石川県南西部に位置する加賀温泉郷は、加賀市の山代、山中、片山津の3つの温泉地と小松市の粟津温泉からなる北陸の温泉郷です。「王道なのに、あたらしい。」をテーマとする星野リゾートの温泉旅館「界 加賀」があるのは、開湯1300年の歴史を持つ山代温泉。国の有形登録文化財に登録された伝統建築棟をはじめ、至るところで加賀の伝統美が体感できる「界 加賀」での1泊2日の過ごし方を紹介します。
●「界 加賀」の魅力
●「界 加賀」1泊2日滞在レポート
1日目
・15時 フロントホールでは水引アートがお出迎え
・15時30分 「金継ぎいろは」でその奥深さを知る
・16時30分 泉質や入浴法を知る「温泉いろは」で効能を実感
・18時 「ご当地」を存分に味わえる華やかな「北陸海宝会席」
・20時 「べんがらラウンジ」は夜景を眺める特等席
・21時 目の前で繰り広げられる勇壮華麗な「加賀獅子舞」
・23時 雲のような寝心地のベッドでぐっすり
2日目
・7時 「おはよさーん体操」で体がシャキッ
・8時 朝の体に嬉しいご当地の和食膳
・9時30分 加賀の伝統工芸品や特産品を選ぶのも楽しみ
・10時30分 国の有形文化財の中で静謐の時を楽しむ「茶の湯体験」
・12時 宿泊者は無料で入浴できる「古総湯」でも温泉堪能
「界 加賀」の魅力
加賀の伝統と新しい感性が融合した心地よいおもてなし

北陸新幹線加賀温泉駅よりタクシーで約10分。山代温泉の中心地「古総湯」をぐるりと囲む「湯の曲輪(ゆのがわ)」の通りでひときわ目を引く紅殻格子(べんがらごうし)の建物が「界 加賀」です。フロントホールや2024年にオープンした「べんがらラウンジ」のある伝統建築棟と茶室は、1624年創業の老舗旅館「白銀屋」から受け継いだもので、国の有形登録文化財に登録されています。
風格ある建物に加え、館内には加賀友禅や水引、九谷焼などの伝統工芸をちりばめ、食事の器には九谷焼や山中塗などを惜しげもなく使用。伝統と格式を重んじながらも、「金継ぎ」や「茶の湯」の手軽な体験プラン、「温泉いろは」と名付けた入浴法の指導といった新しい試みで、旅人の心に残るおもてなしを提供しています。
「界 加賀」1泊2日滞在レポート
【1日目】15時 チェックイン・客室へ
フロントホールでは水引アートがお出迎え


加賀藩前田家の家紋でもある梅鉢紋を染め抜いたのれんがかかる長屋門をくぐり、伝統建築棟のフロントホールでチェックイン。伝統建築棟は、大黒柱と梁を釘などの金物を一切使わず組み上げる「枠の内」という伝統工法で作られた築200年の建物です。降りしきる雪をイメージした7mもの水引アートを見上げると、伝統工法の美しさも同時に楽しめます。



客室棟に向かう途中には、石川県や金沢エリアの誇る伝統工芸品を展示したコーナーや九谷焼のタイルで加賀友禅の流れを表現したモダンな中庭が眺められる渡り廊下があり、客室棟の1階が、北大路魯山人の書による通称「いろは屏風」が飾られた「トラベルライブラリー」です。茶室へと続く奥庭を望む「トラベルライブラリー」は、加賀の歴史や文化、自然、工芸にまつわる本やこの地に伝わる物語の本があるので、セルフサービスのコーヒーやハーブティーとともにゆったり読書も楽しめますよ。



客室はすべてローベッドとソファを配置した過ごしやすい空間。全室、ヘッドボードに加賀友禅パネル、ティーカップは九谷焼、山中塗や九谷焼のアートボードなど、随所に加賀の伝統美をあしらった「加賀伝統工芸の間」です。いずれもバルコニーがあり、朝に夕に山代の温泉街を見渡せる爽快さも味わえます。
【1日目】15時30分 金継ぎにチャレンジ
「金継ぎいろは」でその奥深さを知る




