの色味や気泡も、次第に手しごとの個性として受け入れられ、琉球ガラスは沖縄を代表する土産物の一つになっていった。1998年には県の伝統工芸品に認定され、現在20以上の工房が、県内各地で魅力的な作品を生み出している。
宙吹ガラス工房 虹【中部・読谷村】
探究心で生み出し続ける新しい琉球ガラスらしさ。







気泡を人為的に増やしてデザインに取り入れるなど、斬新な作品づくりで現代の名工にも選ばれた稲嶺盛吉さんが開いた工房。後継の盛一郎さんも、父親の技を受け継ぎつつ新たな琉球ガラスの魅力を探究している。
琉球ガラスの作り方

1.廃瓶を砕く
酒造会社などに頼んで廃瓶を確保。工房 虹では毎日手作業で瓶を砕く。

2.廃ガラスを溶かす
翌日使う色のガラス材料を、前日の夕方からるつぼに入れて1400℃で溶かす。

3.吹いて成形
溶けたガラスを吹き竿で取り、竿を回しつつ息を吹き込んで器の形に。

4.仕上げて冷却
時間との勝負。スピーディに作品を仕上げ、600℃の窯でひと晩かけて冷ます。
098-958-6448
沖縄県中頭郡読谷村座喜味2748
9時~18時(変動有)
木・日(ギャラリー不定休)
沖縄道沖縄南ICより車で25分
隣の共同駐車場利用
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グラスアート藍【北部・名護市】
魅力は洗練されたデザイン。難易度の高い平皿も充実。







コンスタントに新作を発表し続けている工房。美しく独創的なデザインはファンも多い。購入後に割れても、保証期間内であれば新品と交換、期間後でも再度溶解して作品づくりに活用するというエシカルな取り組みも。
0980-53-2110
沖縄県名護市中山211-1
9時30分~17時 ※体験は10時~16時30分最終受付(予約優先)
火(臨時休業あり)
吹きガラス体験2420円~(パーツ代別)
沖縄道許田ICより車で20分
10台
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奥原硝子製造所【南部・那覇市】
数多くの名工も輩出した1952年創業の琉球ガラス工房。





1952年創業の奥原硝子製造所は、前述の「工房 虹」の稲嶺さん父子をはじめ多くの職人を輩出してきた。常に時代に即した製品を作り続け、レトロで温かみのある色とフォルムが老若男女問わず人気。
098-868-7866
沖縄県那覇市牧志3-2-10 てんぶす那覇2階
10時~18時
なし(体験工房は水)
那覇空港より10分
75台(地下有料駐車場)
glacitta’【北部・恩納村】
ショップの品揃えも楽しい生活になじむ食器&花器。





琉球ガラスに携わって25年。ショップ&工房を構えて20年。ショップでは、グラチッタの作品と同じく素朴で日常に取り入れやすい3つの工房の作品も販売している。生活に潤いを添えてくれる花器の数々にも注目!
やちむん
400年前、薩摩から伝来。自由な気風を映す焼き物。

日本各地に陶磁器の産地があるが、沖縄の焼き物「やちむん」は、いかにも南国らしい伸びやかなデザインとナチュラルカラーとも言うべきやわらかな色彩が魅力だろう。優しく大らかな印象は琉球ガラスにも通じるものがある。
1600年代、薩摩から派遣された陶工たちによって焼き物技術が伝えられた琉球王国。その後、国王は職人たちを一つの地域に集めて、その地を壺屋と称したため「壺屋焼(つぼややき)」と呼ばれるようになった。
琉球王国から沖縄となった明治期以降は、各窯元が時代を乗り切るため「売れる焼き物」を模索。その中でエジプト風の図柄が多く描かれた琉球古典焼が登場したり、昭和初期の民藝運動の影響を受けたりと、紆余曲折をたどる。
そして今、昔ながらの壺屋エリアと、1980年代に共同窯が築かれた読谷エリアを中心に、県内随所でやちむんが制作されている。古くから受け継がれてきた伝統的なデザインをはじめ、鮮やかなブルーの釉薬を使ったもの、自由でシンプルなモチーフの図柄など、その表現の幅はさらに広がり、多くの愛好家や旅人を魅了している。
育陶園【南部・那覇市】
王国ゆかりの壺屋の地で多彩なやちむんと店を展開。












熟練から若手まで、代表の高江洲若菜さんを中心に30人の大所帯で運営する県内最大級の窯元。工房、本店のほか、コンセプトが異なる3軒の直営店や陶芸体験工房なども展開し、壺屋エリアを巡る楽しみも提案している。繊細な線彫りのデザインや独自で開発する秘伝の釉薬が作品の特徴。
Kamany【南部・那覇市】
カンナイとバサナイ2つの模様が店のシンボル。


育陶園の線彫り名人が、手作業で一本一本彫っていくカンナイ(カミナリ)とバサナイ(バナナの葉)の模様。この店ではそんな、存在感を放ちながら生活に溶け込む器を多く扱う。
mofgmona no zakka【中部・宜野湾市】
50もの工房の作品がずらり!好きな器に巡り合える店。




