関西人なら誰もが知っている兵庫県の人気温泉地「城崎温泉」。
こちらの温泉地で2013年より始まった、ある取り組みが密かなブームになっています!その取り組みについてご紹介します。
城崎温泉とは?
開湯1300年の歴史を持つ城崎温泉は、川沿いに7つの外湯が点在し、浴衣に下駄履きの温泉客がカラコロとそぞろ歩く姿が情緒たっぷり。
また文豪・志賀直哉が小説「城の崎にて」を執筆した老舗の温泉旅館「三木屋」が今も営業を続けており、数多くの文豪に愛された温泉地としても知られています。
城崎温泉で誕生した新しい取り組みとは…
2013年の「志賀直哉 来湯100周年」を記念して始まったのが、城崎で温泉旅館を営む45歳以下の若旦那たちが立ち上げた本の出版レーベル「本と温泉」。
2013年に第1弾を出版して以降、2019年までに計3作品を発表し、2020年2月にはシリーズ第4弾として「tupera tupera」(ツペラ ツペラ)による新作を発表したばかり!
今回は「本と温泉」の副理事長である片岡大介さんに「本と温泉」が手がけた本についてお聞きしました!
温泉地で生まれた文学をもう一度読んでもらいたい!
「城崎には作家が執筆のために滞在した歴史が残り、有名な文学作品『城の崎にて』もこの温泉地で生まれました。私たちより古い世代の旅館の主人達は、滞在する作家さんをおもてなしするために教養を深める努力をしていたと聞いています。ただバブル期以降、露天風呂や宴会料理など温泉地に対するお客様の要望は変化し、温泉地に対して文化はあまり求められなくなっていました。また城崎と文学の関わりを魅力的に伝えることが難しいこともあって、文学のことは長らく放置している状態でした。
そこで志賀直哉来湯100年を機に、『せっかくだから、若手で何かやれないか』と…。城崎温泉の文化価値を見直し、城崎温泉に残る文学の魅力に光を当てたいと考えた結果、志賀直哉の『城の崎にて』を再読してもらえるような、魅力的な本を作ってはどうだろうということになったのです」と話してくれた片岡さん。
こうした話し合いを通して「城崎限定販売の本」や「愉快で驚きに溢れた装丁の本」にしようというコンセプトが決定。温泉地が発信する出版レーベル「本と温泉」が誕生し、既成の常識に囚われない、新しい本が続々と登場することに!
第1弾は志賀直哉「城の崎にて」を注釈本付きで!
記念すべき第1弾は、温泉地文学のルーツでもある「城の崎にて」(税込1000円)。思わず手に取りたくなる美しい装丁ケースの中には「城の崎にて」と網羅的な解説を試みた解説本「注釈・城の崎にて」の2冊が入っています。
増版ごとに外箱の色を変えているため、次に城崎温泉を訪れた時には違う色が販売されている可能性も!!現時点で8回の増刷がされているため、8色の「城の崎にて」があるそう!色違いでコレクションしたくなるかも。
第2弾は湯に浸かって読める、万城目学の温泉奇譚!
翌2014年に発売された「城崎裁判」(税込1700円)は人気作家・万城目学の書下ろし短編小説。「第1弾を制作中に、第2弾は現代の作家さんに城崎に来て書いてもらおうという話になり、オファーさせていただいたのですが、まさか引き受けてくださるとは…と我々もびっくりでした。『温泉地でしか買えない本なんて面白いし、ぜひ応援したい』と万城目さんがおっしゃってくださって」と片岡さん。
万城目学が実際に城崎に滞在して書下ろした小説の内容はもちろん、耐水性の高い紙を使い、温泉に浸かりながら読めるという斬新なアイデアがユニーク!オリジナルタオルで制作されたタオル地のカバーは、城崎の隣にある鞄の町・豊岡市のカバン職人さんがひとつひとつ手作業で作っているのだそう!
第3弾はカニの殻をイメージ!
2016年に発売された「城崎へかえる」(税込1200円)は、淡路島在住の作家・湊かなえ書下ろしの短編小説。「湊さんは万城目さんからご紹介いただきました。湊さんが『城崎は作家になる前から毎年家族で訪れている大切な場所。ぜひ私も城崎の物語を書いてみたい』とおっしゃっていたとお聞きしたことがきっかけです」と語る片岡さん。
特殊なテクスチャー印刷により、本物のカニのような凹凸と質感があり、カニの殻から身をスッと抜くように本を取り出す仕掛けがユーモアたっぷり。
そして第4弾!新作はなんと可愛い絵本!
2020年2月に『かおノート』などで人気の「tupera tupera」(ツペラ ツペラ)による新作絵本「城崎ユノマトペ」(税込2000円)が発表されました!
「実際にtupera tuperaさんが何度も城崎に訪れてくださり、温泉街を楽しい切り絵にした絵本です。下駄のような表紙を開くとジャバラに開く装丁がワクワクしますし、中には志賀直哉さんや万城目学さん、湊かなえさんも登場しているので探してみてください!」(片岡さん)。
※販売している書籍は売り切れの可能性もあります。ご了承ください。
温泉地で新しい文学の形を体験!
「城崎温泉で書かれた本を、城崎温泉で読む。そんな新しい体験ができるのが『本と温泉』です。「本と温泉」の本が城崎の旅をもっと豊かにしてくれるツールになれたら、と思っていますし、こうして生まれた本が100年後もずっと読み継がれていたらうれしい。これからも小説に限らず、エッセイや写真集、海外の人に楽しんでもらえるような本など、楽しい本を生み出していきたいです」と片岡さんは語ってくださいました。
まとめ
「本と温泉」の本はすでに累計4万6000部を発行し、本を目当てに来る観光客も年々増えているのだそう。ぜひ、城崎温泉で新しいスタイルの文学トリップを楽しんでみてはいかがでしょうか?
ライター/池側恵子
じゃらん編集部
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