日本酒の達人と旅のプロが旨い酒との出会いにいて語り合いました
150種以上の日本酒がずらりと並ぶ「名酒センター 御茶ノ水店」に顔を揃えたのは、全国各地の酒蔵を訪問してきた日本酒の達人と旅のプロの4名。「楽しい酒蔵めぐり」をテーマに、おすすめの酒のまちや酒蔵、蔵元と仲よくなるテクニックまで、日本酒を飲みながら放談します。
旅先の地酒はその土地の郷土料理とマリアージュを。
西:日本酒って、基本的にはその地域で食べられているものに合わせて造られていますよね。蔵元のまちを訪ねると「こういう料理が食べられるからあの味があるんだ」と、ストーリーがつながってきます。
阿部:魚が獲れる地域では魚に合う酒質ですし、海なし県だと発酵技術があるので、漬け物などの発酵食品に合う酒質になりますね。
西:例えば長野は、味噌や麹に合わせられるようなガツンとしたお酒が揃っているなと感じます。
武舎:そういえば醤油って、西へ行くほど甘くなるじゃないですか。それがお酒と連動しているような気がするんですよね。やっぱりお酒もそんな傾向にあるかと…。
阿部:味覚のバランスが取れなくなるから、料理の味わいに合わせて酒質も変わるんでしょうね。郷土料理と一緒に地酒を味わうと、体がすごく喜んでいるように感じますし。
岩井:山間の蔵元の酒は山の幸に合うように、海辺の蔵元の酒は海の幸に合うようにできているけれど、東京に進出するとペアリングとかを考えて、どうしても東京の味に寄せてしまうんですよ。それで地酒らしさが薄まってしまう。やっぱり地方に行った時の方が、いい意味で野暮ったくて味わい深い日本酒が楽しめると思います。
西:旅先で地酒を飲む時には、ぜひその土地ならではの料理と合わせて楽しんでほしいですね。

水のきれいな場所に名酒のまちあり!
岩井:酒の味に大きく影響してくるのが水です。特に、水の都と呼ばれている京都府の伏見には、良質な水が湧き出る井戸が点在していて、水めぐりも楽しいですよ。いろいろ飲み比べると硬い水や軟らかい水、果実の香りがするような水も。
阿部:日本酒を飲む時、酔いを和らげるために一緒に飲む水を「和らぎ水」と言いますが、地酒を飲みながらその土地の水を「和らぎ水」として飲むと、地域の雰囲気なども肌で感じられるのでおすすめですね。
武舎:私も水を巡る旅を提案したいです。岩手県盛岡市にある蔵元「あさ開」さんですが、近くの大慈寺界隈から湧き出ている清水を仕込み水に使っています。町内に共同井戸もあり誰でも自由に汲むことができるので、酒蔵めぐりをするなら仕込み水を飲んで、その源泉をたどる旅もおもしろいと思います。
西:水がおいしい酒のまちといえば、北アルプスの伏流水に恵まれた岐阜県の飛騨高山も。町内に7つの蔵元が点在しているので、「古い町並」の風情を楽しみながら歩いて酒蔵めぐりが楽しめます。
阿部:岐阜県は花酵母を使用したり、熟成古酒やにごり酒に特化する蔵があるなど、個性様々ですよね。
武舎:長野県の諏訪も酒蔵めぐりにおすすめです。街道沿い500mの間に5つの蔵元が並んでいるので、徒歩でも手軽に巡れます。
阿部:広島県の西条駅周辺にも7つの蔵元が点在していますが、毎月10日にはボランティアガイドの方が酒蔵を案内してくれるサービスもありますね。九州だと、佐賀県の鹿島市が酒のまちとして有名です。宿場町の趣が今も残っているので、酒蔵を巡りながら建物を見る楽しみもあると思います。通常は見学できない蔵も中にはあるのですが、蔵開きイベントに合わせて訪問すれば、鹿島市内の6蔵をいっぺんに見学して回ることができますよ。
武舎:春に開催されていますね。
阿部:あと私のおすすめは、兵庫県の灘です。日本一の酒どころとして知られる灘五郷は神戸市灘区から西宮市にわたる5つの地域ですが、阪神電車を自由に乗り降りできる1デイチケットや1デイパスも発売されているので、手軽に電車移動できます。うまくコースを組んで酒蔵を訪ねるのも楽しいですよ。
岩井:秋田県の湯沢市には、「酒蔵めぐりタクシー」もあります。
西:酒蔵めぐりをする時は自分で運転ができないから、タクシーは便利でいいですよね。