上で紹介した大嶺工房の作品も扱う、器のセレクトショップ。オープン18年目とあって、取引工房数は50以上と県内でも群を抜いて多い。伝統的なやちむんと現代的な作家ものが同時に見られる点も魅力だ。ここへ来れば欲しい器がきっと見つかりそう。
098-893-5757
沖縄県宜野湾市宜野湾2-1-29-301
11時~17時(金~土日は~18時)
不定
那覇空港より車で35分
10台
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琉球びんがた
600年続く華麗な染め物。年月を経ても褪せにくい色彩。
琉球独自の染め物、びんがた(紅型)の始まりは13世紀~15世紀。交易品として入ってきたインド更紗などを参考に生み出されたこの華麗な染め物は、王家の女性を美しく飾り国の庇護の下で発展した。
工房を見学すると、その工程の多さに驚く。図案を考え、繊細な切り絵のような型紙を作り、糊をのせて色を付け、洗いまで手順は15以上。柄の部分は染料ではなく、いわゆる絵の具と同じ「顔料」を使い筆で絵を描くように布を染めていく。顔料は鮮やかに発色し強い日差しを受けても色が褪せにくいのだ。そんな力強い琉球の手しごとは、王国の衰退や大戦という危機を乗り越え、現代も南国ならではの眩しい色彩で人々を魅了する。
知念紅型研究所【南部・那覇市】
由緒は琉球王朝の時代。びんがたに関わり支えた数百年。









主に着物や帯を染める工房。琉球王朝のお抱え職人を出していた下儀保知念家の流れをくむ。社長の知念冬馬さんは22歳の時に祖父の跡を継ぎ、代々伝わる古典柄も復刻させつつ、沖縄の情景やモチーフを図案にした新作を発表し続けている。
070-6590-8313
沖縄県那覇市宇栄原1-27-17
9時~17時
土・日祝
※見学や店頭販売は行っていません。公式HPにオンラインショップ有
「知念紅型研究所」の詳細はこちら
紅型工房べにきち【北部・本部町】
伝統とモダンが素敵に融合。びんがたデザインを日常に。






独立して13年になる吉田誠子さんの工房。沖縄の自然を斬新な切り口で描き、反物に限らず、ファブリックパネルやポスターでも展開。インテリアとして人気を集める。公式HPのオンラインショップで販売。
首里染織館 suikara【南部・那覇市】
琉球びんがたと首里織を学んで体験できる施設。




2022年4月、首里城近くにオープン。琉球王朝と関係が深い首里織、びんがたについて深く学べる施設。1時間程度でトートバッグを染色する体験(3520円~)の他、やや本格的な4日間体験コースもある。
098-917-6030
沖縄県那覇市首里当蔵町2-16
11時~18時
火、旧盆最終日、年末年始
那覇空港より車で30分
7台
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琉球漆器
漆器に特化した役所も設置。琉球とっておきの交易品。
琉球漆器の起源は14世紀頃。高温多湿の環境が漆塗りに最適で、なおかつ中継貿易を財源とする琉球にとって、美しく手の込んだ工芸品は他国に喜ばれるため、自然に発展していった。17世紀、王朝はさらに質を高めようと「貝摺(かいずり)奉行所」という、漆器製作に特化した役所まで設置。当時、海外に渡った琉球漆器を見ると、螺鈿(らでん)や沈金、堆錦(ついきん)といった豪華な装飾で覆われている。日本の漆器とは全く異なる雰囲気で面白い。
明治期以降は、各職人たちの努力と試行錯誤によって技術を伝承。最近では小物やアクセサリーなど、日常雑貨的な漆製品もつくられている。
角萬漆器【南部・那覇市】
移転して絶景カフェも併設。長い歴史を誇る塗り物工房。






由緒は王国直営の「貝摺奉行所」という、県内最古級の漆器工房。デイゴなど器になる木材を数年かけて乾燥させるところから手間暇かけてつくり続けている。2022年11月、約60年ぶりに移転した新店には街を見下ろすカフェも併設。贅沢な漆塗りのカウンターにも注目。
浦添市美術館【中部・浦添市】
琉球漆器の歴史をたどれる国内有数の漆芸専門美術館。




16世紀から現代までの優れた琉球漆器を常設展示。中国やベトナムなど周辺諸国のものも含め、約1800点もの漆器を収蔵している。国内外の漆工芸品を通して琉球の歴史を見るのも面白い。年に数回、琉球漆器に関連したワークショップや体験教室も開催。
098-879-3219
沖縄県浦添市仲間1-9-2
9時30分~17時
月(祝日の場合は開館)、年末年始
常設観覧料200円(2023年4月より300円)
沖縄道西原ICより車で15分
900台(カルチャーパーク)
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工房ぬりトン【南部・八重瀬町】
琉球漆器の枠を超えた新たな漆の世界を探る職人。




首里城の修復にも携わる漆芸家の森田さんが、木工家の奥様と共同で営む工房。作品は公式HPや浦添市美術館内ショップなどで買える。活動の幅は広く、浦添市の小学校給食用の漆器も手がけるなど、漆の持つ可能性を探究中。
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※この記事は2022年12月2日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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じゃらん編集部
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