紅殻格子の国の登録有形文化財の建物の中に「金継ぎ工房」があります。ここでは金継ぎの技術を身につけた「界 加賀」のスタッフ20名が交代で、宿で使う食器の金継ぎ作業を行うほか、宿泊者限定で「金継ぎいろは(無料/要予約)」という体験プランを実施しています。
金継ぎには多くの工程が必要ですが、ここでは、器の欠けた部分を漆のパテで埋める「埋め」、漆で継いだ部分に金属粉をまく「粉蒔き」、金粉を漆で固める「固め」のいずれかが体験できます。この日体験したのは「埋め」。慣れない作業に苦戦しながらも、スタッフの指導でどうにか完成。工房内に展示した金継ぎの道具や材料の解説、金継ぎを施した白銀屋時代から使用している貴重な器などの見学で、充実した時を過ごしました。
【1日目】16時30分 温泉効能を学び大浴場へ
泉質や入浴法を知る「温泉いろは」で効能を実感


「温泉いろは」とは、湯守りであるスタッフが、山代温泉の歴史や泉質、入浴前のストレッチなどを紹介する約30分のイベント。温泉旅館ブランド「界」が提案する「うるはし現代湯治」の一環で、大浴場前のギャラリーで毎日16時30分から行っています。軽いストレッチで体をほぐすことで血行が良くなり、保温・保湿効果の高い山代温泉の温泉効能がより高められる気がします。




山代温泉の泉質は、硫酸塩・塩化物温泉。塩分を含むため保温・保湿効果が高く、とろりとした弱アルカリ性で、「美人の湯」とも言われているそう。大浴場の内風呂には、「色絵」「青手」「赤絵」「藍九谷」という伝統的な様式で九谷焼の作家が四季を表したアートパネルがあり、露天風呂の天井には「朧月」。良泉に浸かりながら、「九谷焼にこんな種類があるのか」と感心しつつ加賀の美をじっくり鑑賞できました。
【1日目】18時 夕食
「ご当地食材」を存分に味わえる華やかな「北陸海宝会席」

ご当地食材を使った先付けの主役は鮑。ウニをのせ、わかめに包んで蒸した鮑は驚くほどの柔らかさで、わかめソースをつけると口いっぱいに磯の香りが広がります。

蓋付きの九谷焼の中の八寸には合鴨のロースや蛸の梅わさびなどが盛り合わせられており、一口ごとに異なる味わいが楽しめます。タイやサワラのお造りは、醤油のほか梅肉ソースが添えられており、白身魚は梅肉ソースで味わうのがおすすめだそう。


お待ちかねの夕食がスタート。「界 加賀」では、白銀屋時代に宿泊した芸術家で美食家としても知られる北大路魯山人にならい、「器は料理の着物」として、料理と器のマリアージュにもこだわっています。金継ぎをしながら大切に受け継がれてきた器に盛り込まれた料理は、どれも美しいことはもちろん、繊細な技、上質な味わいにため息の連続です。特に、北陸ならではの「のどぐろとふぐのしゃぶしゃぶ」は、とろけるような舌触り。シメには雑炊にして出汁の最後の一滴まで堪能しました。
※「北陸海宝会席」の食材やメニューは季節や入荷状況により変更の場合あり
【1日目】20時 ラウンジで加賀の伝統に触れる
「べんがらラウンジ」は夜景を眺める特等席



2024年、伝統建築棟の2階に「べんがらラウンジ」がオープンしました。ここは1日4組限定の大人のための空間。入口にある「九谷焼」や「山中塗」など約100種類の器の中から好みの皿や酒器を選び、「湯の曲輪」の風情ある夜景を眺めながら北陸の地酒やウイスキー、北陸の食材を使ったおつまみを楽しめます。おつまみは、ブリの燻製、北陸名物の蒲鉾・赤巻などのピンチョス盛り合わせに加えて、ナッツ三種、香の物三種、甘味三種のうち一つが選べるスタイル。ゆったりとしたソファ席で、贅沢なひとときでした。
【1日目】21時30分 ご当地楽(ごとうちがく)
目の前で繰り広げられる勇壮華麗な「加賀獅子舞」

温泉旅館ブランド「界」では、それぞれの宿で地域の伝統工芸、芸能などを満喫してもらうためのご当地楽(ごとうちがく)を実施しています。「界 加賀」のご当地楽は「加賀獅子舞」。金沢市の無形民俗文化財に指定されている「加賀獅子舞」をアレンジし、毎日21時30分(冬期は21時45分)から「トラベルライブラリー」で上演しています。
大きな獅子頭の「八方睨(はっぽうにらみ)」と呼ばれる表情はインパクト抜群。それを振り回し、立ち回る踊りを、演じるスタッフの息づかいが聞こえるほどの近さで鑑賞できるのも「ご当地楽」ならではですね。
【1日目】23時 就寝
雲のような寝心地のベッドでぐっすり