地元の酒販店などでの出合いも酒旅の楽しみ。
阿部:旅先では、今まで知らなかったお酒に出合える楽しみがありますよね。地方の駅やお土産店などに見たことのない銘柄が置いてあったりするので、見つけたら買って試してみるようにしています。
西:地方のコンビニに行くと、けっこうおいしい地酒が置いてありますよね。誰もが知っているような有名な銘柄の他にも、各地においしい日本酒は本当にたくさんあるので、旅先ではまず地元のお酒との初めての出合いを楽しんでもらえたらいいなと思います。
岩井:秋田はすごいですよ。蔵元との間に太いパイプを持っている有名な酒販店が多いので、一見客でも地元の酒についていろいろと教えてもらえます。初めての出合いを求めるなら、秋田がおすすめですね。
武舎:確かに、地元の酒販店に行って「蔵元を訪問したい」と言えば、情報をくれるかもしれませんね。
岩井:新潟県の越後湯沢駅と新潟駅にある「ぽん酒館」でも、地元の日本酒がたくさん飲めますよね。
武舎:「ぽん酒館」はおもしろいですよね!
西:きき酒に夢中になってしまって、帰りの新幹線を一本遅らせようかという気分になります。(笑)
武舎:初めてのお酒と出合うなら、各地の酒造組合などが開催するイベントに足を運ぶのもいいかもしれません。リーズナブルに飲み比べできますし、蔵元と交流できます。
阿部:そこでお気に入りのお酒を見つけて、蔵元の方から直接お話を聞けば、その酒蔵を見学に行くという、次の旅の目的ができるかもしれませんね。
岩井:酒蔵見学不可を公言している蔵元でも、イベントで話をして仲よくなれば、特別に見学させてくれることもあるんですよ。訪ねてみたい酒蔵があるなら、イベントに出向いて蔵元の方に直接アプローチしてみることをおすすめします。

1軒で酒旅を満喫できるとっておきの酒蔵も各地に。
西:酒蔵訪問の話に戻りますが、酒旅を1軒で満喫できるような、おすすめの蔵ってありますか?
岩井:愛媛県道後温泉にある「水口酒造」はいいですよ。直営の日本料理店やスタンディングバーが酒蔵周辺に点在しているので、蔵見学と合わせて楽しめます。
阿部:私がおすすめするのは、愛知県の「関谷醸造」です。吟醸工房で実際に酒造りが体験できるんですよ!もう1軒、酒蔵の隣に直営レストランがあり、敷地内に「行在所」もある、山梨県の「山梨銘醸」も見どころ豊富で楽しめます。
武舎:新潟県の「八海醸造」は、地元の自然を大切にした酒造りを守り続けている蔵です。それによって出来あがった複合施設「魚沼の里」は、一日いても飽きないはずです。
西:福島県会津若松の「末廣酒造嘉永蔵」は試飲が充実しているし、お酒を使ったスイーツが楽しめる蔵カフェがなんだか和みます。予約なしで気軽に酒蔵見学ができるところもおすすめです。
\今回の会場はこちら/名酒センター 御茶ノ水店

全国45蔵元の協同アンテナショップ。毎月第3日曜に「蔵元を囲む会」も開催。
[TEL]03-5207-2420
[住所]東京都文京区湯島1-2-12 ライオンズプラザ御茶ノ水1階
[営業時間]14時~22時(日祝は12時~19時)
[定休日]月(祝日の場合は翌日)
[アクセス]JR御茶ノ水駅より徒歩5分
「名酒センター 御茶ノ水店」の詳細はこちら
※この記事は2019年12月時点での情報です
じゃらん編集部
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