9.鹿ジビエと山師料理 ざんざ亭【長野県伊那市・伊那谷】
山を愛するジビエの匠が試行錯誤の末に辿り着いた野趣溢れる料理を囲炉裏端で。
コース終盤に登場する名物の鍋料理。脂ののった猪肉とセリなどの山野草のほのかな苦みが調和する一品で、秋は山野草の代わりに伊那谷で採れたきのこを使用。あっさりとした味わいが締めにぴったり。
鹿肉の表面に塗った米油が、赤く輝く木炭に滴り落ちた瞬間、炎と煙がゆらりと立ち上ります。囲炉裏端には炭が爆ぜる音が響き、続いて肉の香ばしい芳香が広がっていきます。
「煙を肉に纏わせることによって、野生動物特有の匂いも気にならなくなる。炭火焼きとジビエは、やはり相性が良いんです。下処理や火入れの加減、焼き方など、さまざまな工程で試行錯誤を繰り返し、ようやく納得のいく炭火焼きができるようになりました」と話すのは「鹿ジビエと山師料理 ざんざ亭」の主人、長谷部晃さん。東を南アルプス、西を中央アルプスに囲まれた伊那谷の深い森に抱かれたざんざ亭は、築180年ほどの古民家を改築したわずか3室の宿です。
北アルプスの山小屋で和食の基礎を身に付け、「山を育てる仕事をしたい」と伊那谷に移り住んだという長谷部さん。林業に携わりながら地元の猟師から狩猟を学んだ長谷部さんが、宿を始めたのは2011年のこと。当初は郷土料理を供していましたが、やがて伊那谷の鹿を中心とする多彩なジビエを扱う独自の“山師料理”へと進化していきました。
山の生命を余すところなく使いたい――。そんな想いから生み出される山師料理は、野趣溢れ、独創性に富んだものばかりです。たとえば鹿セルヴェル天ぷらの茶碗蒸しは、鹿や猪のベーコンを入れた茶碗蒸しに鹿の脳みその天ぷらを添えた一皿で、ミルキーな旨みとふわりとした食感の妙が光ります。また、炭火焼きジビエの盛り合わせには、鹿肉だけでなく、地元の猟師が持ち込んだ熊や鴨、ハクビシン、カラスなど、さまざまな肉が登場。しっとりと滋味深い鹿の赤身や濃厚なコクを持つカラスのモモなど、ジビエの持つ多彩な味わいに思わず驚かされてしまいます。
「野生動物は、育ってきた環境や獲れた季節、年齢、食べ物などによって、一つ一つ味が異なります。ジビエの魅力は、肉の味わいの奥に“自然のストーリー”を感じられること。それを見極め、素材の味を引き出すことが、料理人としての自分の役割だと思います」。囲炉裏を見つめてそう話す長谷部さんの言葉には、山を愛し、生命と向き合ってきた人が持つ深い響きがありました。
[TEL]0265-98-3053
[住所]長野県伊那市長谷杉島1127
[料金]1泊2食付き1万800円~
[アクセス]中央道伊那ICより45分
「鹿ジビエと山師料理 ざんざ亭」の詳細はこちら
10.時の宿すみれ【山形県米沢市・米沢】
米沢牛のフルコースに心躍らせるひとときを“おふたり様”専用の宿で。
口に入れた瞬間、脂がふわりとほどけてゆきます。優しい甘みと、深い旨みを持つ米沢牛の味わいに、頬が緩んでしまいます。一頭の牛からわずかしかとれない希少部位の肩三角を使った米沢牛のにぎり、ジューシーな肉の旨みと味噌と醤油を合わせたタレが調和するすきやきや、目の前の鉄板で焼き上げられるサーロインステーキ…。一皿一皿が、確かな存在感を持っているけれど、しつこさを感じることがないのは、最高級の米沢牛だけを厳選するこだわりの証。それもそのはず、「時の宿すみれ」を切り盛りする女将の黄木綾子さんは、1923年から続く米沢の老舗精肉店「米沢牛黄木」で生まれ育った目利きのプロなのです。
ちなみにここは“おふたり様”限定というユニークなコンセプトを持つ宿です。めくるめく米沢牛の美味に酔いしれ、貸切露天風呂に癒やされ、モダンな客室にくつろぐ。この秋、そんな贅沢な旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
[TEL]0238-35-2234
[住所]山形県米沢市関根12703-4
[料金]1泊2食付き2万2140円~
[アクセス]東北中央道米沢八幡原ICより10分
「時の宿すみれ」の詳細はこちら
11.みなとや旅館【長野県下諏訪町・下諏訪温泉】
文人墨客に愛される2組限定の小さな宿で伝統の馬肉料理と庭湯を。
美しく盛りつけられた馬刺しは、生姜醤油であっさりと。桜鍋とともに多くの文人墨客に愛されてきた名物料理だ。代々宿に伝わってきたという骨董品のような器も、料理を引き立てる。
古くから宿場町として栄えた長野県の下諏訪温泉。その一角に、白洲次郎・正子夫妻や岡本太郎などの文人墨客が愛した小さな宿があります。
江戸中期に創業した「みなとや旅館」の魅力のひとつが、伝統の馬肉料理。信州産を中心とした馬肉を生姜醤油で味わう馬刺しや地元の味噌で甘辛く仕立てた桜鍋などの料理は、シンプルだが素材の良さが光るものばかり。その味わいこそが、舌の肥えた人々を魅了し続ける理由です。
もうひとつの魅力が、中庭にある貸切露天風呂の庭湯。1000年の歴史を持つ名湯・綿の湯を引きこみ、加水も加温もせずに使用する湯船では、やわらかな肌触りの温泉を、心ゆくまで楽しむことができます。
美食に舌鼓を打ち、名湯に癒やされる。いつの時代も変わることのない、本質的な温泉旅の歓びを味わえる宿です。
[TEL]0266-27-8144
[住所]長野県諏訪郡下諏訪町立町3532
[料金]1泊2食付き1万8000円~
[アクセス]中央道岡谷ICより10分
「みなとや旅館」の詳細はこちら
じゃらん編集部
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