就寝前にはもう一度大浴場で湯浴み。客室に戻って、バルコニーで夕涼みしながら備え付けの「蒸し生姜湯」を飲むと、生姜の成分で体が程よく温まり、疲労回復効果のある黒酢や黒糖が入っているおかげで、体が自然と眠りに向かって行きます。
温泉旅館ブランド「界」のオリジナルマットレス「ふわくもスリープ」は、ふんわり雲のような柔らかさなのにしっかり体を支えてくれる安心感があり、朝まで一度も目覚めることなく熟睡できました。
【2日目】7時 現代湯治体操
「おはよさーん体操」で体がシャキッ

「おはよさーん体操」は、「うるはし現代湯治」の無料プログラムで、毎朝7時から「トラベルライブラリー」で開催されます。スタッフが丁寧に指導してくれる体操は、呼吸法を重視したオリジナルスタイルで、「太陽を浴びようのポーズ」などで体を徐々にほぐしていきます。スタート時にはまだ半分眠っていた体がシャキッと目覚めました。
【2日目】8時 朝食
朝の体に嬉しいご当地の和食膳


「おはよさーん体操」で目覚めた体に嬉しい朝食は、石川県の郷土食材や調理法を取り入れた和食膳です。なめらかな手づくり豆腐には金沢市の大野醤油「直源商店」のソイソルトシーズニングを使うなど調味料にもこだわっています。特に「めぎす汁」は、脂がのった白身魚、メギスを丸ごとすり潰したふわふわのつみれを使った能登地方の滋味あふれる一杯。箸が止まらぬ美味しさでした。
【2日目】9時30分 ショップでお土産探し
加賀の伝統工芸品や特産品を選ぶのも楽しみ

フロントホールのショップには、若手作家の作品をはじめ、加賀の伝統工芸品や石川県のお茶や銘菓が並んでいます。チェックイン時から目をつけていた九谷焼の「豆皿」と「お猪口」も、加賀棒茶をはじめとしたご当地の特産品も意外とリーズナブル。ついつい買い込んでしまいました。

「しみみ」は、金澤萬久のチョコを染み込ませたおかきで、ここでは「ほうじ茶」と「きな粉」の2種を「界 加賀」のオリジナルパッケージで販売しています。

金沢の文豪・泉鏡花が愛したという加賀棒茶は、上林金沢茶舗の美しい缶に入ったものをセレクト。華やかな缶入りは目上の方へのお土産にも喜ばれそうです。

九谷焼の「豆皿」「お猪口」は、伝統柄を中心に多彩に揃っているので、選ぶのに嬉しい悲鳴。たっぷり迷って、それぞれ異なる3種を自宅用に購入しました。
【2日目】10時30分 体験プラン
国の有形文化財の中で静謐の時を楽しむ「茶の湯体験」




チェックアウトが12時までとゆとりがあるので、ぜひ体験したかったのが「茶の湯」です。奥庭に佇む国の有形文化財に登録されている茶室「思惟庵」で、上林金沢茶舗の抹茶と老舗「しもつねや」の季節を映す上生菓子をいただきながら、茶の湯の文化や「思惟庵」の設えについて学ぶことができます。
スタッフは加賀藩前田家ゆかりの茶道「裏千家」を学んでおり、「お茶碗を180度回転させてから三口半で飲みます」など基本作法は教えてくれますが、細かい所作にとらわれることなく、美味しい抹茶がいただけるのが魅力。漆塗り仕上げの梁、贅沢な折り上げ作りの天井などの建物や「白銀屋」時代から残る樹木や灯籠などが織り成す美しい庭を眺めながら静謐の時が過ごせます。
【2日目】12時 チェックアウト
宿泊者は無料で入浴できる「古総湯」でも温泉堪能

明治時代の総湯を復元した「古総湯」は、山代温泉のシンボルです。外観や浴室の九谷焼のタイル、ステンドグラスが美しい内装や、洗い場のない昔ながらの入浴スタイルを再現。2階の休憩所には山代温泉の歴史に関する展示もあり、入浴しながら温泉の歴史や文化が楽しめる“体験型温泉博物館”です。
一般の入浴料は大人700円ですが、「界 加賀」の宿泊者がもらえる風呂敷を持参すれば無料で入浴することができますよ。
※この記事は2025年9月11日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に施設へ最新の情報をお問い合わせください。
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