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次なるパワースポットは、「山下公園」である。

―― どうだい、運気上がってるかい？ しずか

「しずかではないですし運気の件は分かりませんが、これ、普通にデートとして楽しいですね」

なかなかかわいいことを言い出すしずか。どうやら機嫌も直ったようだ。その後は前向きに横浜デートを楽しみ始めてくれた。

「揺れる葉っぱの音を聞く」しずか

「海辺の風を感じる」しずか

「赤い靴の女の子」と見つめ合うしずか

と、ここまで、かなりのパワースポットを消化した。運気もだいぶ上がってきているはずだ。そのまま歩行者専用のプロムナードを歩いて「赤レンガ倉庫」へと向かう。

赤レンガ倉庫では週末ごとに様々なイベントを実施している。3連休の真ん中だったこの日は「ラーメン女子博」が行われていた。年間600杯以上を食べる“ラーメン女子”こと森本聡子さんがプロデュースする“女性のためのラーメンイベント”で、全国から12の人気店が集まっている。「女子」で、しかも「麺類」が開運食であるしずかにはうってつけの催しといえるだろう（※実際に巡っているのは女子でもしずかでもないが）。

ラーメン女子たちの列に並ぶこと30分。ようやく開運ラーメンにありつくことができた。

―― おいしい？　あと、運気上がった？

「運気はともかく、ラーメンはうまいです」

よかった、しずかが喜んでいる。マリンタワーで眺望を楽しみ、山下公園で海辺の自然にふれ、赤レンガ倉庫で人気店のイベント限定ラーメンを食べる。開運云々抜きにしても、けっこう良いおでかけプランなのではないかと思う。本物のしずかがいればなお良かったが、腰が治ったらぜひ彼氏とのデートでこのコースをなぞってほしいものだ。

さて、ここまで順調に運気を上げまくってきたわけだが、そろそろ仕上げといこう。ラストは、“高くて”、“海が見えて”、“太陽光が降り注ぐ”、そんなA級のパワースポットだ。

横浜コスモワールドの観覧車「コスモロック21」である。

ここでも高所恐怖症を理由に乗車を渋るしずかこと小野くんを説得し、ゴンドラの中になんとか押し込む。彼にとっては「高所」もさることながら、相乗りのパートナーがおっさん（筆者）という二重の地獄だ。渋る理由は、むしろそっちだったのかもしれない。

なお、「コスモロック21」は1周15分。窓からは東の方向に海が広がり、パワースポットとしても最適だし、普通に感動する。

ゴンドラが最高地点に到達すると、しずかは両手を天にかざし、なにやらパワーを集め始めた。

聞けば、金メダルに運気を注入するべく「太陽パワーを集めている」のだという。言ってることはよくわからないが、その意気込みは評価したい。ここにきて、しずかの自覚が芽生えてきたようだ。

ちなみに、恋人でもない女性のために「太陽パワーを集める」健気な背中の向こうでカップルがイチャイチャしていたことは、小野くんには黙っておいた。彼には2年彼女がいない。こんなの、悲しすぎるだろう。

こうして、しずかの開運旅は終わりを告げた。ふざけているように見えたかもしれないが、sayu先生に教えていただいた開運ポイントは全て満たしている。

・太陽の軌道、特に東と東南に吉がある → クリア
・特に太陽が昇っている日中、東に行くと幸せを呼ぶ（風を感じられる場所なら、なおよし）→ クリア
・今の時期は「高い場所」や「海が見える場所」に行くと気持ちがラクになる → クリア
・また、水にも吉があるので、高いところから海を見下ろすような場所が最高 → クリア
・横浜だと「山下公園」が位置的にすごくいい → クリア
・食べたいものを食べたい時に食べるのがいい → クリア
・旅先ではその土地の名物のもの、特に麺類などを食べるといい → クリア

今回巡ったスポットは王道ばかりなので、横浜をよく知る人にとってはやや新鮮味がなかったかもしれない。しかし、スポット自体はメジャーでも、「開運」という付加価値がのっかることで何倍も楽しくなるし、旅の「軸」のようなものができて思い出が深まる感じがあった。デートがマンネリ化しているカップルにも、ぜひおすすめしたい。

ちなみに、この日以来、しずか（本物）の腰は快方に向かっているようだ。完全に僕らのおかげである。

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